

今季は、デザイナー・黒河内がポルトガルを旅する中で目にした、在りし日を思わせる風景やファウンドオブジェクトと、現代性との間に生まれる対話がインスピレーションに。旅先で買い求めたビンテージフォトの数々に記録されたムードと、デザイナー自らスナップした写真との並置による、過去と現在、異文化への慕情と私的感情の重なりが洋服に落とし込まれている。

コレクションのカラーパレットは、インディゴを中心とした様々なシェードのブルーを軸に、ブラウンやエクリュが差し込まれており、これらが代弁するのは、ポルトガルの街に漂う土の記憶、頭上に広がる空の青とテラスに置かれた古びたウッドの家具が自然と生み出すノスタルジー。それらがオーバーサイズなシルエットと現代的な素材使いで仕立てられたエレガントなデイリーウェアへと昇華された。




コレクションの中心となるデニム、スウェット、カットソーといった、リラクシングな素材に対しても、デコルテを縁取る繊細なカッティング、華奢なショルダーパターンとボリューミーなアーム、ゆるやかな広がりを見せるカフ、複雑な刺繍など、ブランドならではのシグネチャーテクニックやシルエットが多用されており、手の込んだ作りの美しいアイテムには今季も本当に惚れ惚れさせられる。何気ない日常を“特別なひととき”にしてくれること間違いなしの上質なデイリーウェアといっても過言ではないだろう。