【写真】「女優興味ある?」と怪しいDMを、映画『リスタート』主演女優・EMILY
――これまで、品川さんは、男性が主役の作品を撮ることが多かったと思いますが、今回女性が主人公というのは珍しいのでは?
品川 最初に北海道の下川町で映画を撮ってみないかというお話をいただきまして、シナハン(シナリオハンティング)で現場を見させていただく流れでシナリオを書きました。
SDGsの取り組みで、下川町と吉本(興業)とで「下川町に行きたくなる映画が作りたい」という案が出て。僕はアクションや暴力映画が好きだったのですが、下川町に訪れたいと思っていただくためにはアクションは違うな、と。じゃあ歌の映画も好きだったので、女性ボーカリストにとなったのかな。なんとなく、ミュージシャンが東京で傷ついて帰ってきて、下川町の自然で癒されるという話を考えていました。
――EMILYさんを起用した理由は?
品川 歌の上手い女優さんはいないかなと、プロデューサーたちに聞いて探していたんです。そのときに、たまたま観た『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)でEMILYを見て、「歌がうまい!」って。喋りも面白い子で、興味を持って『HONEBONE』をYouTubeで探したら、かっこよくて。歌う姿が、表情豊かだったんですね。まるで、歌いながらお芝居している感じでした。
――反応してくれたんですね(笑)。
品川 そうそう。「じゃあ、女優興味ある?」って怪しいDMを送りました(笑)。向こうは信じてなかったみたいですが。それから、一週間くらいで脚本を書きあげました。
――1週間って早くないですか?
品川 今までの中でも早い方だと思います。だいたい1ヵ月くらいで脚本を仕上げるんですが、特に今回は早かったですね。
――撮影自体はどのぐらいの期間で行ったんですか?
品川 東京2日の下川4日間……とか。
――そもそも、品川さんが映画監督をやってみたいと思ったきっかけは何でしょう?
品川 10代の頃に、「バンドやりたい」とか「お笑いやりたい」とか「映画監督になりたい」とか言ってたものの1つでしたね。でも、当時は何も動かないみたいな(苦笑)。僕は16歳の時に、高校を1ヵ月で中退しているんですよ。だから16歳でフリーターで世の中に飛び出して、これやりたいこれやりたいって思っているうちに、知らない間に23歳になっていました……。
――芸人と監督とで、気持ちなどはどう区別していますか?
品川 昔は少しは区別意識があったと思うのですが、今はあまりなくなりましたね。昔は仲間から「ちょっと、監督~(笑)」って、いじられたりもしていたんですが、最近はそれすらも話題にされなくなってきました(笑)。ありがたいことに、しょっちゅう撮らせていただいているので割と珍しくないことになって…。
先日もWOWOWのドラマを撮らせていただいて、それもまたニュースにもならない(苦笑)!以前のような「芸人さんが映画撮るの?」もなければ「ちょっと、監督~(笑)」といういじりもない。「また何か撮ったの?」ぐらいの反応です。
――キャストで芸人仲間の方たちも出演しています。
品川 芸人さんに限らず、役者さんもそうですけど、「映画に出してよ!」とか声を掛けてくださるんですけど、本人はよくても、みなさん忙しいじゃないですか? 本当に出てもらうまでのハードルが高いんです。芸人さんだと、テレビで観かけなくても、決して暇なのではなく、劇場でひっぱりだこだったりするので、結構忙しいんですね。
今回は、原作があるわけではなく脚本も自由だったので、西野(亮廣/キングコング)とか(岩崎)う大(かもめんたる)なんかはクラウドファンディングに参加してくれて、あてがきでした。う大の演技は怖いな、と思いましたけど。ほかに、小杉(竜一/ブラックマヨネーズ)さんなんかは、前作の『サンブンノイチ』でがっつりお仕事させてもらっていたんで、何となくこういう役が合うのかなとキャスティングしました。
――今回、どん底からのリスタートを描いていました。これまでも品川さんの作品は、世間的に弱い立場や負け犬扱いをされる方を温かく見守っている印象があるんですが…。
品川 そうですか(笑)。挫折した人がもう一回のし上がっていくのは好きですね。応援したくなりますし、芸人も“一発屋”とか言われる人だったり、いろいろありますけど、一回売れて、天狗になって、仕事も無くなって…。でも、もう一回、頑張っている姿が愛おしかったり面白かったりします。(後編に続く)
【後編はこちら】品川ヒロシが新作映画撮影の苦悩を語る「追い込められて苦しくて、毛穴という毛穴から涙が」
▽映画『リスタート』
7月9日(金)北海道地区先行公開、7月16日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、テアトル新宿ほか全国公開
配給:吉本興業