LUNA SEA特集 #6| “ライヴ”を守るために――強い意志で音を鳴らし続けるコロナ禍の活動

結成30周年! LUNA SEA特集 #6|LUNA SEA

ロックバンドLUNA SEAが結成30周年を祝し、開催中の全国ツアー『LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE-』。2020年2月にスタートしたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で中断。2度の延期の末、本来はファイナルとなるはずだった5月の東京ガーデンシアター3Daysを開幕公演に置き換えるような形で、2021年6月にようやく再開を果たしたリベンジツアーである。


感染防止対策のために3月に開催したさいたまスーパーアリーナ振替公演で取り入れた、中盤に20分間の換気休憩を設ける2部構成スタイルを踏襲。10枚目となるオリジナル・アルバム『CROSS』収録曲を中心に最新の世界観を提示する第一部と、90年代から長きにわたり親しまれてきた代表曲群を連打する第二部。休憩によって集中が途切れかねないデメリットを物ともせず、むしろ二度のピークをもたらすことに成功していて、感染防止対策をプラスに転じた見事な演出に驚く。

各地会場で目の当たりにしたのは、LUNA SEAを愛する人々と共に「ライヴという大切な場所を守っていくのだ」という強い意志を感じさせるメンバーたちの姿。ファンのみならず、音楽を愛する全ての人々にぜひ体感していただきたいステージが繰り広げられている。


“終幕”、そして“REBOOT”へ

89年に地元・神奈川でRYUICHI(Vo)、SUGIZO(Gt、Vn)、INORAN(Gt)、J(Ba)、真矢(Dr)の現メンバーが揃って産声を上げたLUNA SEAは、91年にエクスタシーレコードより1stオリジナル・アルバム『LUNA SEA』でデビュー。翌92年にはオリジナル・アルバム『IMAGE』でメジャーデビューを果たす。


激しさやパンキッシュな衝動性と神秘的な幻想性とを併せ持つアンビバレントな音楽性、華麗なライヴパフォーマンスは多くの人々を虜にし、瞬く間に人気を得るが、2000年12月の東京ドーム2Days『THE FINAL ACT TOKYO DOME』をもって“終幕”。それは事実上の解散であり、無期限の活動休止宣言だった。

LUNA SEA特集 #6| “ライヴ”を守るために――強い意志で音を鳴らし続けるコロナ禍の活動
終幕ライヴを収録したDVD『LUNA SEA THE FINAL ACT TOKYO DOME』

2007年に東京ドームで開催した一夜限りの復活ライヴ『GOD BLESS YOU 〜One Night Dejavu〜』を経て、2010年には“REBOOT”と銘打ち本格再始動、ワールドツアーも行った。

LUNA SEA特集 #6| “ライヴ”を守るために――強い意志で音を鳴らし続けるコロナ禍の活動
東京ドームで開催された一夜限りの再結成ライヴを映像化した『LUNA SEA GOD BLESS YOU〜One Night Dejavu〜2007.12.24 TOKYO DOME』

2013年には13年ぶり8枚目となるオリジナル・アルバム『A WILL』をリリース。2014年から2015年に掛けた25周年のアニバーサリーイヤーは、14年ぶりの全国ツアーを開催しただけでなく、初の主宰フェス『LUNATIC FEST.2015』を実施。伝説のバンドとして神格化されることに甘んじず、現在進行形のロックバンドとして、LUNA SEAは音楽シーンにその存在感を示し続けてきた。




2017年には9枚目のオリジナル・アルバム『LUV』をリリース、2018年には第二回目となる主宰フェス『LUNATIC FEST.2018』を開催。結成30周年を迎えた2019年には、10枚目のオリジナル・アルバム『CROSS』を、スティーヴ・リリーホワイトを共同プロデューサーとして迎え完成させた。

U2のアルバム『War』を筆頭に、スティーヴが手掛けた作品群は少年時代のメンバーが音楽に恋をした原体験そのもの。そんな彼との共同作業はLUNA SEAに大切なものを改めて思い起こさせた。それは、バンドで音を鳴らすことのできる純粋な喜び、ときめきといった初心である。

傑作『CROSS』を引っさげた全国ツアーは2020年2月初旬にスタート。
新型コロナウイルス感染症の脅威が忍び寄ってはいたものの、当時の日本には未だ今ほどの危機感は共有されておらず、だからこそ、来場者にマスク着用を求めるLUNA SEAの公式アナウンスをいち早い対応として明確に記憶している。

LUNA SEA特集 #6| “ライヴ”を守るために――強い意志で音を鳴らし続けるコロナ禍の活動
スティーヴ・リリーホワイトを共同プロデューサーに迎えて制作されたアルバム『CROSS』

ツアー初日公演では、熟練していながらも瑞々しいという稀有なパフォーマンスで驚かせ、新機軸の演出でも圧倒、ファンを歓喜させた。『CROSS』収録曲のポテンシャルはライヴで存分に発揮され、バンド史上最高のツアーになる手応えをメンバーは異口同音に語っていたのだが、2月中旬にファンクラブ限定で開催された町田公演を最後に、コロナ禍を鑑みツアーは中断することとなる。

“ライヴ”を守るために――コロナ禍の活動

第一回目の緊急事態宣言が発出されたのが2020年4月8日。LUNA SEAは4月15日に新曲「Make a vow」をまずはファンクラブ限定で先行配信し、リモート撮影によるMVを公開。1000人超のファンがリモート参加した別ヴァージョンのMVも後日制作し、たとえ直接会うことはできなくても繋がっているのだ、というメッセージを発した。


そして、5月にはもともとは東京ガーデンシアターでの30周年記念公演を生配信することになっていた放送枠を活用し、医療従事者やフロントラインワーカーを支援するリモート・チャリティーフェス『MUSIC AID FEST.』を急遽開催。
コロナ禍という非常時に臨機応変に対応し、一連の発信はスピード感を持って行われた。


2020年末、予定していたさいたまスーパーアリーナでの2Days公演は、初日の開場直前に真矢のコロナ感染が発覚し開催見合わせに。真矢は闘病の末に生還し、振替公演を2021年3月に開催、現在に至るまでのプロセスは冒頭に記した通りである。

6月からリスタートした全国ツアーは、各地のコロナの状況や感染防止ガイドラインに従うため、着席であったり立ち上がることが許可されていたりと鑑賞のルールはまちまちだが、声援を送ることは全国どの会場でも禁じられている。しかし、その静けさの中にも、拍手や手拍子の強弱が熱量の高まりや期待感、陶酔を雄弁に物語っていて、バンド側はそれをしっかりとキャッチしてパフォーマンスの燃料とする、そんな新しい形のコミュニケーションが確立してきている。


コロナ禍で不要不急とされ、悪者であるかのように扱われてきたライヴという場を守っていく――無言で燃え盛るライヴ空間は、そんな真剣で切実な想いが双方で共有されているからこそ生まれているのだろう。




LUNA SEA特集 #6| “ライヴ”を守るために――強い意志で音を鳴らし続けるコロナ禍の活動

メンバーの姿から学ぶもの

2000年の終幕、2010年の“REBOOT”というバンド史における節目を10年単位で経験してきたLUNA SEAは、2020年に新型コロナの直撃を受けながらも屈することなく、30周年ツアーを行っている。避けることのできない困難や、いつも通りとはいかない制約の多い状況を、どう受け止めて乗り越えるか? ライヴを観ているとメンバーの姿から学ぶことが多く、勇気付けられている。

今回のツアーで胸打たれる大きな要因は、LUNA SEAというバンドの真剣な生き様への尊敬というのがまずは一つ。これまで5回にわたりこの連載でメンバー個別レビューを綴り“捧げる”という言葉を多用したが、32年目の結成記念日を迎えても衰えるどころか、一層純度を増している、音楽に対する献身的な姿は、この上なく尊い。


そしてもう一つは、健やかなる時も病める時も支え合う5人の姿に対する感動である。かつて終幕しバラバラになっていた時代も、こうして2020年代に一層強固な結びつきを得るために必要な時間だったのではないか?とすら思えてくる。

30年という長い時を経た先にしか出逢うことのできない、傷だらけで、だからこそ強く、この上なく美しい景色をLUNA SEAは私たちに見せてくれている。

(大前多恵)

▲LUNA SEAの曲が聴き放題!!


●LUNA SEA特集


【#1】RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者
【#2】SUGIZO 弱者のために声を上げ続け、音楽を捧げる、稀代のロックスター
【#3】INORAN “風”のように“凝り固まる”こととは程遠い可変性が魅力
【#4】真矢 熱く人間的なドラミングで魅せる一方、静寂の存在を浮き彫りにする名手

【#5】J 炎のように情熱を燃やし続け、軸がブレない雄々しきベーシスト


ライヴ情報

【LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE-】

■仙台サンプラザホール
2021年10月2日(土)※2020年4月25日(土)より再延期・振替
2021年10月3日(日)※2020年4月26日(日)より再延期・振替
問い合わせ:キョードー東北(TEL.022-217-7788)

■上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
2021年10月23日(土)※2020年3月28日(土)より再延期・振替
2021年10月24日(日)※2020年3月29日(日)より再延期・振替
問い合わせ:HIGHERSELF(TEL.082-545-0082)

■本多の森ホール(旧石川厚生年金会館)
2021年12月4日(土)※2020年3月7日(土)より再延期・振替
2021年12月5日(日)※2020年3月8日(日)より再延期・振替
問い合わせ:FOB金沢(TEL.076-232-2424)

■神戸国際会館こくさいホール
2021年12月20日(月)※2020年5月2日(土)より再延期・振替
2021年12月21日(火)※2020年5月3日(日)より再延期・振替
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL.0570-200-888)

■大阪国際会議場メインホール
2022年1月31日(月)※2020年4月4日(土)より再々延期・振替
2022年2月1日(火)※2020年4月5日(日)より再々延期・振替
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL.0570-200-888)

関連リンク

■LUNA SEA オフィシャルサイト


Writer

大前多恵


ライター・編集者/NHKディレクターを経てロッキング・オン入社、2006年独立後はフリーランスに。音楽家や俳優など、表現者へのインタビュー取材を中心に活動中。ライブレポート、作品レビュー、書籍編集、語り起こし本の執筆、物語の創作なども。

関連サイト
トロイメライの庭