*09:00JST 資源通貨を取り巻く懸念材料【フィスコ・コラム】
カナダドルやノルウェークローネなど、資源通貨が騰勢を強めています。新型コロナウイルスの感染縮小に伴う需要回復を見込んだ原油高がその背景にあります。
ただ、株高の調整や不透明な中東情勢ほか、目先の懸念材料に目を向ける必要がありそうです。


2020年終盤以降、資源通貨はドルや円に対して上昇基調を維持しており、先高観は弱まっていません。象徴的なのがカナダドルです。米長期金利の上昇に追随したドル高にもかかわらず、カナダドルは対ドルで2018年2月以来3年ぶりの高値に浮上。対円でも心理的節目の85円を上抜け、2年超ぶりの水準に値を切り上げています。中央銀行がハト派姿勢を弱めているのも、カナダドル買いの支援材料です。



ノルウェークローネもG10通貨のなかで上昇率がトップクラスに入るほか、豪ドルやNZドルはここ数年の高値に値を切り上げ、2014-15年の原油急騰時の水準が意識されるほどです。主要な手がかりのNY原油先物(WTI)はコロナ危機で初めてマイナスとなるなど混乱がみられました。しかし、世界経済は大底を打ち、WTIも今年2月に危機前の水準である1バレル=60ドル台に持ち直しています。


資源通貨が上昇基調を維持できるかどうかは原油価格次第で、それが今後も安定的に上昇するなら資源通貨も買いが継続しそうです。石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国による3月4日の会合では、日量50万バレル程度の減産縮小が想定されるなか現状維持を決定し、加えて世界的な需要増が見込まれるため、原油価格は目先も上昇基調が続くとみられます。


とはいえ、下押し材料も警戒されています。
まず、米長期金利の上昇は米連邦準備理事会(FRB)当局者が自然の成り行きとしていることで一段の上昇が見込まれ、ドルを押し上げる可能性があります。また、米バイデン政権はイランとの対話に乗り出す方向で、現時点で制裁解除に否定的ですが今後は不透明です。解除の場合はイランの原油輸出も可能になり、需給バランスが崩れ相場は下落方向に向かうでしょう。


株価と原油価格は同じリスク資産でありながらこのところ逆行する場面もあり、マネーの流れが変わったと思わせる点も気になります。想起されるのは、リーマンショック直前の状況です。株高が一服すると投機マネーは原油市場に流入し、WTIは過去最高値の1バレル=147ドルに値を切り上げました。
その後の原油相場は乱高下し、金融市場にも大きなダメージを与えた経緯があります。


一方、円の評価も注目されています。昨年は日本でのコロナまん延が警戒され、「日本売り」の意味を持つ円売りもみられました。日本はコロナの爆発的な感染を回避したものの、世界の主要国に比べ回復が鈍いとの見方から日本株売り・円売りが進んでいるとも指摘されます。逆に、日銀が国債金利の柔軟化に舵を切った場合には、短期的に円買いとなるなど不安定な値動きも想定されます。


これまで、資源通貨買い・安全通貨の円売りはリスク選好ムードを表してきましたが、世界がコロナ禍の打撃を克服する過程で変化が生じやすくなっていることに留意するべきでしょう。



※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。


(吉池 威)



《YN》