木村拓哉が主演を務める日曜劇場「グランメゾン東京」第4話が、11月10日に放送された。視聴率は、13.3%と過去最高を記録し、まだまだ伸びる予感。
電車なんかでもこのドラマの話をしている人をちらほら見かけるし、"社会現象"にまで上り詰める可能性もありそう。

倫子の尾花化が進む


「マリ・クレール ダイニング」の編集長・リンダ(冨永愛)が「グランメゾン東京」のプレオープンに来店することに。評価次第で今後が決まってしまうほどの影響力を持つリンダだけに、尾花(木村拓哉)はデザートのモンブランを作り直すと言い出す。さっそく祥平(玉森裕太)の働くホテルに向かうが、尾花がスカウトしたのは萌絵(吉谷彩子)だった。

「少なくともここにいる誰よりもセンスのあるデザートが作れます」

萌絵が思った以上に自信家だった。というより、ナチュラルにケンカを売るちょっとイタイ感じの料理人だった。同じ自信家でも、相手に最低限の敬意を払う尾花とはまるで違うタイプの自信家だ。


しかし、萌絵が作ったモンブランは、美しい見た目はしているものの、栗本来の味を引き出しておらず、「コースの締めくくりに相応しくない」尾花と倫子(鈴木京香)は渋い表情。

「期待外れだったって言ってんじゃん」

舐めた口を利く萌絵に思うことがあったのか、それとも発奮させるためなのか、スカウトしといて尾花の傍若無人ぶりはすさまじい。

「そんなの私たちのメニューじゃない」

倫子もなかなかに厳しい発言だ。まるで尾花のようだ。むしろ、自分の腕にそこまで自信を持っていないにもかかわらず、ハッキリと意見を伝える様はある意味では尾花以上に強気と言える。実力を棚に上げてでもシェフという自分の役割を全うしているのだ。
このドラマのテーマの1つ"大人の青春"という言葉通り、大人になっても成長する姿を見せてくれている。

京野(沢村一樹)が持ち前の人心掌握術で意地を張る平古(玉森裕太)に萌絵の手助けをするよう動かし、その平古が食材への執着から栗の鬼皮を使って風味を抽出するアイデアを生み出した。持ち前のセンスであっさりと料理を生み出す萌絵が、料理の本質に向き合う展開には、綺麗なモンブランと地味な鬼皮は最適解だ。

「ウニ出とるやないかい!」でいい感じに格を落とす江藤


1、ジロール茸とひもとうがらしのサブレ

2、山羊乳のバヴァロア

3、茄子と白レバーのプレッセ

4、モンサンミシェルのムール貝─冷製スープ─

5、きのことホッキ貝のヴォル・オ・ヴァン

6、牛の胃袋のグリエ

7、雲丹のグラディネ

8、本州鹿ロースと血液を使ったコンソメ

9、メレンゲのアイスクリーム

10、モンブラン・アマファソン

今話から加入していた新入の柿谷(大貫勇輔)は、予想通り、いや、正確には制作側が予想させた通り、見事な裏切りを見せてくれた。江藤(手塚とおる)によってスパイとして送り込まれた柿谷は、プレオープンでメイン前の大事な1品「ウニのグラディネ」の仕込みをせずに、厨房からバックれるという何とも大胆で微妙な嫌がらせに打って出たのだ。
厨房では欠品にする案も出たが、それは尾花が許さない。そこで京野は、客として呼んでいた平古にウニの下処理を手伝うようお願いする。
「見せつけてやれよ、お前が必要だってことを」とまたしてもプライドをくすぐられた平古は、すぐに厨房に向かい、長い間、尾花の元で見習いとして働いていた実力を発揮する。

「ウニ出とるやないかい!」

「ウニのグラディネ」は、平古の活躍でギリギリ間に合わせることに成功した。客があげたSNSの画像を見た江藤は、「ウニ出とるやないかい!」と口をひん曲げながら柿谷を一括した。柿谷のウニを捨てたり盗んだりせずに、"下処理をしない"という地味なやり方も、SNSで逐一チェックしていた江藤も見事にダサい。

「グランメゾン東京」のメンバーも、柿谷がいなくなっウニの下処理で苦戦はしたものの、柿谷が江藤の差し金だとかそういったことは一切話題にしなかった。江藤が相手にされていない感を強調している。


江藤は、「最強のライバル店の極悪オーナー」から、良い感じに「小ズルいだけの卑怯者」へと格を落とした。今後も、「毒を盛る」「虫を混入させる」などの最悪な嫌がらせではなく、「冷蔵庫の電源を切る」ぐらいの絶妙に地味で困る嫌がらせに励んでほしい。

今話は萌絵の意識改革に加えて、平古と尾花の和解への第一歩も描かれた。デザート開発→萌絵の意識改革→萌絵の上司である平古の本心へと迫った。毎回1つのテーマにしっかりと多くのメインキャストが絡んで転がり、小さな伏線を回収する脚本は、美しくて気持ちがいい。「コンソメが強くてオマール海老を殺している」という尾花から平古へのダメ出しをする回想シーンがあったが、平古にはいつかオマール海老を使った料理で、尾花の顔を天井に向かせてほしい。

木村拓哉「グランメゾン東京」江藤「ウニ出とるやないかい!」尾花はバナナだけじゃないぞ!黒幕を考察4話
イラスト/たけだあや

犯人は本当に京野の可能性も……


3年前の「ナッツ混入事件」の黒幕について少し触れたい。栞奈(中村アン)は、「尾花夏樹に一番嫉妬している人」と京野を怪しんでいたが、第4話の時点で黒幕に近づく展開はない気がする。しかし、あれだけ大々的に疑っておいて、まるっきり当てが外れているとも考えづらい。

2話のレビューで僕は、尾花夏樹(おばななつき)という名前にはバナナが隠されていると書いた。しかし、実はバナナに注目させるミスリードという可能性もなくはない。おばななつきには、「ナッツ」も入っているし、「ハナ」も入っている。


尾花は事件を起こした皿に、テーブルに飾られていた花をあしらった。実はナッツのアレルギーではなく、この花にアレルギー物質が混じっていたことは考えられないだろうか? つまり、犯人は尾花本人。そして、その花を用意したのはおそらく京野だ。4話のプレオープンでもテーブルに花を置いたこと強調するシーンがあったが、これが伏線になるのかもしれない。

アレルギーを知っていてわざと置いたのかどうかはさておき、京野と花は、事件に関係する気がする。しかし、実際に花だとしたら尾花はあとあと自分で成分を調べていそうな気もする。そうなると尾花は後悔の念にさいなまれて……。考察がぐるぐるしてきたので、とりあえず3話のレビューでも書いた、"美優(朝倉あき)黒幕説"を僕はおす。
(沢野奈津夫)

■『グランメゾン東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋。
料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校
音楽:木村秀彬主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」