アーティスト自身が作品の権利を持つことに早くから自覚的で、個人事務所名義で過去作品の原盤権を買い取るなど、独立性保持のための基盤整備は2004年に着手、2007年までに完了させている。2008年には公式モバイルサイトGLAY MOBILEを開発し、メンバーのインタビューや撮り下ろし写真を毎週更新するWebマガジンや、各メンバーの連載コーナー、Webラジオ機能など幅広いコンテンツを徐々に網羅。
2010年に自主レーベルloversoul music & associates(現LSG)を立ち上げると、一早くオンライン公式ストアG-DIRECTを設立して自前の販路を確保、GLAY Official YouTubeチャンネルも開設。2018年には、GLAYのすべての楽曲と映像、雑誌記事なども電子化して収めた有料公式ストリーミングサービスGLAY appをリリース。既存のメディアに頼り過ぎることなく自分たちの作品や考え、想いを発信できる地盤固めを早々に手掛け、随時その機能をアップデート、時代の流れに対応してきた。

昨今ではタレントやアーティストの独立が頻繁に報じられているが、GLAYはそのムーブメントに10年以上先んじて自分たちの活動全般の手綱を握り、様々なノウハウを積み上げてきたのである。
素顔のTAKUROは「尊敬すべき理想の大人」
ハード面の整備だけでなく、ピンチへの緊急対応も誠実。例えば、JIROが体調不良のためドクターストップが掛かり急遽欠席した2017年の金沢公演は、本人を象った紙パネルとリハーサル時に録音してあったベース音源を用いてしのぎ、特別な企画を盛り込んでオンリーワン感を演出、さらには仕切り直しての代替公演も後日開催すると発表。“神(紙)対応”と絶賛された。数々の非常事態を乗り越えてこられたのは、社長&リーダーTAKUROを中心に、“もしもの場合”を常に思い描く危機管理体制があってこそ。現在、コロナ禍に見舞われながらもモチベーションを落とさずクオリティーの高い発信を続行できている基盤には、“自分たちで何とかするしかない”苦境をチャンスと捉え、“自分たちのやりやすいように”一から丹念にカスタマイズしてきたバンドの長い歴史が横たわっている。彼らの故郷・北海道の開墾者精神にも通じるたくましさと先見性は、この仄暗い時世を生きる私たちに一筋の光と大きな示唆を与えてくれる。