
2013年に立ち上げ、市川海老蔵が自ら企画・製作を行う自主公演「ABKAI(エビカイ)」。4回目を迎える今年は、昨年11月に福岡・博多座で上演された『石川五右衛門』を新たなストーリー、キャストを交えてスケールアップした『石川五右衛門~外伝』を、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演している。
稀代の大泥棒・石川五右衛門は、海老蔵がこれまで数多く演じているキャラクター。昨年放送されたドラマ「石川五右衛門」(テレビ東京)でも、海老蔵は同役で主演を務めた。本作には、そのドラマで共演した山田純大、前野朋哉が参加するほか、五右衛門のライバル・柳生十兵衛役で中山優馬が歌舞伎に初挑戦。さらに、市川右團次、中村壱太郎ら歌舞伎俳優が脇を固め、日本舞踊、津軽三味線、太鼓、アクロバットなど、他ジャンルのプロフェショナルの技も取り込んだ、盛りだくさんな舞台となっている。
また、原作を手掛けているのは「金田一少年の事件簿」「神の雫」などの人気漫画の原作者でもある樹林伸。樹林による奇想天外な設定とめくるめく展開は、歌舞伎というダイナミックな表現形態との相性がぴったり。愛すべきダークヒーロー・五右衛門の魅力も全開で、二児の良き父親となった今もヤンチャな少年っぽさが魅力の一つである海老蔵自身が投影されたかのようだ。

その五右衛門が発する「絶景かな、絶景かな」の名台詞が劇中何度か響き渡るが、最後はなんと巨大ねぶたに乗っての「絶景かな」となる。このねぶたは後半における大きな見ものだが、全編を通して、藤間勘十郎による演出・振付で劇場が一体となり、その美しさに興奮させられた。