水曜日のダウンタウン』(TBS)でネタにされたり炎上したりと、今一番”バズってる”芸人、クロちゃん。大のアイドル好きとして多忙な中、足繁く現場に通う信頼できるオタクの一面も持ち、2月28日発売の『月刊ENTAME』4月号から語りおろし連載「アイドルと僕」をスタートする。
その連載開始前に改めて、クロちゃんが2019年のライブアイドルシーンをどう見ているかを聞いた。
──最近の活躍はすごいですよね。アイドルを追う時間はあります?

クロ そこはなんとか。ありがたいことに僕の場合、アイドル系の仕事もさせていただいているので。ただ、正直言って現場に足を運ぶ回数は減ってますよね。以前は年間100本ライブを観ていましたけど、そこまではさすがに無理かな……。


──しかし、ここまで炎上芸人として世間からのバッシングにさらされると(笑)、現場で「来るなよ!」みたいに言われることもあるのでは!?

クロ 特にそれはないですね。アイドルのステージでブーイングを浴びることはあるけど、こっちとしては「どうしたんですか? いいねボタンを押し間違えちゃった?」ってキョトンとするような感覚なので。

──すごいのは、誰も知らないようなマニアックなアイドルまで幅広く応援していることです。

クロ 僕、最初に好きになったアイドルがAKB48という王道中の王道だったんですよ。そのあとでSUPER☆GiRLSにもハマったけど、そこには48グループにない良さがあったんですね。そして、こうも思いました。
AKB48だけを追っかけていたら、AKB48の本当の良さに気づかないなって。だって他と比較していないわけですから。ライブアイドルを観ていると、メジャーなグループでは考えられないような新鮮な発見があるけど、同時にAKB48やSKE48の素晴らしさを再発見することもあるんです。

──外国に行って日本のよさに気づく、みたいな。

クロ そういうことです。この『月刊エンタメ』を読んでいる人は推しのアイドルがいると思うんですけど、ぜひDDの心を持ってほしいんですよね。
絶対そっちの方が応援していて楽しいはずですし。

──ズバリご自身の好みのタイプは?

クロ う~ん、どうなんだろうな……。僕、女性として本当に好きなタイプはギャルなんです。だけど、アイドルに求めているのはそこじゃなくて。やっぱりアイドルって頑張っている姿を応援する文化なんです。歌やダンスが拙い子が上手になっていくと、追い続けてよかったという気になりますし。
アイドルに対して恋愛的な感情を持つのは、ちょっと違うんじゃないかと思うんですよ。

──風俗で指名したり、AVを借りるときとは違う視点になるという意見は確かに多いですね。

クロ そうそう。少なくても僕の場合、アイドルを性的な目線では一切見ていないです。よこしまな気持ちでいたら、素直に応援できなくなるだろうし。やっぱり秋元康先生が、初期AKB48で「アイドルは恋愛禁止」ってはっきりと提示したじゃないですか。
あれが大きかったと思うんですよね。「そういうものか」って僕は素直に受け入れたタイプなので。世間からはクズだって散々言われている僕がアイドル関係の仕事をやれているのも、結局、ガチ恋的な発想がゼロだからだと思います。

──相手が芸人さんであっても、アイドルが若い男と共演するというだけで拒絶反応を示すファンは多いです。

クロ その拒絶反応、すごくよく分かるんです。生演奏で歌うとなったら、「バックバンドのメンバーと裏で繋がったりしないか!?」って心配したりとか。
ここは本当に気を遣うところなんです。芸人の中でも、たとえばバイきんぐ・小峠(英二)さんとか、僕なんかはまだマシだと思うんですよね(笑)。もっと見た目がカッコよかったりすると、完全にやっかみの対象になりますから。

──「そんなことない」と言いたいですけど、アイドルと芸人が結婚した例も過去にありますしね。

クロ そう。だからファンの人が心配するのもよく分かる。そう考えると、僕みたいにブーイングを浴びているくらいが結果的にちょうどいいのかもしれないなって。

──この1~2年、中堅グループの解散劇が目立ちます。

クロ ベイビーレイズJAPAN、PASSPO☆、今年3月にはつりビット……他にも挙げていったらキリがないです。PASSPO☆に至っては「結婚しても続ける」ってメンバーが言っていたから……。ただ僕は、この解散が続く状況も前向きに考えるようにしているんですね。

──それは、なぜですか?

クロ AKB48が作られてからすでに13年が経ち、アイドルというジャンルはかなり成熟した気がしているんです。それ自体はもちろん素晴らしいことですよ。だけど成熟したジャンルというのは、どうしても新たな若手が伸びづらいという弊害も出てくるんです。本当は新しい血の入れ替えが必要なんですけどね。年功序列の風潮がどこか残る中、先輩たちを抜かすと言っても現実的にはなかなか難しいですから。今は若手にチャンスが広がっている状況だし、実際、若いメンバーはやる気がみなぎっていると思いますよ。だから、あまり悲観はしていません。

──2018年はエイベックス系のアイドル、特にiDOL Street勢に激震が走りました。

クロ チキパ(Cheeky Parade)とGEMが解散。ストリート生も終わり。ずっと応援していただけに、ショックを受けなかったと言えば嘘になります。ただGEMの解散ライブを観て、悲しい気持ちも吹っ切れたんですよね。メンバーは「これからの私たちを応援してください」と明るく振舞っていたし、実際、すでに新しいことを始めていますし。

──解散しても、メンバーの人生は続いていくわけですからね。

クロ 「何年後かに、また集まって一緒にやりたい」と話す彼女たちを観て、そのためにもこれからの彼女たちを応援しなくちゃいけないと使命感を感じました。それと残ったスパガとわーすたに関して言えば、少数精鋭になったからこそ、メンバーが一致団結しやすくなったんじゃないかな。特にわーすたは、ここから本当の勝負どころだと思います。

──グループにとって、いい風が吹いているように感じられます。

クロ 話題にはなっているし、業界の順列的にも確実に上になってきています。本当の意味で、ここから一気にごぼう抜きできるか……。可能性があるからこそ、わーすたは残ったんですよ。彼女たちの双肩にかかっているものは限りなく大きい。売れてもらわないと困ります。本当に僕、1人でも多くの人に知ってもらいたいんですよね。『いぬねこ。青春真っ盛り』で会場のオジさんたちも一緒になって「わんわんわん」「にゃんにゃんにゃん」とか盛り上がっている光景を。あれを観ていると、「青春ってこういうことだろうな」って感じるんです。あの光景こそがワールド・スタンダードになって、日本発のアイドル・カルチャーとして世界に拡散されるべきですよ!

──スパガはチキパやGEMと一緒に解散するわけでなく、あえて残した。そこには何らかの意図があるはずです。どう見ますか?

クロ オリジナルのメンバーがついにいなくなって、もう実際は全然違うグループになっているわけじゃないですか。でも、あえてスパガという看板は残す。確かにそこには強い意志を感じますよね。スパガというのはiDOL Streetの象徴的な存在だから、どうしても残したかったのかもしれない。アイストはスパガとわーすたの2つで終わりでは決してなく、ここから℃-uteやアンジュルム的なグループがデビューすることだってありえますよ。それも、わーすたの活躍次第かもしれませんが。

──ブームが再燃することは、エンタメ界でよくあることですからね。

クロ そうなんです。あとスパガに関して言うと、メンバーが一気に変わったからこそ、新規が飛びつきやすい環境になったとも言えますね。今なら誰でもTOになれますよ。だから今こそスパガに注目すべきです。とにかく曲は、めちゃくちゃいいですから。聴いていると、ひたすらキュンキュンできる。今はBiSH的な激しいロックがアイドルのトレンドですけど、可愛い系の曲が再び流行る時代もやってくると思うんです。

──話を伺っていると、アイドルに関する情報収集能力が高いことに驚かされます。どのようにして新しい情報を掴んでいるのですか?

クロ 僕はあまりSNSとかをこまめにチェックする方でもないし、やっぱり現場に足を運ぶのが一番だと思うんですよね。そして忘れるといけないから、メモを取る。その繰り返しですよ。

──現場でメモを取るクロちゃんの姿はアイドルファンにはおなじみの光景ですが、あれは実際に何を書き込んでいるんですか?

クロ 別にたいしたことは書いていないです。MCで何をしゃべったかとか、今日のセトリはどうだったかとか……。ただライブって、1個大きなことが起きると他の細かいことを忘れちゃうじゃないですか。「あのメンバーの暗転したあとのしぐさが可愛かった」とか、他の人からしたらどうでもいいことを僕はあとから確認したくなるんです。

──そうやって好みのアイドルを広げていくわけですね。

クロ それに僕はもともと芸人志望じゃなくて、アイドルになりたかった人間。芸人には騙されてなったようなものなんです(笑)。なぜ自分がメモを取っているのか、あるときにハッと気づいたんです。アイドルの人たちをリアルに尊敬しているし、何かを学びたいと思っているのかもしれない。だって芸人の先輩のライブを観ていて、メモを取ろうなんて考えたこともないですから。今はこうやって芸人をやっているけど、現役のアイドルからどこかしら影響を受けているはずです。

──失礼ですが、キラキラ輝くアイドルたちとクロちゃんの芸風では1ミリも被らない気が……。

クロ 本当に失礼ですよ(笑)。ちょっと真面目な話をすると、アイドルって自分の名前を覚えてもらおうとしてキャッチーに自己紹介するじゃないですか。「みんなの視線をいただきまゆゆ」みたいな感じで。芸人も同じですよ。もちろん面白いことは絶対に大事だけど、それと同時にキャッチーに届けて覚えてもらうことも重要。分かりやすい一発ギャグとか、時代が変わっても結局は廃れないと思いますし。

──アイドルの中にはトーク力を磨くためにバラエティ番組の芸人を参考にする人もいますが、その逆パターンもあるということですか。

クロ あっちゃん(前田敦子)を応援していたときは、どれだけ途中で心が折れそうになったか……(笑)。僕はファンだから彼女を押し上げようとしていたし、なんならあっちゃんを育てようとすら考えていた。だけど結果、あっちゃんから育てられました。あっちゃんからは本当にいろんなことを教わりましたよ(笑)。彼女に関していろんなことが報じられても、なるべく否定したくないじゃないですか。極力、肯定したいわけです。そのために自分なりに前向きな理論武装をして、世の中に発信していたつもりなんですけどね。アイドルを応援するってことは、すごく頭を使うし、時に苦しいですよ。

──その他、注目すべきアイドルがいたら教えてください。

クロ 今年はスターダスト勢の動きが面白くなるんじゃないかと予想しています。スターダストはももクロももいろクローバーZ)とエビ中(私立恵比寿中学)が飛び抜けている印象があるけど、その下のグループが地方組を含めてアツいんですよ。いぎなり東北産、ばってん少女隊、はちみつロケット……お互いにライバル意識をメラメラ燃やしているような印象もあるし、どこがブレイクしてもおかしくないと思います。みんな頑張ってほしいですね。
クロちゃん
お笑いトリオ、安田大サーカスの一員。1976年12月10日生まれ、広島県出身。大のアイドル好きで、忙しい合間をぬってアイドルライブへと足を運ぶ。
twitter:@kurochan96wawa