グループ経営改革を推進しているパナソニックグループの業績が厳しい。上期の業績を受けて、通期見通しを下方修正した。

2025年度2Q決算は減収減益、通期見通しを下方修正

パナソニックホールディングスが発表した2025年度上期(2025年4月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比10.1%減の3兆8294億円、営業利益は同23.6%減の1649億円、調整後営業利益は同11.9%減の1819億円、税引前利益は同29.1%減の1778億円、当期純利益は同24.6%増の1424億円となった。

また、第2四半期(2025年7月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比10%減の1兆9238億円、営業利益は同41%減の781億円、調整後営業利益は同26%減の904億円、税引前利益は同41%減の869億円、当期純利益は同40%減の709億円と、減収減益の結果になっている。

パナソニックホールディングス 執行役員 グループCFOの和仁古 明氏は、「第2四半期の売上高は、くらし事業の減収やオートモーティブの非連結化による影響がある。だが、オートモーティブを除くと、前年同期比2%増となる」と説明した。

調整後営業利益に対しては、オートモーティブの非連結化の影響でマイナス67億円、米国関税影響でマイナス148億円の影響があるという。

セグメント別業績をみると、くらし事業は、売上高は前年同期比2%減の1兆6930億円、調整後営業利益は203億円増の687億円。くらし事業のうち、くらしアプライアンス社の売上高は前年同期比3%減の4050億円、調整後営業利益は80億円増の250億円。空質空調社の売上高は前年同期比4%減の4510億円、調整後営業利益は68億円増の120億円。コールドチェーンソリューションズ社の売上高は前年同期比2%減の2050億円、調整後営業利益は10億円減の110億円。エレクトリックワークス社の売上高は前年同期比3%増の5107億円、調整後営業利益は53億円増の340億円となった。

「くらし事業は、電材は国内を中心に増収となり、キッチン空間事業の体質強化も貢献している。また、家電の国内シェアは全体的に回復傾向にある」とした。


だが、家電は、海外一部地域での需要減があり、空調はA2Wが増収となったものの、海外ルームエアコンの需要が低迷した。

コネクトの売上高は前年同期比3%増の6300億円、調整後営業利益は67億円増の257億円。「ICT需要を捉えたプロセスオートメーションのほか、アビオニクス、モバイルソリューションズやBlue Yonderが増販になった」という。

Blue Yonderについては、SaaS ARRが四半期推移では成長しているものの、成長率はやや鈍化している。また、既存顧客からの継続率を表すSaaS NRRは、2024年度後半に発生したサイバー攻撃問題に起因する解約の増加により悪化している。「サイバー攻撃によるインシデントの影響が一部残っているが、発生以降、セキュリティ関連投資を含めて、しっかりと対策が進んでいる。セキュリティ強化は計画通りに進捗している。また、2025年度にローンチした新ラインアップであるCognitiveシリーズのパイプラインも順調に拡大している。大口顧客からの受注もある。2025年度第3四半期以降のSaaS ARRの伸びをしっかりと反転させ、加速させる予定である」と述べた。

Blue Yonderでは、セキュリティ対策として、今年度は追加で戦略投資を増やしている。

インダストリーの売上高は前年同期比5%増の5735億円、調整後営業利益は148億円増の457億円。
「生成AIサーバーなどの情報通信関連製品の需要拡大が続いているコンデンサや、多層基板材料など、情報通信関連製品の需要拡大が継続している」という。

エナジーの売上高は前年同期比4%増の4469億円、調整後営業利益が219億円減の329億円となった。「車載電池は、北米工場の販売量は拡大しているが、国内工場での販売減、原材料価格の低下に伴う価格改定などがマイナスに影響した。産業・民生は、生成AI市場の拡大に伴い、データセンター向け蓄電システムが引き続き好調であり、この領域では2桁の利益率を確保している」という。

その他/消去・調整の売上高は4771億円、調整後営業利益が282億円減の89億円。テレビをはじめとするエンターテインメント&コミュニケーションは、北米市況の悪化により減収となったが、ハウジングは水廻りやクロスセル商材が好調で増収になったという。

一方、2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しを下方修正した。

売上高は1000億円減額の前年比9.0%減の7兆7000億円、営業利益は500億円減額の同25.0%減の3200億円、調整後営業利益は300億円減額の同0.6%増の4700億円、税引前利益は650億円減額の同29.1%減の3450億円、当期純利益は500億円減額の同29.0%減の2600億円とした。

「売上高は、主にエナジーセグメントが影響している。また、調整後営業利益では、期初には織り込んでいなかった米国関税の影響を含めた。営業利益では、構造改革費用の積み増しによるその他損益の影響があり、税引前利益は、金融収支の悪化を反映した。セグメント別では、コネクトやインダストリーでは上方修正したが、エナジーでは下方修正した」という。


くらし事業では、エレクトリックワークスは国内販売が堅調に推移して上方修正。コネクトでは、航空業界の回復に伴い、強い受注が継続しているアビオニクスの増販益を反映した。インダストリーでは、電子デバイスや電子材料領域において、生成AIサーバー向け製品の強い需要が継続。エナジーセグメントでは、産業・民生は、蓄電システムの増販益の拡大によって上方修正したが、米国EV市場の減速と関税影響を受けた車載電池の下方修正が大きく、エナジー全体では下方修正になった。

エナジーでは、急速な米国関税政策の変更や、EV購入者に対する補助政策であるIRA 30Dの終了などが重なり、短期的にEV需要が減速したことを受け、北米市場における車載電池の年間販売見通しを、期初計画の46GWhから、40GWhへと下方修正した。

その一方で、産業・民生のデータセンター向け蓄電システムの需要は旺盛で、期初には前年比1.5倍の成長を想定していたが、上期実績では1.9倍に伸長。今回の発表では通期見通しを、前年比1.7倍へと引き上げた。ハイパースケーラーによるデータセンターへの積極投資が続いていることから、2026年度以降も、当初想定を上回る需要の急拡大が予想されており、これに対応するために、日本国内の車載電池の生産キャパシティの有効活用や、カンザス工場での生産についても検討を進めるという。

パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEOは、「データセンター向け蓄電システムの約半分が、ハイパースケーラー向けである。この領域で高いシェアを持っている。電力負荷の変動に対応する機能などを、ハイパースケーラーとともに作り込んできた経緯があり、それがシェア確保につながっている。今後のGPUの進化やデータセンターの動向を捉えると、分散型BBUが有効だと考えている。
これを新たなハイパースケーラーにも提案していく」と述べた。

なお、米国関税の影響については、期初時点では、影響額は連結売上高の1%未満とし、約800億円を概算想定していたが、今回、公表見通しに初めて織り込んだ。

和仁古グループCFOは、「価格転嫁やサプライチェーンの改善取組みにより、現時点での(関税の)想定影響は300億円。主な影響は、エナジーセグメントの車載電池であるが、短期的には価格転嫁を行い、中長期的にはサプライチェーンの見直しなどにより、影響額のさらなる低減を目指す」としている。

また、構造改革費用を200億円積み増して、1500億円とした。「インダストリーにおける人員適正化規模が期初想定を上回っている。特別キャリアデザインプログラムの内容がリッチであり、次の人生を後押しする効果が出ている。実家が兼業農家で、その仕事に集中するという人が多い」(楠見グループCEO)という。

大ナタの経営改革、中国の力の再評価、実を結ぶか?

パナソニックグループは、2025年5月に、1万人の人員削減を発表するなど、大胆なグループ経営改革に取り組んでいるところだ。その進捗状況についても説明した。

パナソニックホールディングスの楠見グループCEOは、「今回の経営改革が、人員の適正化に及ばざるを得ないことについては忸怩たる思いだが、目論見に対してはオントラックで進捗している。インダストリーでは少し上振れている。
また、課題事業の今年度中の方向づけも着実に進めている」と報告した。

パナソニックグループでは、テレビ事業、キッチンアプライアンス事業、産業デバイス事業、メカトロニクス事業の4つを「課題事業」に位置づけているが、それらの取り組みについても触れた。パナソニックグループでは、成長性が見込めず、ROICがWACCに達していない事業を課題事業としている。

テレビ事業については、「抜本的なオペレーションの改革により、WACC以上のROICの達成に目処をつけた。パートナーとの協業を、さらに深化させるとともに、競合に負けない競争力のある商品提供を継続しつつ、徹底したリーンなオペレーションで、2026年度をめどに、課題事業から脱却させる。オペレーションを抜本的に変えることで、事業売却や、商品や地域からの撤退は行わずに、課題事業からの脱却ができる」とした。

冷蔵庫を含むキッチンアプライアンス事業では、「2026年度に課題事業から脱却できる目処をつけた。日本市場に対しては、日本で求められる品質の確保を前提に、中国サプライチェーンの部材活用を徹底することで、チャイナコストを、日本を含むグローバルに展開する。そのために必要な量産開発や、調達部門などのチャイナシフトを加速し、オペレーション力の強化、経営のスピードアップを実現する。チャイナシフトに伴う国内の人員適正化は、今回のグループ経営改革のなかで進めくことになる」という。

キッチンアプライアンス事業も撤退や売却はせずに、課題事業からの脱却にめどがついたとしている。

楠見グループCEOは、「家電の業界では、中国のコスト力を持たないと、グローバルでは生き残れない。
今後、家電事業の体制を刷新し、中国、日本、その他地域で生き残ることを真剣に考えた。その結果、中国の力を積極的に使うために、中国にリソースをシフトし、それを軸に事業を展開することにした。本当は、2、3年前に、これができていたらよかったが、ようやくそれを進めることができる」と述べた。

また、インダストリーセグメントにある産業デバイスとメカトロニクス事業については、「課題事業の脱却に向けて、材料、プロセスといった競争力のある領域に集中するとともに、踏み込んだ改革を進めている。課題事業の脱却の道筋は見えている」と語った。

さらに、「パートナーとの協議を伴う案件についても、具体的に進めている。これらは契約締結が完了した時点で公表する」と述べた。

テレビ事業およびキッチンアプライアンス事業は、課題事業からの脱却に目途をつけたことになるが、「黒字化し、課題事業の脱却することに向けて、真剣に考えだした成果である。社内に危機感が生まれてきたことによるものだ」と自己評価してみせた。また、「人員削減のあとに、同じ仕事を人手でやるのではなく、定型業務ではAIエージェントなどの活用も図る。人員や固定費をリバウンドさせないようにしなくてはならない」と述べた。
楠見グループCEO「痛みを伴う改革は2025年度にやり切る」

楠見グループCEOは、1万人の人員削減を、「パナソニックグループが、10年後、20年後も、お客様や社会へのお役立ちを果たし続けるため」と語り、「痛みを伴う改革は、できるかぎり2025年度にやり切る」としている。

パナソニックグループは、2026年4月以降、新体制をスタートさせ、2026年度には、調整後営業利益で6000億円の達成を目指している。

今回、2025年度の通期見通しを下方修正し、調整後営業利益は300億円減額の4700億円としたが、楠見グループCEOは、「2026年度の目標は維持する。そして、達成は可能であると考えている」と前置きし、その理由について説明。「グループ経営改革はオントラックで進捗し、2025年5月の発表時点から、構造改革の成果は、プラス100億の上積みを行い、1320億円の効果を見込んでいる。投資領域の増益額については、車載電池の市況停滞で目論見から大きく減少するが、データセンター向け蓄電システムの市場の急成長による大幅な増益を中心に、コネクトやインダストリーでは、2025年度の見通しを上方修正するなど、これらの事業の増益によってカバーできる」とした。

「各事業の環境変化への耐性を強化し、徹底した効率化で、リバウンドしない高収益体質を実現する。この変革を、私がしっかりと責任を持ってやり切る」と宣言した。
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