「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

「撮影は続ける!カメラは止めない!!」 映画『カメラを止めるな!』は、全編ワンカットでゾンビ映画を撮ろうとする人々の物語。しかし、実は全編ワンカットの映画は他にもあった! 今回は、そんな撮影隊・演者・観客が一体となる「全編ワンカット」で実際に撮られた(あるいはそれを模した)映画を7本紹介していく。

「撮影は続ける!カメラは止めない!!」全編ワンカットの難しさとその魅力とは?

カメラを止めるな!

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

2018年6月23日より全国にて公開

2017年/日本/96分

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2017年にわずか300万円の予算で制作された映画『カメラを止めるな!』。翌2018年には全国300館以上の劇場で公開され、記録的な大ヒット。2019年の3月8日には早くも地上波で放送されるなど、一大社会現象を巻き起こした。

その魅力の一つは、登場人物たちが作ろうとする映画。それは、37分間「全編ワンカット」のゾンビ映画だ。

「全編ワンカット」ということは、つまりは映画の最初から最後までカメラを止めない、ということ。カットを割ることができないので、照明もあらかじめ画面の外に仕込んでおかなければならないし、録音機材も映り込まないように注意を払う必要がある。役者がセリフを間違えたり、機材がトラブルを起こしたら最初からやり直しだ。

しかし、それだけのリスクを冒してまで全編ワンカットで撮影された映画は、意外とあるのだ。今回は、実際にワンカットで撮られた映画や、ワンカットで撮ったかのように巧く見せた映画を紹介していこうと思う。

全編ワンカット映画を一挙紹介!

1. ワンカット映画の元祖! 『ロープ』(1948年)

『サイコ』、『鳥』、『めまい』などで知られる「サスペンスの神様」アルフレッド・ヒッチコック。彼が1948年に手掛けた「ワンカット映画の元祖」が、『ロープ』だ。

当時としては珍しいカラーフィルムで撮影されたこの映画は、全編がアパートの一室で繰り広げられる。ブランドンとフィリップという二人の青年は、自分たちがいかに優れているかを証明するために友人のデイヴィッドをロープで絞め殺し、死体を衣装箱の中にしまい込む。そしてその上に料理などを置き、こともあろうに被害者の家族や恋人、友人や恩師である大学教授まで呼んでパーティーを開くのだった。

ヒッチコックはその事件の顛末を、80分間ワンカットで描こうとしている。しかし、残念ながら当時のカラーフィルムは10分ほどしか持たず、フィルムの交換を挟まなければならなかったため、よく見ると登場人物の背中が大写しになった時や会話の合間などでカットが入っている。

しかし、ハラハラドキドキのサスペンスと実験性を見事に両立させた本作は、今なお語り継がれる名作といえるだろう。

2. カットは1つ、画面は4つ!? 『タイムコード』(2000年)

1980年代から90年代のVHSやデジタル技術の登場により、必ずしもフィルムを使わなくとも映画を撮れる時代が到来。これにより、フィルムではかなわなかった長時間の録画が可能になる。

『ロープ』から50年以上の時を経て公開された『タイムコード』は、『リービング・ラスベガス』などで知られるマイク・フィギス監督が手がけた、実に実験的な一本。ジーン・トリプルホーンやサルマ・ハエック、ステラン・スカルスガルド、ホリー・ハンターなど個性派揃いの本作は、ハリウッドを舞台に展開される愛憎劇だが、重要なのはそのストーリーだけではない。

97分間の本編は実際にワンカットで撮影されているばかりでなく、なんと画面が4つに分割されている。つまり、4台のビデオカメラでリアルタイムに撮影された映像が、一つの画面の中に組み合わされているのだ!

あまりにもリスクの高い試みだが、劇中では何度も「地震」が起こる(画面が揺れて登場人物がパニックを起こす)など、ユニークな表現が多用されている。残念ながら日本ではCSで放送されただけで、未公開・未ソフト化な本作。しかし、一見の価値はあるだろう。

3. 豪華絢爛なロシアの歴史をワンカットで! 『エルミタージュ幻想』(2002年)

エルミタージュ幻想

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

原題 :Russian Ark

2003年2月22日より全国にて公開

2002年/ロシア ドイツ 日本/96分

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気が付くとそこは、華やかな貴族たちが優雅に振舞っていた、かつてのサンクトペテルブルク。いつの間にか現れた謎の旅人とともにエルミタージュ美術館を歩くと、そこには、部屋ごとに異なる時代が待ち受けていた。

現代ロシアを代表する巨匠アレクサンドル・ソクーロフ監督が挑んだのは、世界遺産であるエルミタージュ美術館を舞台に、全編ワンカットで時間旅行を描くという、驚愕の試み。ピョートル1世やエカチェリーナ2世、ニコライ2世など、帝政時代の様々な人物や場面が登場する、豪華絢爛な歴史絵巻。特に、数えきれないほどのエキストラが登場する舞踏会の場面は必見!

いにしえのロシアを再現するために費やされた構想期間は、実に4年。2000人とも4000人ともいわれるスタッフやキャストが雇われたものの、撮影可能な期間はたった一日!全編ワンカットという気が遠くなる試みは、3回の失敗を経て、4回目で成功したという。

4. オスカーも獲得したワンカット風映画 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

原題 :BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)

2015年4月10日より全国にて公開

2014年/アメリカ/120分

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かつて「バードマン」というヒーロー映画で主役を張ったリーガンは、今ではすっかり落ちぶれたハリウッド俳優。過去の栄光を忘れられない彼は、心機一転を図るため、自らを主演にしたある舞台の演出をすることに。しかし、心の中でささやくかつて自らが演じたバードマンの声が彼を悩ませる。その上、舞台はプレビューを目前に控えながらもトラブルが相次ぎ・・・・・・。

『21グラム』や『バベル』で知られるメキシコの巨匠アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、かつて「バードマン」ではなく「バットマン」を演じたマイケル・キートンを主演に迎えた、ブラックな一作。

イニャリトゥと同じくメキシコ出身で『ツリー・オブ・ライフ』や『ゼロ・グラビティ』を担当したエマニュエル・ルベツキが撮影を担当。高度な撮影技術と特殊効果、編集テクニックを駆使し、全編がワンカットであるかのように仕上がっている。主人公の行動とともに移ろいゆく時間や目を見張るような浮遊感は、こうした演出のたまものといえるだろう。

努力が実り、アカデミー賞4部門を受賞。さらにルベツキは、前年の『ゼロ・グラビティ』と本作、そして翌2015年の『レヴェナント: 蘇えりし者』と、3年連続でアカデミー賞撮影賞を受賞する驚くべき快挙を見せた。

5. ドイツのベルリンを舞台に「彼女」が経験する、取り返しのつかないワンカット 『ヴィクトリア』(2015年)

ヴィクトリア

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

原題 :VICTORIA

2016年5月7日より全国にて公開

2015年/ドイツ/139分

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スペインからドイツのベルリンにやってきたヴィクトリアは、クラブからの帰宅途中、現地の若者4人と知り合う。孤独に過ごしていた彼女にとって、彼らとの出会いはとても楽しいものだったが、彼らには恐ろしい秘密があり……。

異国の地で出会った人との交流が一転、悪夢に変わってしまうという恐ろしい一夜を描いた、衝撃のサスペンス。

スリリングな展開もさることながら、その制作の裏側もすさまじい。わずか12ページのみの脚本を基に、全編を手持ちカメラによるワンカット、ほとんど即興演技だけで撮影したというのだ。140分にも及ぶ長尺がリアルタイムで収められているため、観客は登場人物たちと共に深夜から早朝までを過ごすことになる。

予算の都合から3回しか撮影のチャンスがない中、撮影中のアクシデントも即興で取り入れて何とか完成させたという。ドイツ本国の「ドイツ映画賞」を総なめにしたことも頷けるだろう。

6. 舞台が中止?ありえない。一ヶ月をワンカットで表現した 『アイスと雨音』(2018年)

アイスと雨音

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

2018年3月3日より全国にて公開

2017年/日本/74分

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ここまで洋画ばかりを紹介してきたが、もちろん日本にも「ワンカット映画」は存在する。『アイスと雨音』だ。

とある演劇の上演が計画され、集められた6人の少年少女たち。しかし、突如舞台自体が立ち消えになってしまう。彼らは、それぞれに舞台中止の事実を受け止め、葛藤するが、やがて公演を強行しようと考え始める。

74分間の本編はワンカットで撮影された本作の劇中で経過している時間は、リアルタイムではなく一ヶ月。演劇を主題にした映画だが、この映画自体が時間の経過をワンカットの間で省略していて、どこか演劇のようになっている。演劇と映画の境界を問うかのような実験的な一作に仕上がっている。

監督は、若者たちに人気を集める松居大悟。『ワンダフルワールドエンド』や『私たちのハァハァ』など、リアルな演技と新しい映像表現で知られる。実はキャリアのスタートは演劇からであり、本作には自らの体験も反映されているという。まさに集大成のような一本といえるだろう。

7. 実際に起こった惨劇を追体験する問題作 『ウトヤ島、7月22日』(2018年)

ウトヤ島、7月22日

「カメ止め」だけじゃない!!全編ワンカットの映画7選

原題 :UTØYA 22. JULI

2019年3月8日より全国にて公開

2018年/ノルウェー/97分

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2011年7月22日。ノルウェー南部の湖に浮かぶウトヤ島で突如、銃乱射事件が発生。わずか72分の間に69名が犠牲になった。犯人は、アンネシュ・ブレイビクという極端な右翼思想を持つ青年。同日には首都オスロでも政府庁舎を爆破しており、単独犯によるものとしては史上最多の犠牲者を出す、戦後最悪の悲劇となってしまった。

本作は、そんなウトヤ島銃乱射事件を主題にした問題作。事件が起こったのと同じ72分間をリアルタイムで再現するという試みだ。

ワンカットの手持ち撮影で映し出される映像に客観的な表現はほとんどなく、その場にいた登場人物に寄り添うのみ。一体何が起こっているのかもわからず、混乱のまま逃げ続けながら、はぐれてしまった妹を探すヒロインの体験を、観客は追体験することになるのだ。

世界中で賛否両論を巻き起こした本作は、2019年3月8日に日本で公開された。なお、同じく2018年には、ポール・グリーングラス監督が同じウトヤ島銃乱射事件を映画化した『7月22日』がNetflix限定で公開されている。

失敗が許されない撮影を乗り越えた先にあるもの

映画制作のの基本は、カットを割ることである。しかし、今回紹介したような全編をワンカットで撮影したような映画も、少なからず存在する。

何度も言うように、こういった映画は実質的な撮影期間は一日で終わってしまうものの、本番中はスタッフ・キャスト共に一切の失敗が許されず、下準備に膨大な労力を費やすため、非常にリスクが高い。

にもかかわらず、こういったワンカット映画が制作されるのはなぜだろう。やはりそれは、作り手と観客が一体となって物語に没入することを追求した結果なのではないだろうか。こうした映画を見ると、もはや我々観客は「映画を見ている」という事実すら忘れてしまうこともしばしばだ。

そしてそこに、映画というものが持つ魅力が秘められているのかもしれない。

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