Jリーグは4月26日、2022シーズンの各Jクラブのホームグロウン選手登録人数を発表した。

「ホームグロウン」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどういったものなのか知らない方もいるだろう。

ここでは、ホームグロウンとはどういったものなのか、日本サッカーにどういった影響があるのか、細かく紹介していく。

ホームグロウン制度は日本サッカーを強くするのか。Jリーグ6クラブが不遵守

ホームグロウン制度とは

2019シーズンからJ1リーグで、今2022シーズンからJ2リーグ、J3リーグでも導入された「ホームグロウン制度」は、ホームグロウン選手(自前で育成された選手)を規定の人数以上トップチームに登録しなければならないという規則のことだ。

規定の人数は徐々に増加しており、2022シーズンはJ1クラブで4人以上、J2・J3クラブでは1人以上のホームグロウン選手登録が義務付けられている。これを満たせない場合は、足りない人数分翌シーズンそのクラブが登録できるプロA契約選手の数が削減される。

ホームグロウン選手の定義

ではどのような条件を満たせばホームグロウン選手となるのだろうか。

Jリーグによると「12歳の誕生日を迎える年度から21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、特定のJクラブの第1種、第2種、第3種又は第4種チームに登録された期間の合計日数が990日(Jリーグの3シーズンに相当する期間)以上である選手」と定義されている。簡単に言えば、12歳から21歳までの間に、特定のJクラブに3シーズン以上在籍している選手を指す。

具体的には、ユースからトップチームに昇格した選手。ユースから大学に進学したのち、そのクラブのトップチームに入団した選手。ジュニアユースから高校サッカーなどを経てそのクラブのトップチームに入団した選手。高卒でJクラブに入団し3年を過ごした選手。などが考えられるだろう。

なお、期限付き移籍を経験した場合も所属元のクラブの期間に参入されるため、高卒で入団して3年間所属し、その間に期限付き移籍を経験した場合もホームグロウン選手となる。

2022シーズン満たせなかった6クラブ

今2022シーズン上記の登録規定を満たせなかったのは、いわてグルージャ盛岡(J2)、ザスパクサツ群馬(J2)、福島ユナイテッド(J3)、SC相模原(J3)、藤枝MYFC(J3)、テゲバジャーロ宮崎(J3)の6クラブであった。

J2とJ3は1人以上の登録が必要なところ、いずれもホームグロウン選手が0人だ。

これらの6クラブは来2023シーズンのプロA契約選手登録可能人数が、原則1クラブ25人までのところ、不足人数分(1人)を引いての24人となる。

ホームグロウン制度は日本サッカーを強くするのか。Jリーグ6クラブが不遵守

2022シーズン全Jクラブのホームグロウン選手登録人数

では全Jクラブの今シーズンのホームグロウン選手登録人数を見てみよう。カテゴリーによっても、クラブによっても人数に大きな差があることがわかるだろう。

J1クラブ、ホームグロウン選手(計:157人)

J2クラブ、ホームグロウン選手(計:77人)

J3クラブ、ホームグロウン選手(計:32人)

J1では、長期に渡ってユースの強化に力を入れているサンフレッチェ広島と柏レイソルが最も多く15人。J2の東京ヴェルディも同様に力を入れており、12人ものホームグロウン選手が登録されている。

一方で、近年のユースチームでトップクラスの実績を持つサガン鳥栖は、意外にもJ1最少であり規定人数ギリギリの4人。トップチームに昇格する選手は少なくないが、活躍した選手が移籍したり、ユースを除いた新卒選手は大卒が多いためだ。

ホームグロウン制度は日本サッカーを強くするのか。Jリーグ6クラブが不遵守

J3クラブには厳しい条件?

来2023シーズン以降のホームグロウン選手の登録義務は、J1リーグが4人以上、J2・J3リーグが2人以上となる。選手全員がプロ契約のクラブは、翌年の強化に影響が出るため早急に満たそうとするだろう。

だが少なくとも数年は、J3のいくつかのクラブにとっては形ばかりの制度となるのではないだろうか。J3にはそもそもプロ契約の選手が多くないクラブもあり、登録義務を満たせなくともさほど影響がないからだ。

また、例えば現在J3で首位に立つ福島ユナイテッドは、今年ユースができたばかり。その他のJ3のクラブもJ1などに比べるとユースの環境で大きく劣り、身近な期間での強化は難しい。

そういったクラブがすぐに登録義務を満たそうとするならば、現実的なのは高卒で獲得した選手が3年間在籍することだろう。

とはいえ活躍すると上のカテゴリーに引き抜かれることが多く、それも簡単ではない。

ホームグロウン制度が将来もたらすもの

ホームグロウン制度の目的は「各クラブが自分たちで選手を育て、強化を図る」ことだ。

先に導入されたJ1の各クラブでは、ユースから昇格する選手が定期的に現れるなど、目に見える成果が出はじめたが、時間がかかることだろう。Jリーグはそれも見越して「2030フットボールビジョン」に向けてこの制度を導入している。

各クラブが強化を図る過程で、ユースや高卒の選手などを中心に、自クラブで育成することを重視させる。それは長期的にみて、クラブにだけでなくリーグ全体の、その国のサッカーをレベルを上げることに繋がるはずだ。

イングランドのプレミアリーグが同制度を2010/11シーズンに導入し、クラブの強化、さらに代表チームの強化にも成果が現れつつある好例となっている。

J1からJ3までの全クラブが余裕を持ってホームグロウン選手の登録義務を満たせるようになった時、日本サッカー界は1つレベルアップを果たせるのではないだろうか。

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