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「アス」凄え、不条理ホラーの風呂敷を見事に畳んだ!ジョーダン・ピールの腕に震えるのは、あなたの番です

自分たちと全く同じ見た目の人間が、ある日突然自分たちを襲撃し置き換わろうとする、というストーリーは、古典的なボディ・スナッチャー系ホラーの構造でもある。しかし、『アス』の主人公一家は、別荘を持っているような裕福な黒人ファミリーだ。そこを全く同じ見た目の黒人たちが襲撃し、目的不明の行動をとり続けるという状況は、アメリカ国内の「持たざる者」たちのうめき声を伝えている……という解釈もできる。

しかし、『アス』がすごいのは、映画自体の結論を投げっぱなしにしないところだ。無数の寓意を散りばめてあるのもあって、正直見ているときは「この映画の解釈は、あなた方観客に委ねます……」という、ふんわりした結論の映画になるのかな〜と思っていたのである。おれはちょっとそういう、自分で頑張って解釈する幅が広めに取ってある映画が苦手なので、微妙に警戒していたのだ。

だが『アス』は違った。「嘘だろおい!」といいたくなるような話ではあるが、一応ちゃんとしっかり「こういうことだったんですよ〜」と、自分で広げた風呂敷を無理やり畳んで荷物をまとめて帰っていったのである。その内容は、梶原一騎による「消える魔球」が消える原理の説明並みに馬鹿力での寄り切りだったが、それでも説明は説明だ。納得するしかない。これはそういう映画なのだ。

思えば、監督デビュー作である『ゲット・アウト』の頃から、ジョーダン・ピールはどう考えても不条理な映画内の事象に対して無理やり説明をつけていた。「嘘だろおい!」というオチだったとしても「いや、でもこの映画はそういう話なんですよね」と観客を無理やり納得させる、そんな剛腕が備わっている人である。貧困や人種の問題への問題意識と寓意が詰め込まれた社会派ホラーの『アス』だが、しかし映画としての凄みは、一見不条理な内容を不条理で終わらせない誠実さにあると思う。寓意を寓意のままで放り出さず、ちゃんと着地させるパワーこそが、『アス』とジョーダン・ピールの持ち味である。

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