昨年12月に処女エッセイ『あなたの孤独は美しい』(竹書房)を上梓し、本格的に執筆活動を始めたAV女優の戸田真琴。3月23日(月)には早くも2冊目の著書『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』(KADOKAWA)を発売した。


<人生において大切なたったひとつのことは、「あなたの孤独は美しい」という事実>と綴り、世間から浮いてしまった時、無理やり集団に混ざろうとするのではなく、孤独を肯定して自分自身を失わずに生きていってほしいと語る彼女のインタビューを3回連載でお送りする。

2回目のテーマは「AV女優」。19歳の時、出演AVで処女を喪失するという衝撃的なデビューを飾った戸田。彼女がAV女優という仕事を通して感じたこととは……。

【写真】戸田真琴の撮り下ろしカット【12点】

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AV女優になって後悔したことは、今の所はあまりないです。具体的にあるとしたら、美容院で職業を聞かれた時に言えなかったりするくらいかな。
あとは昔の友達に会う時に、私がAV女優になったのを知っているのか知らないのか分からないのでなんとなく避けちゃうとか。AV女優になる前を知っている人と会うのは気合いがいりますね。

たまに同級生や昔の友達から、「ツイッターで見つけたよ」とか「頑張っているから応援するね」とか言われることがあります。大体はポジティブなメッセージなのでうれしいですね。

AV女優になったとたんに昔の同級生に口説かれた、とかって話をたまに聞きますが、今のところ私がAV女優になったと知って口説いてきた人はいませんね。もともとモテるほうではないのですが、そのうえ念のため恋愛対象にされにくくなるように意識しています。
あまり女っぽくみられないように調整するというか…。親しい人との会話でもそうです。

思春期の時に、私にとってはフラットな行為であっても、相手の異性には好意を持っていると思われたことがありました。私は好きな人に対して、友達としての好き、頭が良いから好きなど、恋愛感情とは別の理由でもあまり良く考えずに「好き」と言ってしまうタイプだったんです。「好き」という感情は、今言わないとなくなってしまうかもしれないし、明日には言えないかもしれないから、なるべくすぐに伝えるようにしようと心がけていたんです。

でも、その好きがフラットには伝わらず、「じゃあ付き合おうか」という、恋愛としての「好き」としか捉えられないというか。
今思うと私が悪いんですけど、そういう事故をしまくってしまったんですよね。それからは、なるべく(恋愛という意味に限らないよ、という)気持ちが伝わるように、さっぱりした感じで言うように努めてきたんですけど、その癖は今も抜けないですね。

私は今まで、暇だから恋愛しようとか、「何か好きかも」と思って勢いで誰かと付き合ってしまうようなことは経験がありません。自分の感情をきちんと精査していると、そういうことにはならない。普通に性欲はあるんですけど、性欲が理性よりも勝ることはほぼありません。なのでいわゆるワンナイトラブのような経験もありませんね。
こういう仕事をしていたら、男性との性経験を積んでいたほうが役に立つとは思うんですけど、キャラ付けとかでもなんでもなく、こういうさっぱりとした生き方が性に合っていると感じています。

AV女優であっても、清純派として売り出していく女の子も多かったりします。私はたぶん幼く見えることを大事に売り出されていたので、身長が低いとか、顔が丸いとか、声が幼いとかっていう特徴を好きになってもらうことが多いです。

見た目にはコンプレックスもあるので、好きになってもらえて嬉しいと思ったのを覚えています。たまに中身も見た目のイメージにあって幼かったり無垢であったりしてほしいと強要してくる態度の人もいて、それには嫌気が差すこともありますが、単純に見た目が好きって言ってもらえることはうれしいです。

私の中では、私の見た目と中身は合致しているんですけど、ギャップがあると言われることも多いです。
自分の持つイメージを押し付けすぎるのは、どんな場合においても良くないことです。私は人間活動において、どぎつい犯罪以外のことは多少なら大体OKだと思っているんですけど、これだけはやってはいけないと思っているのが、自分の願望によって他人を捻じ曲げようとすることです。

たやすく他人に願望を伝えられてしまうSNS上でも横行していることだと思いますし、それは本当は犯罪ぐらいダメなことなのではないでしょうか。誰かを捻じ曲げようとしないまま、自然なままで、好きあえる人間同士が仲良くすればいいんですよね。
処女のままデビュー、戸田真琴がAVの仕事を通して考えたこと


女の子にいつまでも初々しくいてほしいと望む男性ってけっこういて、だからこそデビューしたてのAV女優は注目を集められたりもするのですが、人は自然に慣れたり学んだりしていく生き物だし、好みや表現も変化していくのが物の常というものです。

だけれど、何年経っても黒髪でパッツン前髪で、ボブカットの幼げな様子でいてほしいとか、「メイク薄目で、強めの服は着ないで」や「茶髪のロングヘアにしてほしい」など自分の好みを強く要望してくる人はいて、そういう願望と、自分らしさとの折り合いをつけるのに苦労した記憶があります。


ただデビュー当時は右も左もわからず、メーカーの人にもお客さんにもなるべく合わせようとしていたので辛かったです。服とか髪型とかって、自分の中でしっくりくるものだけを選んでいると、だんだん家の中にあるものと一緒で何を着ても調和するようになると思うんです。

でも、いろんな人の意見を聞いて、たとえばシンプルなもの、コンサバっぽいもの、ガーリーなもの……と言われたとおりの服も買っていると、何を着てもしっくりこなくなってしまうんです。そういう困った経験をしたことで、自分の中の好きって気持ちは素直に大事に持っていたほうがいいんだなと思いました。

AV女優になろうと決めた時、先のことは何も考えていませんでした。今も辞める時期は決めていません。需要がなくなってもしがみつくというのはちょっと違う気がするので、そう感じた時にやめるとは思います。AV女優という仕事に向いているわけではないのに、ラッキーが続いてここにいさせてもらっちゃっているようなところはあると思います。ただ、居場所があると思えるうちは続けようと思っています。

※連載3回目は4日(土)午前6時30分公開予定です。
処女のままデビュー、戸田真琴がAVの仕事を通して考えたこと

▽戸田真琴『あなたの孤独は美しい』
発売日:2019年12月12日
定価:1,650円
発行元:竹書房
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処女のままデビュー、戸田真琴がAVの仕事を通して考えたこと

▽戸田真琴『人を心から愛したことがないのだと気づいてしまっても』
発売日:2020年3月23日
定価:1,650円
発行元:KADOKAWA
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