朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第21週「1994-2001」

第101回〈3月24日(木)放送 作:藤本有紀、演出:橋爪紳一朗〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』驚きの女神とは… 安子の気配が近づいてきているような予感しかない
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

※朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第102回のレビューを更新しましたらTwitterでお知らせしています


黙っているときのすみれさんは天使

すみれ(安達祐実)破天荒将軍(徳重聡)の離婚と一恵(三浦透子)榊原(平埜生成)の長い恋は、ナレ離婚、ナレ婚で良かったのではないか。一恵と榊原の待たされ愛はかつてのひなた(川栄李奈)五十嵐(本郷奏多)と同じパターンなので余計にこの手のエピソードのおかわりは要らないと思ってしまうのだが、こういうワイドショーや女性週刊誌やネットニュース的なものも大事なのか……。それでも「理不尽将軍」や「黙っているときのすみれは天使」などのワードにはセンスが光った。


【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜101回掲載中)

第100回で、破天荒が結婚したら破天荒でなく、仕事が絶好調のときに仕事を辞めて家庭に入ってほしいと言うのは嫉妬にほかならないとすみれが榊原相手に愚痴っていた。そうそう、同業者同士で付き合ったり結婚したりすると、けっきょく仕事への対抗意識が働いてうまくいかないことは俳優に限ったことではない。すみれは棒演技エピなどもあったが、なんだかんだで演じるという仕事が好きらしい。

破天荒将軍と違って仕事に理解がありそうな榊原は、紆余曲折を経て一恵にプロポーズするのだが、「急須でお茶をいれてほしい」と言う。これでは彼もまた破天荒将軍と同じく女性に家庭に入ってほしいと思うタイプのように感じるのだが、これでいいのか。

でもいろいろあった末、榊原の言葉を聞いている一恵の表情はこれまでにないなんとも儚げな憂いある顔をしていた。
一恵はお茶のお師匠さんの道より榊原の妻の道のほうが幸福に感じるタイプなのかもしれない。

女の顔になっている三浦透子の演技が凄い。余談だが、いま公演中の『ミュージカル「手紙」2022』に三浦がヒロイン役で出演している。とにかく澄んだ高音の歌が素晴らしかった。役はとても一途で、献身的であることと関西ことばとでどこか一恵と重なるものを感じた。

ひなたが聞き覚えのある言葉を

さて。そうこうしているうちに、るい(深津絵里)錠一郎(オダギリジョー)が帰国。
錠一郎はもっと練習したいとレッスン場に行ってしまい、るいはトミー(早乙女太一)に送ってもらって帰宅する。

回転焼きを頬張るるいを見ながら「こわい顔してお菓子食べる人おらへんやろ」「怒ってても疲れてても悩んでても、自然に明るい顔になる」とか、「お父ちゃんの音楽に連れていってもらい」とか言うひなた。安子(上白石萌音)の言葉をリフレインしている。



朝ドラ『カムカムエヴリバディ』驚きの女神とは… 安子の気配が近づいてきているような予感しかない
写真提供/NHK

なんだかもう安子の気配がひたひたと近づいてきているような予感しかない。きっと最終回までになんらかの形でるいとひなたは安子との邂逅を体験するに違いない。もうそれだけが楽しみ。
そのために積み重ねてきた半年だと思うから。なんにもなかったらびっくりする。

こうして安子をきっかけに母娘・ひなたとるいが深い会話をするようになった。母親や先祖の歴史や思いを次世代の子が聞く。それもまた『カムカム』に込めた祈りだろう。そして、未来に訪れるものが恐怖の大王ではなく、誰にも素敵な出来事がもたらされてほしいという祈りに違いない。

(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪










【前期の朝ドラ】清原果耶主演『おかえりモネ』の全レビューを見る

番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時00分~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時00分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時00分~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時00分(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時00分~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami