女性ファッション誌「スウィート(sweet)」や「リンネル」などを出版する宝島社が、9月15日に逝去した女優の樹木希林さんを起用した企業広告を制作した。10月29日付の全国版朝刊に「あとは、じぶんで考えてよ。」を朝日新聞に、「サヨナラ、地球さん。」を読売新聞にそれぞれ掲載している。
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 1998年から企業広告を制作している同社は、これまでADC賞やTCC賞、グッドデザイン賞、日本新聞協会 新聞広告賞など数々の広告賞を受賞してきた。以前に樹木さんを起用した企業広告「死ぬときぐらい好きにさせてよ」は2016年1月に掲載され、話題を集めた。

 今回の企業広告では、「あとは、じぶんで考えてよ。」「サヨナラ、地球さん。」をメインコピーに2枚の写真を使用し、ボディコピーは樹木さんの生前の数々の言葉をもとに制作。朝日新聞で掲載している企業広告「あとは、じぶんで考えてよ。」には樹木さんをはじめ、夫の内田裕也、娘の内田也哉子、義理の息子の本木雅弘、孫の内田伽羅、内田雅樂、内田玄兎が写った集合写真を遺族から、読売新聞で掲載している企業広告「サヨナラ、地球さん。」には同社から借りた生前の写真が使われている。宝島社は同作を通じて、あらためて「死」について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけにしたかったという。クリエイティブディレクターは佐々木宏、コピーライターは三井明子、アートディレクターは浜辺明弘、デザイナーは松崎貴史、クリエイティブアドバイザーは能丸裕幸が担当した。

■朝日新聞:あとは、じぶんで考えてよ。
絆というものを、あまり信用しないの。期待しすぎると、お互い苦しくなっちゃうから。
だいたい他人様から良く思われても、他人様はなんにもしてくれないし(笑)。
迷ったら、自分にとって楽なほうに、道を変えればいいんじゃないかしら。
演技をやるために役者を生きているんじゃなくて、人間をやるために生きているんです。


代表作?ないのよ。助演どころか、チョイ役チョイ役って渡り歩く、チョイ演女優なの。
自分は社会でなにができるか、と適性をさぐる謙虚さが、女性を綺麗にしていくと思います。
楽しむのではなくて、面白がることよ。中に入って面白がるの。面白がらなきゃやってけないもの、この世の中。

老人の跋扈(ばっこ)が、いちばん世の中を悪くすると思います。
病を悪、健康を善とするだけなら、こんなつまらない人生はないわよ。
死に向けて行う作業は、おわびですね。謝るのはお金がかからないから、ケチな私にピッタリなのよ。謝っちゃったら、すっきりするしね。
"言わなくていいこと"は、ないと思う。
やっぱり言ったほうがいいのよ。
こちら希林館です。留守電とFAXだけです。なお過去の映像等の二次使用はどうぞ使ってください。出演オファーはFAXでお願いします。
このように服を着た樹木希林は死ねばそれで終わりですが、またいろいろなきっかけや縁があれば、次は山田太郎という人間として現れるかもしれない。

えっ、わたしの話で救われる人がいる?それは依存症というものよ。

■読売新聞:サヨナラ、地球さん。
靴下でもシャツでも、最後は掃除道具として、最後まで使い切る。人間も、十分生きて自分を使い切ったと思えることが、人間冥利に尽きるんじゃないかしら。そういう意味で、がんになって死ぬのがいちばん幸せなのよ。
用意ができる。

片付けして、その準備ができるのは最高だと思うの。
ひょっとしたら、この人は来年はいないかもしれないと思ったら、その人との時間は大事でしょう?そうやって考えると、がんは面白いのよ。
いまの世の中って、ひとつ問題が起きると、みんなで徹底的にやっつけるじゃない。だから怖いの。自分が当事者になることなんて、だれも考えていないんでしょうね。
日本には「水に流す」という言葉があるけど、桜の花は「水に流す」といったことを表しているなと思うの。
何もなかったように散って、また春が来ると咲き誇る。桜が毎年咲き誇るうちに、「水に流す」という考えかたを、もう一度日本人は見直すべきなんじゃないかしら。
それでは、みなさん、わたしは水に流されていなくなります。今まで、好きにさせてくれてありがとう。樹木希林、おしまい。