技能を教えるとしながら、実際には低賃金で酷使する人材確保に成り下がったとの酷評もある現行の「技能実習制度」。その「目的」と「実態」の乖離。
「目的」と「実態」の乖離は海外からの日本に対する信頼を大きく損ねるもので、あってはならない問題。実効性のあがる議論と報告を期待したい。
会議座長には独立行政法人「国際協力機構(JICA)」の田中明彦理事長が就任し、有識者15人で議論を深めることになる。
齋藤健法務大臣は22日の記者会見で「古川禎久元法務大臣が開催した特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会で把握ができた『課題や論点』について、委員の方々で、そういう問題意識を共有していただいた上で、精力的に議論していただきたい」と問題意識を共有して議論を進めることを求め、成果に期待した。
古川氏は7月22日の記者会見で、まずもって、人づくりによる国際貢献という技能実習制度の目的と人手不足を補う労働力として扱っているという実態があり、目的と実態が乖離している、と厳しい指摘のあることをあげた。
また「実習生側、実習実施者側、双方において、事前情報が不足しているため『聞いていたよりも賃金が低い』『聞いていたよりも能力が低い』等のミスマッチが生じている事例がある」ことも紹介した。
これまでの論点と課題であげられた事例では(1)実習生の日本語能力が不十分であるために職業上の指導やトラブル発生時の意思疎通に困難が生じている(2)不当に高額な借金を背負って来日するために、不当な扱いを受けても相談・交渉等ができない実習生がいる(3)原則、転籍ができないとされているため、実習先で不当な扱いを受けても相談・交渉等ができない実習生がいる。
(4)監理団体による監理体制や相談・支援体制が十分機能していない(5)外国人技能実習機構の管理・支援体制に十分でない面がある。
今後の技能実習制度の見直し検討に当たって、古川氏はポイントとして4点を上げていた。
(1)政策目的・制度趣旨と運用実態に乖離のない、整合性のある、分かりやすい仕組みづくりをすること(2)人権が尊重される制度であること(実習実施者、実習生の双方が十分に情報を得て、自ら判断できる環境を整え、現行技能実習制度において一部の実習先で生じている人権侵害事案等が決して起こらないものとすること)。
(3)日本で働き、暮らすことにより、外国人本人の人生にとっても、我が国にとってもプラスとなるような右肩上がりの仕組みとし、関係者のいずれもが満足するものとすること(4)今後の日本社会の在り方を展望し、外国人の受入れと共生社会づくりがどうあるべきかを深く考え、その考えに沿った制度とすることとした。
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は明確に示されている4点の課題解消と問題の再発防止のための提言を、実習生の目線から是非、効果のあがる内容に仕上げて頂きたいと願う。(編集担当:森高龍二)