■要約

シュッピンはカメラや高級腕時計など「価値あるもの」に特化したEC(eコマース)企業。中古品と新品のそれぞれのニーズの違いや商品特性の違いを生かし、中古品と新品が相互に作用し合いながら会員基盤の拡大や業績の伸びを実現してきた。
最近では、独自のEC買取やOne to Oneマーケティング、CGMの活用などにも取り組み、プラットフォーム型事業モデルとして進化を続けている。足元では新型コロナウイルスの感染拡大(以下、コロナ禍)により、店舗売上に影響がでているものの、主軸であるEC売上はこれまでの施策の効果により順調に伸びており、新たな成長ステージに入ってきたと言える。2022年9月には新市場区分である「プライム市場」への選択を申請した。

1. 2022年3月期上期の業績
2022年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比31.8%増の18,972百万円、営業利益が同147.7%増の1,315百万円と、増額修正予想(2021年8月4日公表)をさらに上回る大幅な増収増益となった。売上高は、好調な外部環境(EC市場の拡大等)や各施策の効果によりEC売上が順調に伸びている。特に、第2四半期だけで見ると過去最高水準(同期間ベース)を更新した。
一方、コロナ禍の影響が続く店舗売上についても、前年同期の落ち込みから大きく回復した。事業別では、「時計事業」が前期第3四半期から実施している戦略的な商品ラインナップ拡充(中古ロレックスの買取強化)により、EC売上及び店舗売上(とりわけ免税売上)の両方の伸びに大きく寄与。また、「カメラ事業」についてもEC売上を中心に好調に推移している。利益面でも、増収による収益の押し上げのほか、カメラ中古品の売上総利益率の改善や販管費の抑制などにより大幅な増益を実現した。

2. 主な活動実績
活動面でも、One to One マーケティングにAIMDを掛け合わせた仕組みの導入により、プッシュ配信が格段に強化され、取引機会の増大や売上総利益率の改善に寄与してきたことや、「LINE」公式アカウント及び「YouTube」チェンネルの開設、CGMの活用など、一連のEC強化策により、Web会員数やアクティブ率、EC買取額など、各KPIも好調に推移している。また、戦略的な在庫投資に取り組む「時計事業」についても、中古ロレックスを中心に国内最大級の在庫量を確保し、業績の伸びをけん引することができた。


3. 2022年3月期の業績予想
同社では、2021年8月4日付けで2022年3月期の通期業績予想を増額修正した。修正後の業績予想として、売上高を前期比14.3%増の38,831百万円、営業利益を同23.7%増の1,996百万円と増収増益を見込んでいる。売上高は、引き続きEC売上を軸としてすべての事業が伸長する見通しである。利益面では、増収効果のほか、事業ごとの売上総利益率改善の取り組みや販管費の抑制により、大幅な増益を実現する想定となっている。なお、上期実績が計画(修正後)を上回ったにもかかわらず、通期業績予想をそのまま据え置いたのは、コロナ禍(第6波)の到来を含め、先行きの不確実性を慎重に見ていることが理由と考えられる。そのため、通期業績予想の達成のためには、下期の売上高19,859百万円、営業利益681百万円あれば足り、特に利益面でのハードルは明らかに低い状況と言える。
したがって、第3四半期の進捗によっては2回目の増額修正の可能性にも注意が必要であろう。

4. 今後の成長戦略
同社は、毎年、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新(ローリング)している。カメラの中古品EC市場にてシェアNo.1をより強固にし、プレゼンス(プライスリーダー)をさらに高める方向性であり、シェア拡大に伴うEC売上の持続的成長をドライバーと位置付けている。また、売上総利益率の改善、販管費率の低減により、売上高の成長以上に利益成長を重視していく方針としており、最終年度となる2024年3月期の目標として、売上高47,844百万円(3年間の平均成長率12.1%)、営業利益2,624百万円(営業利益率5.5%)を目指している。また、中長期目標の実現に向けて、4つの価値の「シンカ」(進価、深価、真価、新価)の追求を掲げており、One to Oneマーケティング(AIMD、コンテンツレコメンド)、時計商品ラインナップ拡充、販売チャネルの拡充等に取り組んでいる。

■Key Points
・2022年3月期上期は計画を上回る大幅な増収増益を実現
・EC売上が順調に伸びるとともに、戦略的在庫投資により「時計事業」が大きく拡大
・2022年3月期の業績は通期でも大幅な増収増益を見込む(増額修正の可能性にも注意)
・中期経営計画では、カメラ中古品EC市場にてシェアNo1をより強固にし、プレゼンスをさらに高める方向性を掲げ、4つの価値の「シンカ」の追求に取り組む

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)