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考察「なつぞら」感動の電話シーンはどこまで現実を再現していたのか。昭和電話事情を振り返ったら凄かった

もっとも、江戸時代に藩主と会話した人間はとうに亡くなっているが、交換手を介して電話をかけた経験を持つ人は、まだたくさん存命している。そうした世代にとって、先にあげた「まんぷく」のように、交換手をすっ飛ばして電話がつながる場面は違和感があったのではないだろうか。そう考えると、「なつぞら」での描写は現実に必ずしも忠実ではないものの、ほどよい簡略化だともいえる。まあ、通話に時間がかかるところまで含めて物語に取り込んだなら、それはそれで面白い展開になりそうな気はするが。

「なつぞら」に関してもう一つツッコんでおくと、なつの下宿先「風車」の店内にある電話は、1959年に登場したいわゆるピンク電話(特殊簡易公衆電話機)で、飲食店や個人病院、旅館など比較的客の出入りの多い場所に設置された。それはいいのだが、じつは初期のピンク電話では市外には電話をかけられなかった。したがって、厳密にいえば、あの電話では十勝の家族と通話できなかったことになる。

昔の習慣をドラマで再現する意義とは?


ともあれ、たとえ簡略化しても、昔の人の習慣や暮らしぶりをドラマや映画のなかで再現することは意義のあることだと思う。それは物語にリアリティを持たせるという表現上の意義だけではない。受け手にとっても、たとえば親と子、祖父母と孫など世代の異なる者同士が一緒に見ていたら、そうした描写から話が広がるということもあるはずだ。

そもそも私が、昔の電話は交換手に頼んでつないでもらっていたことを知ったのも、子供のころに「いのち」という大河ドラマ(大河では珍しく戦後を舞台としていた)を親と一緒に見ていたときだった。「いのち」ではほかにも、昔の救急車のサイレン音が消防車と同じ「ウーウー」だったこと(現行の「ピーポー」に変わったのは1970年らしい)など、親と話題にしながら色々なことを知った。おそらくいまでも、たとえば戦時下の庶民生活を圧倒的なディテールで描いたアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)などを家族で見て、昔の暮らしについて話し合ったりすることはきっとあるはずだし、できればそうであってほしい。
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