新型コロナウイルスの影響は経済のあらゆる面に波及し、ダメージを与えている。広告業界もその一つだ。

株式会社電通が日本の総広告費と、媒体別・業種別広告費を推定した「2020年 日本の広告費」によると、東日本大震災以降、右肩上がりだった日本の総広告費は、コロナ禍を機に9年ぶりのマイナス成長に転じているばかりか、リーマン・ショック並みの下げ幅をみせている。


 一方で、ポジティブな内容もある。新聞・雑誌・ラジオ・テレビからなるマスコミ四媒体広告費は前年を大きく割っているものの、インターネット広告費は前年に比べて105.9%のプラス成長をみせている。何かと対立しがちな新旧広告媒体だが、総広告費の観点から見れば、共に手を携える時期が来ているのかもしれない。


 それを象徴するかのように、昨今の企業CMにも新たな兆しが見え始めている。


 例えば、木造注文住宅を手がける株式会社アキュラホームが11月13日から放映開始したCMだ。

同CMで取り上げられているのは、同社が10月2日より販売している「キリンと暮らせる家 超空間プレミア」。


 34帖超のリビング、無柱、間仕切りなしが特徴で、文字通りキリン1頭が余裕で入れる広さが売り文句だ。CMでも、自宅のペットを言い合っている小学生の1人が、「私はキリン!」と声高らかに言い放つという、実にユニークな内容となっている。


 このCMで特徴的なのは、テレビのみならず、YouTubeでもWebCMバージョンを展開している点だ。短いテレビCMでは説明しきれない部分をWebCMで補完している。また、CMのメイキング映像もアップされており、親しみを生みやすい構成となっている。


 大手家庭用品メーカーのユニリーバでも、同社のヘアケア製品「ラックス」のCMで、ターゲット層である20代女性へPRするため、テレビCMとTwitterを連動させるキャンペーンを展開している。話題性の高いボーカロイドを起用するなど、製品PRだけでなくTwitter上で拡散されやすそうな要素を含めることで、2万を越えるリツイートの獲得に成功した。スマホを中心に情報収集する若年層に向けたPRの成功例と言えるのではないだろうか。


 また、テレビとインターネットの新たな連動を提案しているのが、国内マーケティング会社の株式会社アドフレックス・コミュニケーションズだ。同社が開発したリアルタイムTV連動広告配信システム「ODASO」では、CM開始から平均30秒程度、YahooやGoogleのWeb広告入札を強化することができるというもの。従来よりも費用対効果が期待できると好評で、さらに今後はSNS系媒体やリスティング広告への対応も開発中ということなので、新しい広告戦略の一つとして重宝されそうだ。


 いかに「バズる」か。これまでの主要メディアの広告費が減少しているのは、単純な景気の問題ではなく、広告の方向性や手段が多様化したこと、分散していることが大きい。広く浅くPRできるテレビと、よりターゲットを絞り込み、狭く深くPRできるインターネット。どちらが有利とかではなく、両方の長所を上手く連動させることが、今後の広告ではより必要とされているのだ。(編集担当:今井慎太郎)