FIFAワールドカップ26(W杯)アジア最終予選グループC第1節が9月5日に行われ、日本代表が中国代表に7-0で勝利した。

前半12分、MF久保建英のコーナーキックにMF遠藤航がヘディングで合わせ、先制ゴールをゲット。
前半アディショナルタイムにもMF堂安律の右サイドからのクロスにMF三笘薫がヘディングで反応し、日本代表に追加点をもたらした。

中国代表が[4-4-2]から[5-3-2]へ布陣を変えた後半開始以降も、日本代表の優勢は変わらず。淀みないパスワークで得点を重ねた。

日本代表が大勝できた要因は何か。ここでは埼玉スタジアム2002にて行われた中国代表戦を振り返るとともに、この点を中心に論評していく。現地取材で得た、森保一日本代表監督の試合後コメントも併せて紹介したい。

7発大勝の森保ジャパン。中国戦の布陣[3-4-2-1]はなぜ破壊力抜群だったのか

3バックの人選・配置が奏功

森保監督はこの試合で[3-4-2-1]の布陣を選択。今年6月のW杯アジア2次予選と同じ布陣で、最終予選白星スタートを狙った。

キックオフ直後、日本代表は中国代表のロングボール攻勢を凌ぎ、ボールを保持。板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹のDF陣(3センターバック)を起点に攻撃を組み立てた。

守備時の最終ラインコントロールに長ける谷口を3バック中央、ボール運びと左右へパスを散らすことが得意な板倉と町田を3バック両脇で起用する森保監督の采配が、この試合では的中。特に中国代表2トップの脇からボールを運ぶ板倉が、幾度となく日本代表の攻撃の起点となっていた。

これに加え、守田英正と遠藤の両MF(2ボランチ)が中国代表2トップの斜め後ろへ常に立ち、3センターバックからのパスコースを確保。
これにより中国代表がハイプレス(最前線からの守備)へ移行しづらい状況となり、必然的に撤退守備を余儀なくされた。板倉、守田、遠藤の3人から繰り出される遅攻は、アジア勢のなかで既にトップクラス。これはW杯アジア最終予選における日本代表の強力な武器となるだろう。

7発大勝の森保ジャパン。中国戦の布陣[3-4-2-1]はなぜ破壊力抜群だったのか

際立った久保建英の守備

日本代表の3バックを起点とする遅攻に加え、ハイプレスも機能する。この日の基本的な守備の段取りは、FW上田綺世が中国代表の2センターバックに寄せ、相手のパスワークを片方のサイドへ誘導するというもの。MF南野拓実が中国代表の2センターバックの一角へプレスをかけ、相手のパスを右サイド(日本代表の左サイド)へ追い込んだ後に、左ウイングバック三笘が中国代表の右サイドバック(DFヤン・ゼーシャン)を捕まえるという守備も見られた。

この日見られたハイプレスのなかで、特に中国代表の左サイドバック(DFリウ・ヤン)が自陣後方タッチライン際でボールを受けた際の久保のアプローチは、日本代表の守備のアクセントに。サイドバックがここでボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが必然的に消える。これに加えサイドバック自身が相手選手のプレスを浴びれば、ここからパスを繋ぐのはより難しくなる。この構図を作るべく、自陣後方タッチライン際でボールを受けようとしたリウ・ヤンへ絶えず寄せた久保の好プレーが際立っていた。

攻撃時にサイドと中央どちらでも積極的にボールを受けたのみならず、守備タスクの遂行力も高かった久保。[3-4-2-1]の2シャドーの一角として抜群の存在感を示した。

森保監督も試合後の公式会見で、自軍のハイプレスが機能したことを強調している。
1トップの上田、及び久保と南野の2シャドーのみならず、堂安と三笘の両ウイングバックの守備タスク遂行力も高かった。

「攻撃的な選手である堂安と三笘の両サイド、シャドーに入った久保と南野、前線の上田。みんなが高い守備意識を持って我々の(理想の)戦いをしてくれている。こうしたところを皆さんに見ていただければと思います」

7発大勝の森保ジャパン。中国戦の布陣[3-4-2-1]はなぜ破壊力抜群だったのか

中国の[5-3-2]を粉砕

先述の通り、中国代表が[4-4-2]から[5-3-2]へ布陣を変えた後半開始以降も、日本代表が試合を掌握。前半に見られた板倉と町田のボール運びや攻め上がりに対し、中国代表は有効な守備を持ち合わせておらず。ハイプレスで日本代表のパス回しを片方のサイドへ追いやることもしなかったため、後半も撤退守備を余儀なくされた。

また、久保と南野が中国代表の3セントラルMF各選手の斜め後ろから何度も顔を出し、味方センターバックからのパスを呼び込む。これにより中国代表の守備ブロックが崩壊した。

迎えた後半7分、中国代表のセントラルMFリー・ユェンイーの斜め後ろに立っていた南野が、センターバック町田からの縦パスを受ける。ここから日本代表のサイド攻撃が始まると、左ウイングバック三笘とのパス交換で敵陣ペナルティエリアへ侵入した南野がゴールを挙げた。

後半13分には町田から最前線の上田へ縦パスが送られ、このこぼれ球を拾った南野がゴールゲット。この時点で試合の趨勢が決した。

7発大勝の森保ジャパン。中国戦の布陣[3-4-2-1]はなぜ破壊力抜群だったのか

アジア杯離脱の伊東純也も躍動

今年1月から2月に開催されたAFCアジアカップ期間中に性加害疑惑が報じられ、同大会からの離脱を余儀なくされたMF伊東純也が、後半18分に投入される。
アジアカップを最後に代表招集が見送られていた同選手を、約5万人の観衆が万雷の拍手で迎えた。

温かい拍手で迎えられた伊東は、ゴールという最高の結果でファンの期待に応える。後半32分、同選手が久保の横パスを受けた後にペナルティエリア内でシュートを放つと、これが相手選手に当たってゴールマウスへ吸い込まれた。

後半42分には右ウイングバック伊東が同サイドから鋭いクロスを繰り出し、途中出場のFW前田大然(左ウイングバック)のゴールをアシスト。アディショナルタイムにも伊東の横パスを受けた久保が強烈なシュートを突き刺し、大勝劇に花を添えている。攻守両面において隙が無かった日本代表が、W杯アジア最終予選で最高のスタートを切った。
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