【写真】川上なな実の写真集カット&インタビュー中の撮り下ろしカット【11点】
――今月でAVの仕事を、2月にはストリップを引退し、今後は俳優業一本でやっていくそうですね。今までの仕事をやめた理由は?
川上 一番大きいのは、やり尽くしたというか、もう同じことの繰り返しでしかなかったから。私、知らないものを見たいし学びたいし、向上心もすごく強いんですよ。だから、今までの繰り返しになっているものは全部やめることにしました。
――俳優業を選んだ理由は?
川上 最終的に決断したきっかけは、『全裸監督』(2019年)がきっかけです。あの作品に出てたくさん評価が返ってきたことで、「役者にならなきゃいけない」と思ったんですよね。監督のひとりの内田英治さんが私をキャスティングしてくれたんですけど、内田さんがプッシュしてくれたのを無駄にしちゃダメだなって思ったのもありますし。
――初めて演技の仕事をしたのは、2013年の舞台作品ですね。そのときから手応えがあったんですか?
川上 あ~、ありましたね。飛田新地の遊郭の話で、私は失語症の遊女っていうちょっと特殊な役だったんです。まわりは普通の役者さんだったけど、私は裸の仕事を生業にしていたので、「私の方が役のことをわかる」って思ってました。
――自信につながったんですか?
川上 はい。「私、いけるな」ってなぜか確信してしまいました(笑)。芝居の中で過去にあった苦しみや喜びを投影してみると、評価が返ってくるっていうのも、自分の救いになるんです。その上、映画祭でレッドカーペットを歩かせてもらったりもするので、「有名になりたい」っていう子供の頃からの承認欲求なのかが満たされたりもして(笑)。
――『全裸監督』もAV女優という自身の経歴と重なる役でしたが、あの作品の川上さんの演技は、役というものを超えてると思うんです。演じているんじゃなく、この仕事に命を削ってぶつかっている川上さん自身の姿が画面にきざまれていて、心を揺さぶられました。
川上 ありがとうございます、うれしいです。実はあの作品を撮ってる途中で、内田監督に「君、やばいよ。どうすんの?」って言われたんです。内田監督とは関係性もできていたので、その一言で奮起して、とりあえず遊女のときと同じ作戦。
――そこまで自分を追い込めるのがすごいんですが、同時に心配にもなってくるわけですよ。よくそんな命を削るようなやりかたで、これから俳優一本でいこうと思いましたね?
川上 もう、その刺激がないと生きていけなくなってしまってるから(笑)。それに、自分の過去が間違いじゃなかったって、誰しも思いたいじゃないですか。私は過去の自分の悲しみを芝居で出して、人に評価されたいんです。
――なるほど。ところで、今こうしてインタビューしている間も、ずっと自分のiPhoneで動画を回していますね。これがドキュメンタリー映画の素材になるんですか?
川上 はい。ドキュメンタリーも、誰に頼まれたわけでもなく、自分で作ろうと思ってやっていることなので。そもそも、AV、ストリップ引退を決めてから、私は勝手に自分にハードワークを課したんですよ。
――そこまで自分で計画して実行してしまう人って、世の中にそういないと思います。AV女優がタレントや役者に転身することはあっても、既存の事務所にも入らずに仕事をして、なおかつ本や映画も作っている人なんて、聞いたことがありません。一体、どういう存在になることを目指してるんですか?
川上 私、ほんとに恥ずかしいことなんですけど、10代の頃からずっと「大きな人間になりたい」って言ってるんです。大きいっていうのは、すべてのことを受け入れられる大きな器っていう意味もありますし、有名になって認められたいっていう意味もあります。全部の意味で、大きいです。意味わかんないですよね(笑)。
――「芝居を通じて社会貢献したい」ということもおっしゃってますね。
川上 そうそう、そうなんです。
▽川上なな実
福井県出身。2011年にAVデビュー。アダルト業界に身を置く傍ら、「恵比寿マスカッツ」としての活動や、ドラマ『全裸監督』への出演で話題を呼ぶ。2022年1月にAVを、2月にストリップを引退し、今後は俳優として活動。自伝的小説『決めたのは全部、私だった』、写真集『すべて光』が発売中。1月16日まで、東京・渋谷の2会場で写真展を開催。その他、現在進行中のプロジェクトの情報は下記にて。
Twitter:@nanamikawakami
Instagram:@nanamikawakami
HP:https://kawakaminanami.com/

▽写真集『すべて光』(エパブリック)
著者:川上なな実 熊谷直子

▽小説『決めたのは全部、私だった』(工パブリック)
著:川上なな実
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