日本映画の歴史に残る名作を次々生み出しているアニメーション監督・新海誠。美しい風景描写や独創的なストーリー展開などを得意とする作家だが、その真の強みは、すぐれた女優を見出す“審美眼”にあるのかもしれない。


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大前提として、新海監督の作品はオーディションでメインキャラクターの配役が決まることが多い。オーディションでは新海監督自ら審査を行い、キャラクターのイメージに合った役者を選出していく。

近年その規模が拡大しており、2019年公開の『天気の子』では2,000人、最新作『すずめの戸締まり』でも、1,700人を超える規模のオーディションが開催された。出世作となった『君の名は。』では、上白石萌音の強烈な存在感にほれ込んでヒロイン・宮水三葉役を託したという有名な逸話もある。

驚くべきは、新海監督が見出した才能がいずれも大出世を遂げていることだ。たとえば上白石は『君の名は。』出演から4年後、2020年に放送されたテレビドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)で本格的なブレイクを遂げた。

主演・佐倉七瀬役として佐藤健とのラブストーリーを演じた同作は、右肩上がりに視聴率が急上昇していく大ヒットドラマへ。上白石は「Yahoo!検索大賞2020」の女優部門賞に選ばれたほか、話題の賞をいくつも獲得することとなった。

また『天気の子』のヒロイン・天野陽菜役の森七菜も、輝かしい人気を得ている。彼女の場合は、2020年10月から放送された連続ドラマ初主演作『この恋あたためますか』(TBS系)が大ヒット。
その効果によって、ORICON NEWSが発表した「2020年 ブレイク女優ランキング」では第1位に輝いた。

さらに新海監督の審美眼を実感させるのは、過去作のメインキャストたちのほとんどがNHKの“朝ドラ”で成功を収めていることだろう。

上白石は2021年度後半の『カムカムエヴリバディ』で、深津絵里川栄李奈と並んで“3人のヒロイン”のうちの1人に大抜擢。また、森は2020年前期の『エール』にてヒロインの妹役を熱演した。

新海作品に出演した当時はフレッシュな演技で注目を浴びた2人だが、今や豊かな演技力をもつ大人の女優として評価されている。

そんな流れのなか、現在期待されているのが『すずめの戸締まり』の主人公・岩戸鈴芽(すずめ)役に抜擢された原菜乃華だ。

彼女は元子役のキャリアをもつ、現在19歳の若手女優。現在放送中の『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)では、ラジオ局の新人AD・南波瑞穂役を演じており、すでにブレイクの兆しを見せ始めている。

さらに9月15日公開の映画『ミステリと言う勿れ』では、ヒロインにあたる狩集汐路役を演じる予定。この役柄はオーディションで勝ち取ったものだというので、新海監督の審美眼をあらためて痛感してしまう。

上白石や森のキャリアを踏まえるなら、原が本格的にブレイクするのもこうしたテレビドラマへの出演がきっかけとなるのかもしれない。そうなると、次は朝ドラへの出演にも期待がかかるところだ。


新海監督は次にどんな女優の才能を発掘してくれるのか、今後手掛けるであろう新作の情報が楽しみでならない。

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