今、世界中の暮らしが「スマート」に変わりつつある。市場調査会社のIDCの発表によると、AmazonのEchoやGoogleのGoogle HomeなどをはじめとするIoT・スマートホーム関連機器の2019年の出荷台数は前年比26.9%増になる見通しで、全世界で8億3270万台に達すると見込んでいる。

日本でのスマートスピーカーなどの普及率は6%ほどとみられ、まだまだ導入している家庭が少ないのが現状だが、世界的には着実に拡大傾向が続いているようだ。


 ところで、スマートホーム機器とはどんなものを指すのだろうか。


 スマート家電やスマートスピーカーなど、耳にする機会は増えたものの、実際に何ができるのか、よくわかっていないという人も多いのではないだろうか?


 スマートホームデバイスとは、電化製品などをインターネットでつなぐことで、スマホや音声で遠隔操作したり、センサーやGPSでの自動コントロールを可能にするものだ。スマートスピーカーに一声かけるだけでテレビや照明、エアコンなどを操作したり、外出先からスマホで家電を動かしたり、家に近づくだけで自動でエアコンを起動させたりすることもできる。要は、これまで人力で行ってきた細かな動作の数々を、声やセンサーだけで自在に操れるようになるのだ。昔気質の人は、そんなもの必要ないと思ったりもするようだが、一度使い始めてみるとその快適さはクセになる。

一つ一つは少しの手間でも、積み重なれば膨大な時間と労力になる。とくに高齢者のいる家庭や、子育て世代の家庭には強い味方になっているようだ。


 そんなスマートホーム機器を支えているのが、高度なIT技術だ。現在、スマートホーム機器の主力プロセッサとして用いられているのが、NXP Semiconductors社(以下、NXP)の「i.MX 8Mファミリシリーズ」だ。同プロセッサは、ビデオ処理やオーディオ処理の機能にも優れ、音声制御を付加したスマート家電の他、家庭用のデジタル機器や産業用機器、制御系の組み込み機器などにも広く採用されている。2018年3月には、より高度な処理機能を有した「i.MX 8M Mini ファミリ」を、発表し、話題となった。


 そして、この「i.MX 8M Miniファミリ 」の登場とともに、業界で注目されているのが日本の電子部品企業大手のロームだ。同社はこれまでにも、NXP製品向けパワーマネジメントIC(PMIC)を提供しており、NXP社のi.MX マーケティングのシニア・ダイレクターLeonardo Azevedo氏も「ロームはi.MXのエコシステムを実現する上で大切なパートナー」と明言している。


 そのロームが今年3月からサンプル出荷を開始しているのが、「i.MX 8M Miniファミリ」に最適なPMIC「BD71847AMWV」だ。同製品は、これまでロームが培ってきたプロセッサ向け電源技術を駆使して、プロセッサに必要な電源系統と機能を集積化。最高電力変換効率95%という高効率DC/DCコンバータをはじめ、システムに必要な電源や保護機能を1チップで供給する。さらに、最適な電源管理を行うON/OFFシーケンサーを内蔵しているので、小型化はもちろん、アプリケーション設計を容易にし、開発期間の大幅な削減に貢献するという。

わずか1cmにも満たないこのPMICが普及すれば、スマートホーム機器は今よりもさらに小さく便利に、スマートに進化するのではないだろうか。


 スマート家電やスマートスピーカーなどをすでに積極的に活用しているという人でも、それを支えるプロセッサやPMICを目にする機会はないだろう。でも、そんな目に見えないところで技術は日進月歩で進化している。スマートな暮らしの陰には、技術者たちのたゆまぬ努力と、技術の積み重ねがあるのだ。(編集担当:藤原伊織)