【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

第91回アカデミー賞で作品賞に輝いた映画『グリーンブック』は高い評価の一方で、「白人にとって都合が良すぎる」「甘い美談だ」という批判的な評価も見られた。 今回は、アメリカにおける黒人差別を描いた映画の中でも特に論争を巻き起こしたものを6本紹介し、今なお解決を見ていないこの問題を考えていきたい。

『グリーンブック』は美化されすぎ?一部で批判される理由とは

グリーンブック

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :GREEN BOOK

2019年3月1日より全国にて公開

2018年/アメリカ/130分

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2019年3月1日から日本でも公開されている映画『グリーンブック』。実話を基にした本作は、黒人のピアニストと白人の運転手がアメリカ南部でコンサートツアーをするという物語が展開される。

コミカルな語り口でありながらも1960年代当時のアメリカにおける黒人差別の実態にも触れている点が評価され、第91回アカデミー賞では作品賞をはじめとする3部門に輝いている。

しかしその一方で、批判的な意見が一部で見られるのも事実だ。

やはり黒人問題を扱い、同年のアカデミー賞にノミネートされた『ブラック・クランズマン』のスパイク・リー監督が、『グリーンブック』受賞を知るや否や授賞式会場から立ち去ろうとしたと、ハリウッド・リポーター誌などが報じている。

ロサンゼルス・タイムズでは「『クラッシュ』以降、最低のアカデミー賞作品賞だ」とすら書かれているのだ。

その理由として、この映画におけるヴィゴ・モーテンセン演じる白人のドライバー、トニーが黒人であるピアニストのシャーリーを救う存在(白人の救世主)として描かれていること、トニー自身が抱く黒人に対する偏見が許されてしまっていること、そして実話に比べて美談として仕上がり過ぎている点などが考えられている。

まだまだ根が深い黒人差別を描いた「問題作」を6本紹介

筆者はこの映画を見て感動した一人だ。アカデミー賞を受賞するのも納得できることだと思っている。

しかし、確かにちょっと甘く仕上がり過ぎた気がしないでもない。実際、400年以上に渡って黒人が受けてきた差別と暴力の歴史は、より怒りのこもったものだったに違いないのだ。

実は、黒人問題を痛烈に描き、論争を巻き起こした映画は意外とある。そこで今回は、『グリーンブック』をきっかけに黒人問題に関心を持った人たちが、より考えさせられる映画をいくつか紹介したいと思う。

1. アメリカ南部で奴隷農場を営む一家の破滅を描いた大問題作 『マンディンゴ』(1975)

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

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マンディンゴ

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :Mandingo

1975年10月18日より全国にて公開

1975年/アメリカ/0分

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19世紀半ばのルイジアナ州。マクスウェル一族は綿花や農作物、そして黒人奴隷を「飼育」する富裕な農家だ。

息子であるハモンドは従姉妹のブランチと結婚するが、彼女が処女ではなかったことに腹を立て、黒人女性のエレンに愛を注ぐ。一方、ブランチはハモンドが所有するマンディンゴ(黒人奴隷の優良種)と関係を持つように。やがて、エレンとブランチはそれぞれ子供を身ごもるが……。

『トラ・トラ・トラ!』や『ソイレント・グリーン』で知られるリチャード・フライシャー監督が、奴隷牧場を経営する一家の異様な愛憎とその顛末を描いた問題作。上のあらすじでもわかるように、とにかく登場する白人が徹底的に人間のクズとして描かれており、かなり賛否わかれる内容となっている。

リウマチを治すために奴隷の子供の腹に足を乗せる、売春用の女奴隷から体臭を取るために薬品の入った風呂に浸ける、未亡人の慰み者として男の奴隷が売りに出されるなど異様な描写が多く、今ではまず製作できないだろう。

その過激で暴力的な作風から「興味本位で作られたB級映画なのではないか?」という批判が今なお根強く残る本作。しかし、南北戦争で奴隷が解放される前のアメリカ南部でこのような残虐な日常があったという事実から、目を背けてはならない。

2. アフリカから送られてきた黒人奴隷を追ったフェイクドキュメント 『ヤコペッティの残酷大陸』(1971)

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

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『マンディンゴ』で描かれる黒人奴隷は、どのようにしてアメリカにやってくるのか。『マンディンゴ』の4年前に作られた本作を見れば、それがわかるだろう。

本作は、『世界残酷物語』といった「モンド映画」と呼ばれる一連のドキュメンタリー映画を手掛けたイタリアのグァルティエロ・ヤコペッティ監督が手掛けた、初の劇映画。しかし、「イタリアから19世紀のアメリカに渡った記者が取材する」という体裁のフェイクドキュメンタリーの要素がある点が異色といえるだろう。出演者もほぼ無名でスターが全く登場しないのも特徴だ。

描かれるのは、アフリカから運ばれてきた奴隷たちの行く末。彼らはまず消毒された後に内陸に運び出され、市場で売買され、農場で繁殖され、逃げ出せば狩られる。

彼らには当然のように人権がなく獣同然の扱いを受けているにもかかわらず、その売買の仲介をするのは神父という驚愕の場面も。

目を覆いたくなるような情景がひたすら繰り返されるが、ヤコペッティはこれらが「歴史的な事実」だと語っている。アメリカ人ではない彼だからこそ、アメリカのタブーを描けたのかもしれない。

ちなみに、リズ・オルトラーニによる印象的なスコアは40年後、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライブ』でも使用されている。

3. 黒人だけを襲う白い犬に、黒人の調教師が挑む! 『ホワイト・ドッグ』(1982)

ホワイト・ドッグ

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :White Dog

1990年11月2日より全国にて公開

1982年/アメリカ/90分

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若手女優のジュリーはある晩、運転中に白いシェパード犬を轢いてしまう。犬の手当を済ませ、自宅で飼い始めるジュリー。しかし、その犬は差別主義者によって黒人だけを襲うように調教されていた「ホワイト・ドッグ」だった。

次々に黒人を襲う犬に悩まされたジュリーは、犬を調教し直すことを決意。連れて行った調教施設で「ホワイト・ドッグ」に挑むのは、黒人の調教師キーズだった・・・・・・。

1980年代になり、公民権法が制定されてもなお残り続ける人種差別を、かつて実際に存在したという「ホワイト・ドッグ」をモチーフに描いた、異色のサスペンス。監督は、近年再評価が進む巨匠サミュエル・フラー。

自らのアイデンティティをかけて白い犬に挑む黒人の調教師の忍耐強い死闘を力強く描き上げており、見ごたえ満点。身近に存在する犬がここまで怖く見える映画もそうないが、やはり一番怖いのは、その犬を調教した人間に他ならない。

果たして、犬の元の飼い主はどのような人物だったのか。そして、そのあまりに衝撃的なラストには言葉を失うだろう。

4. 南部ミシシッピーで燃える憎しみの炎 『ミシシッピー・バーニング』(1988)

ミシシッピー・バーニング

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :Mississippi Burning

1989年3月11日より全国にて公開

1988年/アメリカ/128分

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ミシシッピー州の田舎町で、公民権運動の活動家3人が突如行方不明に。FBI捜査官のアンダーソンとウォードが派遣され、捜査に乗り出す。

しかし、町の人々は皆、知らぬ存ぜぬを通し続け、それどころか保安官たちが捜査を妨害してくる始末。実は町の住民の多くは人種差別主義者であり、保安官などを中心に白人至上主義団体であるKKK(クー・クラックス・クラン)のメンバーも多数いたのだ。

捜査は遅々として進まず、FBIの聞き込みに少しでも協力した者は次々とリンチされる事態に。果たしてアンダーソンとウォードは、事件を解決することができるのか?

1964年に実際に起きた事件を基に、『ミッドナイト・エクスプレス』のアラン・パーカーが映画化したサスペンス。捜査官を演じたジーン・ハックマンとウィレム・デフォーの名演が光る一作だが、何より注目すべきは『ミシシッピー・バーニング』というタイトルの意味するところ。

FBIの捜査に対するフラストレーションがたまり、現地の人種差別主義者が黒人の住む家や教会を次々に焼き討ちにしていく様はショッキングで、見ていて何ともやりきれない気持ちになる。

5. ラース・フォン・トリアーが描いた「奴隷問題」はかなり異色? 『マンダレイ』(2005)

マンダレイ

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :Manderlay

2006年3月11日より全国にて公開

2005年/デンマーク/139分

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『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『ニンフォマニアック』で知られるデンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーが、『ドッグヴィル』に続く「機会の土地アメリカ」三部作の2作目として制作した異色作。前作同様、全編が床に白い線と文字が書かれただけのセットで撮影されている。

1933年。主人公のグレースたちギャング団は、アラバマ州にある大農場マンダレイに辿り着く。そこでは白人の女主人が黒人の使用人たちを搾取し、70年以上前に廃止された奴隷制度が今なお残っていた。

グレースは女主人から黒人たちを解放し、自分たちの権利を主張し、民主主義を実践することを教育しようとするが……。

ラース・フォン・トリアーは人間の不条理な本質を暴き出す映画に定評があるが、本作も例に漏れない。民主主義を教える使命感に駆られる白人のグレースと、奴隷として扱われる以外の生き方を知らない黒人たち。彼らは、解放されてもなお、女主人が遺した「ママの法律」というルールを忠実に守ろうとするのだ。

果たして、真の正義とはいったい何なのか。奴隷問題だけでなく、人間の価値観の多様性を全く新しい形で考察した一作。

6. 白人至上主義に傾倒する兄弟を通して憎しみの連鎖を描いた問題作 『アメリカン・ヒストリーX』(1998)

アメリカン・ヒストリーX

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :American History X

2000年2月19日より全国にて公開

1998年/アメリカ/120分

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カリフォルニア州ヴェニス・ビーチ。かつて消防士だった父を黒人の麻薬ディーラーに殺されたデレクは、その反動から白人至上主義的なネオナチのメンバーに。彼はある時、車を盗もうとした2人の黒人を惨殺し、逮捕される。

デレクが出所すると、デレクの弟ダニーは兄に憧れてネオナチのメンバーになっていた。服役中に改心したダニーは、人種差別と憎しみが何も生まないことをデレクに語るのだが・・・・・・。

21世紀を目前に控えてもなお消えることのない人種差別を、白人の側から描いた問題作。

ただ単純に白人と黒人を加害者と被害者の関係として描くのではなく、双方を憎しみを抱いた存在として考察し、終わることのない連鎖に着目している点が新しいといえるだろう。

デレクを演じたエドワード・ノートンの怪演も恐ろしい一作。

番外編:『グリーン・ブック』を批判したスパイク・リーの新作 『ブラック・クランズマン』(2018)

ブラック・クランズマン

【問題作】『グリーンブック』だけじゃない!!黒人差別を描いた6本の映画

原題 :BLACKKKLANSMAN

2019年3月22日より全国にて公開

2018年/アメリカ/128分

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冒頭でも述べたように、『グリーンブック』のアカデミー賞作品賞獲得を批判したスパイク・リー監督は、『ブラック・クランズマン』が同賞にノミネートされていた。惜しくも作品賞は逃したものの、脚色賞をゲット。カンヌ国際映画祭では審査員特別グランプリに輝いた。

そんな本作も、もちろん黒人問題がテーマだ。

1970年代、コロラド州コロラドスプリングス。警察署で初めて選ばれた黒人刑事ロン・ストールワースは、新聞で白人至上主義団体KKK(クー・クラックス・クラン)のメンバーを募集する広告を見つける。

黒人でありながら電話でKKKと接触するストールワースは、差別主義者の振りをして入会しようと試みる。そして同僚の白人刑事フリップ・ジマーマンの力を借り、2人で1人の人物に成りすまして潜入捜査をしようとするが……。

前出の『ミシシッピー・バーニング』にも登場したKKKに黒人の刑事が潜入した、というのは、嘘のような本当の話だ。娯楽映画としての面白さを追求しながらも、黒人差別を痛烈に風刺している本作。『グリーンブック』と比較して見てみるのもいいかもしれない。

映画『ブラック・クランズマン』は2019年3月22日よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開。

今だからこそ考えるべき黒人差別の真実

トランプ政権になって以降、差別的な思想がより浮き彫りになってしまっている昨今のアメリカ。確かに批判は見られたが、『グリーンブック』の受賞は今のアメリカの世相に一石を投じるものとして意味はあったに違いない。

とはいえ、海の向こうの国である日本では、アメリカにおける黒人問題をそこまで深く知らない人も多いかもしれない。『グリーンブック』はそういった意味では非常にわかりやすい一本だろう。

これを機に黒人問題や人種差別、アメリカの歴史に関心を持ち始めたのならば、ぜひ今回紹介した映画も見ていただければ幸いである。

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