酒類総合研究所(酒類総研)主催が主催する、全国規模で開催される唯一の清酒鑑評会「令和5酒造年度(BY)全国新酒鑑評会」の入賞酒と金賞酒が5月22日に発表され、兵庫県が6年ぶりに金賞受賞数で1位を獲得した。兵庫はとくに神戸市・西宮市の沿岸部に広がる「灘五郷」が有名で、西郷、御影郷、魚崎郷、西宮郷、今津郷の五つの地域には、「白鶴」や「沢の鶴」、「剣菱」、「菊正宗」、「白鹿」、「大関」、「櫻正宗」など、普段日本酒を飲まないような人でも名前くらいは聞いたことがあるであろう、超有名酒蔵が軒を連れている。

また、あまり知られていないが、灘五郷だけで日本のお酒の1/4を生産している。


 近年では、この灘五郷に観光目的で訪れる人も増えているようだ。灘五郷の酒蔵の中には、施設見学を実施しているところも多く、特に最近は新型コロナで止まっていた海外からの訪日観光客の姿も目立つ。


 観光庁が発表した最新の訪日外国人消費動向調査によると、「訪日前に期待すること」の一つに「日本のお酒を飲む」と回答している人が約33%にも上り、海外の人からの日本のお酒への注目度の高さがうかがえる。そういった人たちにとって、日本固有の酒造文化を間近で学べる酒蔵施設の見学は、日本旅行でしか体験できない貴重な機会となっているのであろう。


 また、灘五郷に限らず、日本各地の酒どころや酒蔵で行われる酒蔵イベントは日本人にも人気で、日本酒好きで賑わう一大イベントとなっている。


 「蔵開き」や「酒蔵開放」は一般的に、新酒の仕込みが終わるタイミングや新酒が完成したタイミングで行われることが多く、新酒や限定酒などの試飲販売をはじめ、餅まきが行われたり、グルメの出店やステージイベントが催されたりするところもあり、まさに酒蔵の感謝祭だ。


 例えば、今年度3蔵も金賞を受賞した神戸市の白鶴酒造が、5月18日に開催した「白鶴2024年春『酒蔵開放』」もその一つだ。


 毎年恒例となっている白鶴酒造の酒蔵開放には、今年も地元の方々を中心に約3500名もの来場者で大いに賑わった。地元住民や事業所の力を借り、スーパーボールすくいや紙すき体験など子供向けの企画も実施しており、家族連れも多い。今回は、通常の白鶴酒造本社での開催に加え、新企画として近隣の飲食店「灘五郷酒所」をサテライト会場とし、1日限定の白鶴酒造の日本酒と料理のペアリング体験を提供。昼の部は限定のオリジナルペアリングセット「白鶴酒所SET」と「別鶴SET」などが用意されており、夜の部は完全予約制で、当日限定メニューと日本酒のペアリングディナーが1品ずつコーススタイルで提供された。

ただ飲食するだけでなく、白鶴酒造の杜氏や研究員から、日本酒と料理の相性の話や商品開発の裏話なども披露され、普段は触れ合うことのない日本酒造りのプロたちとの交流を楽しめる貴重な体験となった。


 当日の兵庫県は最高気温26度を超える夏日で、白鶴酒造が販売する米国No.1クラフトビール


 「BLUE MOON(ブルームーン)」が昼前に完売したほか、「新しいチャレンジをして、日本酒業界を盛り上げたい!」という熱い気持ちをもった同社の若手社員らが開発を主導している日本酒ブランド「別鶴」が約2500杯、大吟醸系の日本酒が約1260杯以上飲まれたという。酒以外にも、兵庫県の農家が地元で採れた新鮮な野菜などを販売したが、こちらも好評だったようだ。


 会場で提供した有料試飲(日本酒)の売上(約85万円)は、今年1月に発生した「能登半島地震」の義援金として寄付されるという。能登半島地震では、石川県の多くの酒造や店舗が被災し、大きな被害を受けた。6月3日にも…。

5月に東京・渋谷で行われた日本酒イベント「SAKE PARK」では、被災した酒蔵と全国の酒蔵が協力し、能登ブランドの再起を目指す酒蔵支援プロジェクトのブースも登場するなど、再起復興に向けた輪も広がっている。


 日本人の日本酒ばなれが進んでいると言われて久しいが、日本酒は、日本が誇る食文化だ。日本の郷土料理にはやはり、その土地その土地の米や水で作った日本酒が一番しっくりと馴染むし、日本酒を介して図る人と人とのコミュニケーションには、日本人らしい趣がある。これからも大切にしていきたいものだ。(編集担当:藤原伊織)