映画「アナと雪の女王2」が先日より全国ロードショーとなった。前作「アナと雪の女王」が空前のヒットを記録したこともあり、続編の公開に胸が躍っている方も多いだろう。
約100年に渡って、子供から大人まで楽しめる映画作品を作り続けているディズニースタジオだが、なかには考えさせられる作品や驚くほどシリアスな作品もある。ハッピーエンドが基本だと思われがちだが、ぎりぎりバッドエンドと言える作品も少数ながら存在し、実は幅広いジャンルの作品を生み出しているスタジオだ。
とはいえ、基本的には家族向けの作品が多いため、ディズニーの作品にはいくつか有名な共通点が存在する。「動物と喋って仲良くなりがち」「幼い頃に親を亡くしがち」「ひと目で恋に落ちがち」などたくさんの共通点のなかで、今回は「九死に一生を得がち」問題について取り上げたい。
敵に倒されてしまったヒーロー、揺さぶって起こそうとする仲間たち、目を覚まさない様子に涙を流すヒロイン……といったシーンはディズニー映画に限らずよく見かけるシーンだが、ここから「急に目を開けて回復し、全員が喜ぶ」というシーンも負けず劣らずかなり多い。詳細はネタバレになるので控えるが、「アナと雪の女王」もこの「九死に一生を得がち」な作品のひとつであった。
というわけで今回は、ウォルト・ディズニー96年の歴史において、どれくらいのキャラクターが九死に一生を得てきたのかを検証していこう。
ディズニー映画で、キャラクターが九死に一生を得て助かる確率は?
今回はディズニー長編映画のうち、短編集・オムニバス作品と日本未公開作品を除いた全47作品について「キャラクターが九死に一生を得ているシーンがあるかどうか」を調べてみた。
なお今回の「九死に一生を得る」の基準は以下である。
<九死の基準>
・目を閉じて一旦行動を停止する
・周りの人が死んだと思って、泣いたり息を飲んだりする
・状況的に考えて生存がかなり難しい状況である(凶暴な動物に追いかけ回されるなど)
<一生の基準>
・上記のいずれかの状況から回復、もしくは脱出する
では、この基準に当てはまるシーンがあった作品はどれくらいだろうか?
九死に一生を得て助かる:21.3%
九死に一生を得られず助からない:31.9%
その他:46.8%
まず、キャラクターが「命に関わるピンチ」に遭遇する確率は53.2%。過半数をやや超える結果となっているものの、さすがにファミリー向けというべきか、圧倒的に多いわけではないようだ。
さらに分類すると、命のピンチを迎えたキャラクターが九死に一生を得て助かる確率は21.3%。助からない確率は31.9%となっており、予想に反して助からないケースの方が多いという結果となっている。
逆に、誰も命のピンチを迎えないまま起承転結を終えるディズニー作品としては、短編「魔法使いの弟子」で知られる不朽の名作「ファンタジア」、最も有名なプリンセス作品「シンデレラ」などがあり、比較的手に汗を握らず安心して楽しめる作品が並ぶ結果となっている。
九死に一生を得られるキャラクターとそうでないキャラクターは?
次はキャラクターの種類別に「誰が九死に一生を得られ、誰が得られないのか?」を見ていこう。これは端的に「助かるキャラクターとそうでないキャラクター」を分けてみるというものだが、結果はどうなるだろうか?
<主人公>
ピンチになる確率:12.8%
助かる確率:100%
<主人公以外の味方キャラクター>
ピンチになる確率:23.4%
助かる確率:93.6%
<敵>
ピンチになる確率:34.0%
助かる確率:70.1%
主人公の助かる確率は泣く子も黙る100%。さすがディズニー作品というべきか、主人公は絶対的に死なないものと安心して鑑賞できそうである。
主人公よりもピンチに追い込まれ、しかも本当に死んでしまうことがあるのが主人公以外の味方キャラクターである。代表的な例としてはディズニー初期の名作にしてトラウマ体験とも呼ばれる「バンビ」などがあり、冒頭の明るい雰囲気から一転し、某メインキャラクターが突然逝去したりするため、鑑賞する際はぜひ心して見てほしい。
反対に、最も助からない確率が高いのが敵キャラクターだ。逆に70%は助かりすぎという意見もあるかと思うが、各作品を見てみると、実際に命の危機にまでさらされていることはかなり少ない。
例を挙げると101匹の純朴な子犬たちをまとめて毛皮にしようとしていたにも関わらず交通事故で泣き叫ぶだけで終了する「101匹わんちゃん」の敵役・クルエラ、逮捕されるものの命の危機までには発展しない「ベイマックス」の敵役などがおり、特に最近の作品では、いくら敵役といえども司法の手に判断を委ねるケースが多くなっているようである。
だいたい真実の愛で救われるのではないか説
では、実際に九死に一生を得たキャラクターは、どうやって助かっているケースが多いのだろうか。最もイメージに近いのは真実の愛(だいたい王子とのキス)だが、実際どうなっているかを調べてみた。
最も多かったのはやはり「真実の愛」型。キスとは限らないものの「本当に愛してくれている誰かのおかげでピンチ脱出!」というパターンがもっとも多い。該当する5作品はすべてプリンセスものとなっており、どれもディズニーの世界観を存分に楽しめる作品となっている。
その他が多かったのが「魔法で助けてもらえる」型の作品で、これには「ピノキオ」「コルドロン」などが該当。
同数だったのが「単なるケガだった」型で、これは単なる周囲の早とちりで、別に命に別状はなかったというおっちょこちょい型のパターンである。
だいたい転落で負けるのではないか説
最後にもうひとつ、ディズニーキャラクターの敵のやっつけられ方について見ておこう。
最も多かったのは「高いところから落ちる」型。ディズニー初の長編「白雪姫」から初のフル3DCGプリンセス作品「塔の上のラプンツェル」まで、新旧問わず「敵を高いところから落とす」というパターンは非常に多い。
全体的に「敵の邪悪さと倒され方の酷さは特に比例しない」傾向にあるらしく、逆に「そこまでして徹底的に倒す必要があるのか?」と疑問にかられてしまうほど敵が悲惨な最後を遂げてしまう作品もある。
「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」の敵役・サイクスや、「ライオン・キング」のスカーなどはディズニー96年の歴史の中でもかなり徹底的に倒された敵役達の一人だと思われるので、特にスッキリしたいときには観てみるのもよいかもしれない。
古今問わず名作の多いディズニー作品。古い作品から最新の作品まで、共通点も含めてこれを機に楽しんでもらえればと思う。
■まいしろ
社会の荒波から逃げ回ってる意識低めのエンタメ系マーケターです。音楽の分析記事・エンタメ業界のことをよく書きます。
Twitter:https://twitter.com/_maishilo_
note:https://note.mu/maishilo