
窪田正孝、柚希礼音のW主演舞台『唐版 風の又三郎』が、2019年2月8日(金)に東京・Bunkamuraシアターコクーンにて開幕した。唐十郎のアングラ演劇を、唐の元で指導を受けた金守珍(きむすじん)が演出(出演も兼ねる)。開幕前日には囲み会見と公開ゲネプロが行われ、演出の金、窪田、柚希に加え、北村有起哉、風間杜夫が登壇した。
このほか、丸山智己、江口のりこ、石井愃一、山崎銀之丞、六平直政、大鶴美仁音、えびねひさよ、広島光、申大樹、林勇輔、染野弘考、小林由尚、加藤亮介、三浦伸子、渡会久美子 傳田圭菜、佐藤梟、日和佐美香、清水美帆子、本山由乃、寺田結美が出演。

1974年に、唐十郎の率いる劇団「状況劇場」で初演された本作には、根津仁八、李礼仙、小林薫などアングラのレジェンドとも言える俳優たちが出演していた。状況劇場といえば、神社の境内や公演などに紅テント(あかてんと)を建て、その中で観客たちがぎゅうぎゅうに詰まり、物語の熱狂に入り込む。『唐版 風の又三郎』も、上野・不忍池の水上音楽堂や、夢の島に張られたテントなどでの上演は、当日券を求めて5時間も並ぶ観客もいたそうだ。
物語は、いつかの時代の東京の下町。精神病院から逃げて来た青年「織部(おりべ)」と、宇都宮から流れてきたホステスの「エリカ」が出会う。二人の脆い関係を軸にした、恋よりも切ないファンタジー。

登場人物やエピソードは、宮沢賢治の短編「風の又三郎」(※1)、ギリシャ神話「オルフェ」(※2)、シェイクスピア『ヴェニスの商人』(※3)、初演前年の1973年に起こった自衛隊員による隊機乗り逃げ事件などがモチーフとなっている。唐十郎の詩的な言葉と、感情を奮い立たせる音楽の中で、それらのモチーフが交錯し、恐ろしくも美しいファンタジーとなっていく。今回の金の演出は、35年前の作品に現代の感覚を織り混ぜながら、紅テントの中で熱狂を生み出してきた唐十郎作品をコクーンに蘇らせた。