アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「BiSHドハマり芸人」が放映されるなど2019年大躍進を遂げた“BiSH”や、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)から誕生した“豆柴の大群”など、数々の話題グループを生み出しているWACK。今もっとも注目すべき存在だが、ここに至るまでには様々な手法を用いて果敢に仕掛け続けてきた。
今回はそんなWACKの魅力を7つのポイントから考える。
(1)“BiS”――すべてはこのグループから生まれた!
WACK所属のすべてのグループのルーツともいえる存在がBiS。当時つばさプラスの社員だった渡辺淳之介がソロ歌手のプー・ルイを中心にアイドルグループとして誕生、とにかく世間の目を向けさせようという炎上商法で賛否の話題を呼ぶ。その反面、それまでのアイドルの歌うロックとは一線を画した楽曲とパンクスのライブのような盛り上がりは、それまでアイドルを見なかった人を呼び込んだ。

横浜アリーナで解散後、渡辺淳之介が独立して作った事務所がWACKで、BiSの成功も失敗もすべて注ぎ込んで作ったのが今のグループなのだ。2016年に2期復活、そして去年3期が始動。現在のメンバーはイトー・ムセンシティ部、ネオ・トゥリーズ、チャントモンキー、トギー。

(2)もはやお茶の間人気に達した時代を創るグループ “BiSH”
『アメトーーク』の特集は伊達じゃない! 芸人にアイドルまでも虜にするBiSHは、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人組。特にアイナのブルージーな歌声は、BiS譲りのパンクナンバーに加え、代表曲『オーケストラ』などの楽曲のスケールを際立たせ、アリーナクラスの会場も圧倒する。

昨年は全国ツアーを中心に活動し、その人気を日本の隅々にと振りまき、今年も「NEW HATEFUL KiND TOUR」からスタート。またアイナはジェニーハイ・SUGIZOらの楽曲にフィーチャリング参加、アユニは自身バンド・PEDROなどソロ活動も積極的で、もはや時代のアイコンになりつつある。

(3)泥臭くも何より輝くステージ “GANG PARADE”
WACKでは最多の10人組グループ。
BiS解散後設立したWACK最初のアイドルだが、二度の改名や相次ぐメンバー脱退など方向性に悩まされた。2016年に現在の名前に変わり、メンバーの安定と共にカラーが確立していった。多人数ならではのステージで、時に自由に振る舞い、時に全員でビシッと揃えて見せるパワフルなパフォーマンスの強靭さは随一。唯一のデビュー時のメンバーがカミヤサキ。BiS(1期)のメンバーで、移籍後は活動休止、復帰のための100キロマラソンチャレンジ、坊主頭へとヘアチェンジ、BiS(2期)へのレンタルトレードと波乱万丈のアイドル人生だったが、今年5月に脱退が決定。最エモ必至なこれからのGANG PARADEに注目だ。

(4)まだまだ個性派揃いの姉妹グループたち!
BiS(1期)時代からタッグを組んできたエイベックスとの共同プロデュースという形でデビューしたのがEMPiRE。WACKオーディション選出者からメンバーは選ばれており、エイベックスらしい派手めなシンセサウンドが特徴。昨年デビューしたCARRY LOOSEは元BiS・Waggの3人と元アイドルネッサンスのユメカ・ナウカナ?で結成され、青春パンクぽさが印象的なグループだ。そして『水曜日のダウンタウン』からデビューし、クロちゃんプロデューサー解任からWACK預かりとなった豆柴の大群。それにアイドル育成機関であるWAggと、現在までにWACK誕生から年に1グループは結成されている。この増殖っぷりも飽きさせない理由の1つだ。


(5)炎上と紙一重!? WACKバズらせ事件簿
BiS(1期)時代に比べれば、WACK以降はかなり落ち着いたと言われるジュンジュンの仕掛け。特にBiSHテレビ出演のタイミングで音源を安く販売したり、突然ワンマン開催の発表をしてSNSでバズらせる戦略や、当日発表でCDをリリースしたり、店舗イベントを開催したりといったゲリラ展開はズバリとハマっている。それとWACK事務所のある渋谷でのプロモーションも数多く行っており、フリーマガジン『謝罪本』の配布、GANG PARADEによる渋谷でメンバーを見つけたらチェキが撮れるイベント「CHEKi GANG IF YOU CAN??」、東急百貨店壁面にQRコード付広告を掲示したりと、渋谷=WACKのイメージがつくのも遠くないかもしれない。

(6)アイドル界にWACKが与えた影響の数々
WACK勢がすば抜けているのは「アイドルが格好いいと思うアイドル」であることだ。たとえばアプガ(2)・高萩千夏やAKB48・西川怜、私立恵比寿中学・安本彩花などなど、WACK好きを公言するアイドルは多い。そんなトップアイドルから、最近は秋葉原の地下アイドル会場に行っても、1日に数人は『プロミスザスター』などBiSHの曲をカバーしているアイドルに出会う事が出来るほど、その影響力は高い。また何よりBiS(1期)の登場は全国のバンドマンに「俺もアイドルプロデュース出来るかも?」と思わせ、実際にアイドルを作らせた。渡辺淳之介がいなければ現在のアイドルシーンはもっとキラキラ感が強かったかも?

(7)結局みんな好きになっちゃう“渡辺淳之介”という才能
アイドルのプロデューサーが表に出すぎると、ファンからは嫌われたりするもの。WACK代表であり各グループのプロデューサーの“ジュンジュン”こと渡辺淳之介もまた何かと嫌われたり、叩かれたりと多い人物ではある。

しかしWACKの若いファンにとって、そのチャーミングな不良っぷりは新鮮で「やっぱジュンジュンだな~」と言わせてしまう魅力がある。それを感じるのは、炎上そのものよりリカバーを見たときだったりする。TIFの出演中止の直後に「リストバンドを持ってくれば無料」のワンマンを開催したりして、ファンを喜ばせるところに彼の「さすが」がある。


また、従来のアイドルファンからすると反発を感じてしまうだろうが、WACKのファンはよく「ファンであることが恥ずかしくない」と言う。自らアパレルブランドNEGLECT ADULT PATiENTSを立ち上げたりもしているジュンジュン、ビジュアルに音楽共に「入りやすい、入ってみたい」と思うセンスも絶妙。そうでないと新しいファンの心を掴む事は出来ない。

ただ、そういうと計算高いビジネスマンのようだが、創るものに自分の好きな音楽やブランドのテイストを入れてみたり、そこかしこに愛情が垣間見える。ただ、そんな部分もシモネタで覆い隠してしまうのが彼だ。

2000年代、2010年代と秋元康が時代を作ったように、2020年代、渡辺淳之介が時代を作る――そんな風に語られるようになるのか否か?

(文/大坪ケムタ)
編集部おすすめ