結局はただの中学生だった木村拓哉と沢村一樹「グランメゾン東京」第8話

日曜劇場「グランメゾン東京」第8話が12月8日に放送された。
第7話で、「倫子(鈴木京香)さんのことが好きです」と急に中学生のような甘酸っぱい恋愛を持ち込んだ京野(沢村一樹)。
せっかくの本格グルメドラマに、よくわかんない要素が混ざってどうなってしまうのかと思ったが、いらない心配だった。
「グランメゾン東京」結局ただの中学生だった木村拓哉と沢村一樹、ベッド取り合うジャンケン3本勝負8話
イラスト/たけだあや

あやうくストーリーを壊すところだった京野


「お前さ、一緒に店やってんのに自分勝手にみんなが困るようなこと普通言う?」

ごもっともとしか言いようのない尾花(木村拓哉)の一言で幕を開けた第8話。告白してしまった手前引き下がれず、京野は「エスコフィユ」での事件を持ち出して反論する。しかし尾花は、残ったワインを飲み干し、「後は2人でゆっくりと……」と余裕の態度でその場を後にした。これをきっかけに2人の関係はこじれてしまう。

翌日、京野は相沢(及川光博)に告白してしまったことを相談。

「まさか50目前にして自分があんなに素直に言っちゃうと思わなかったんだよ。
朝起きたら『あ〜やっちゃったー』って」

良かった。いや、本当に良かった。「倫子さんが好きで好きでたまらないんだ……」とか言われたら店もストーリーも全てが壊れるところだったが、京野がしっかりと自分の置かれた状況を把握していてホッとした。

うめーうめーって言ってくれるだけで嬉しいのよ


一方の尾花は、師匠の潮卓(木場勝己)を店に連れてくる。しかし潮は、「グランメゾン東京」の料理を「まずい」「星なんかにこだわるから、大事なものが見えなくなるんだよ」とぶっきらぼうな物言いで全否定。尾花の料理が初めて否定された瞬間だ。

潮は、心筋梗塞で倒れてから塩味を2倍に感じてしまう味覚障害になっていたのだ。
そんな自分を実験対象にして、「グランメゾン東京」が客のことをしっかり見ているのか試していたのだった。

それに気付いた尾花たちは、塩味を抑えて香りを強調した料理で再来店した潮を納得させた。あんなに怖かったのに、レモンバームで香りを加えた「牛の胃袋のグリエ」を食べた潮は、ただの優しいおっちゃんの笑顔をしていた。

「10人ちょっとの常連さんがうめーうめーって言ってくれるだけで嬉しいのよ」

目の前の客の大切さを見失っていた尾花に、潮は星を取ることが全てではないと料理の本質を語った。

内容やスタンスこそ違うが、これは第7話で相沢(及川光博)の妻・エリーゼ(太田緑ロランス)の主張と同じだ。さまざまな犠牲を払い、それでも手に入れることができるかわからない星よりも、すでに持っているものを大事にする幸せを訴えている。


その上でエリーゼと潮が言った言葉は同じで、「三ツ星取れよ」だった。目的の為に払った代償を理解し、それでも三ツ星を目指すことを選んだ尾花の意志の強さに納得させられたのだろう。きっと、いつか自分たちが見た夢の続きを尾花なら見させてくれると期待しているのだ。

大人で子供



中学生化した京野の暴走から、倫子の家を出ることになった尾花が行きついたのは京野の家だった。「この家があったか」というよりは、「もともとここでよかったじゃん」と思うほど、しっくりくる2人。

簡素で特に贅沢している様子もない家は、大人の京野イメージにピッタリで、甘酸っぱい告白を演じたことを感じさせない。
しかし、2人の思い出らしき「美味しんぼ」の山や、ベッドを取り合う「ジャンケン3本勝負」は、ただの中学生だった。三ツ星を狙うには、何かを割り切る大人の覚悟と、中学生のような純粋さが必要なのかもしれない。
(さわだ 沢野奈津夫改め)

■『グランメゾン東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
脚本:黒岩勉プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋。料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校音楽:木村秀彬主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」