2024/25シーズンは、リーガF6連覇、コパ・デ・ラ・レイナ(スペイン女王杯)2連覇、UEFA女子チャンピオンズリーグ3連覇、さらに2季連続の3冠がかかっているバルセロナ。連覇ばかりでもはやどのくらい凄いのか分からなくなりそうだが、つまり最近の穫れる主要タイトルを総なめしているということだ。
バルセロナ・フェメニは男子チーム以上に絶対的な地位を確立しており、女子サッカーにおける欧州最強クラブという呼び声が高い。無論、これだけのタイトルを並べ立てられたら異論を唱えられる者はほとんどいないだろう。
会場は両ゴール裏にスクリーンが設置され、スタンドの各所にある売店では大小サイズのポップコーンも売られ香ばしい香りが漂っている。まるで映画館のようなお洒落な雰囲気で女性ファンの来場者が多かった。そんなバルセロナのホーム開幕戦をつぶさに観察して、連覇記録の更新を目指す今2024/25シーズンを一緒に占ってみよう。
立ち上がりからバルサが攻め続ける展開に
3,363人の観衆を集めた同試合は、いきなり8分にバルセロナのスペイン代表MFアイタナ・ボンマティが放ったシュートがクロスバーを叩く。そして27分、左クロスにノルウェー代表FWキャロライン・グラハム・ハンセンがダイレクトで合わせてバルセロナが先制した(1‐0)。31分、ペナルティエリアのすぐ外のゴール正面で得たフリーキック(FK)は、FWアレクシア・プテジャスが蹴ると思いきやスルーすると、後方から助走してきたグラハムが直接決めて、この日2得点目(2‐0)。
62分には、右サイドからの鋭い突破からのクロスをファーサイドで受けたアレクシアに対して、後手をとったソシエダ選手がスライディングをすると主審は即座にPKの判定。そのPKを63分にアレクシアが自ら左足インサイドで落ち着いて蹴ると、GKの逆を突きゴール左側に決まった。3‐0とリードを広げると、アレクシアは交代となりベンチに退いた。
その後も攻め続けるバルセロナに対して、【4-3-2-1】のシステムで守備に追われていたソシエダも勝機を見出そうと西奔東走。そして途中出場のFWルシア・パルドが77分に得点し3‐1とした。
83分には、ゴール前で1対1の場面で、スペイン代表GKカタリナ・コルが飛び出すと左手1本で防ぐ。ピンチを招いてもお構いなしで前方に多くの人数を割くバルセロナ。途中出場のFWクラウディア・ピナはロングレンジから際どいシュートを連発し、90+2分にはペナルティエリアの外やや左から右足で巻いたシュートがクロスバーを叩いた。
結局、最初から最後まで攻め続けたバルセロナが3‐1で勝利し、リーガF2連勝で勝点6とした。ホームとはいえ、ワンサイドゲームだった。
データもバルサの圧倒的な強さを裏付け
ボール支配率は、ソシエダの40%に対してバルセロナは60%。シュート本数は、4本に対して22本。枠内シュートは2本に対して11本。データでもバルセロナが圧倒した。立ち上がりからバルセロナが攻める展開で、圧倒的な強さを見せつけた。リードした際に守備を固めてリスクを最小化するといった戦い方は見られなかった。
「ひたすら攻め続ければ、たとえ1、2点の被弾をしても、それ以上の得点を決めて勝てる」と、踏んでいるのである。このメンタリティは男子チームとも通底している。また、相手チームとの実力差があるので、攻めることが勝利への近道で合理的だとも言えるだろう。
ソシエダは昨シーズンのスペイン女王杯決勝(2024年5月19日)の相手でもあり、この時も8‐0でバルセロナが圧勝している。
なでしこジャパンが苦戦したスペイン代表選手が多数所属
バルセロナは、なでしこジャパン(日本女子代表)がパリ五輪で苦しんだスペイン女子代表に、レアル・マドリードと双璧をなすように多くの選手を排出している。エースのFWアレクシア・プテジャス(30歳)はベテランの領域に入ってきているが存在感があり、いるだけで相手に威圧感を与える。実際にこの試合でPKを獲得して得点した。
MFアイタナ・ボンマティは選手として最も脂がのっている時期にある。チャンスを量産し、自ら得点も決める危険な選手だ。アレクシアは2021年と2022年、アイタナは2023年にバロンドール(世界年間最優秀選手賞)を獲得している。
この試合では、スペイン代表のDFサルマ・パラジュエロと同FWイレーネ・パレデスが負傷欠場していたが、ポジションのどこを見回してもヨーロッパ強豪国の代表選手ばかり。ソシエダとの実力差は、やはり歴然だった。
監督はシンデレラストーリーを持つ実力派
キックオフ時のバルセロナのシステムは【4‐2‐3‐1】だった。今年6月に就任となったバルセロナのペレ・ロメウ監督は、芸術一家の出身で現役時代はピボーテ(守備的MF)としてプレーしていたが負傷もあり早くに引退し、指導者に転身した人物だ。
選手としては無名だったが若手との関係構築に長けており、勉強熱心で類稀な戦術眼を持つことがバルセロナの目にとまりスカウトされてプロサッカーの世界に入った(2017年から男子ユースチームを指導)。まさにシンデレラストーリーの持ち主だ。
2021年からは、チームを連覇に導いてきたホナタン・ヒラルデス監督の右腕を務めており、現在も好調を維持。2024/25シーズンのバルセロナもタイトル獲得に向けて万全の状態にあるといってよいだろう。