年初来高値更新を目指していたユーロ・ドルが売り圧力にさらされています。欧州中銀(ECB)の追加利下げ観測は強まっていないものの、降って湧いた政治リスクが下押し要因に。
欧州議会選での右派勢力の拡大はフランス議会選に発展し、不透明感を深めました。

「政策金利は一直線に下がる道筋になく、据え置く期間が複数回あるかもしれない」――ラガルドECB総裁は今月6日、理事会終了後の記者会見でこう述べています。インフレとの戦いは継続し、引き締め的な現行の政策スタンスを維持するとの趣旨です。4年超ぶりの政策金利引き下げは織り込み済みで、ラガルド氏の発言を受け今後のペースは緩慢になるとの見方からユーロ買いに振れました。

米連邦準備制度理事会(FRB)は11-12日の連邦公開市場委員会(FOMC)でインフレ率の低下を認めながらも、当局者による金利見通しは年内3から1回の利下げとなりました。市場の米利下げシナリオの修正でユーロ売り・ドル買いに振れやすいものの、ユーロ圏の経済指標は改善も目立ちます。
欧米中銀の利下げのタイミングだけならユーロ・ドルは今後1.10ドルを目指しても不自然ではありません。

ところが、6-9日に行われた欧州議会選(定数720)の投票結果が10日に明らかになり、右派勢力の躍進が鮮明になりました。親欧州連合(EU)派は過半数を確保したもようですが、リベラル派は後退し、代わって反EU・反移民の主張が色濃く反映される結果となりました。フランスではマクロン政権を支える与党連合が右派の「国民連合」(RN)に大敗し、マクロン大統領は下院の解散・総選挙に踏み切りました。

マクロン氏は欧州議会での右派拡大を自国議会で否定する狙いで今回の議会選に臨む方針です。しかし、2年前の議会選で与党は過半数を失い、支持率も20%台と低迷。
直近の調査によると、与党連合の支持率は20%を下回り、35%のRNに大きく水をあけられています。大統領の任期は5年ですが、議会少数派になれば政策運営が進まず、マクロン氏は退陣に追い込まれる可能性もあります。

金融市場もすでに警戒感が広がり、フランス国債の売りが優勢に。10年物国債利回りはドイツとフランスで格差が2017年以来の幅まで拡大し、ユーロ売り・ドル買いを後押ししています。かつて極右政治家のマリー・ルペン氏が創設した国民戦線の流れを汲むRNは、その末娘マリーヌ・ルペン氏がこれまで代表を務め、「顔」的な存在です。党名変更など極右色を和らげてきたせいか、支持を拡大しているもようです。

(吉池 威)
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