■中長期の成長戦略

1. 中期経営計画
2019年6月にアルファは、2023年の創業100周年に向け、2020年3月期から2023年3月期を対象期間とする中期経営計画(MP2022)を策定した。このなかで、2023年3月期売上高70,000百万円(うち、自動車部品事業57,000百万円、セキュリティ機器事業13,000百万円)、営業利益率6.0%以上の達成を目標とし、達成に向けた基本方針として、成長のための「新事業・新製品開発」、安定性確保のための「収益基盤の強化」、成長と安定を実現するための「人材育成」を掲げた。
しかしながら、その後の世界的なコロナ禍の影響を受け、半導体需給の逼迫による自動車の減産、原材料供給問題や価格高騰等の影響に加え、自動車部品事業での高付加価値新製品の拡大採用の一部延期やロッカーシステム部門の需要回復遅れ等により、中期経営計画最終目標の見直しを行った。コロナ禍からの脱出とさらなる成長に向けた収益基盤の再強化を推進することで、目標達成を目指す。なお、見直し後の連結数値目標としては、2023年3月期に売上高62,000百万円、営業利益率5.0%以上、ROE6.0%以上とし、当初の数値目標は2025年3月期で達成するとしている。また、中期経営計画で掲げた基本方針は継続する方針だ。

2. 事業セグメント別見通しと注力点
事業セグメント別に見ると、2023年3月期に、自動車部品事業は売上高49,000百万円、セキュリティ機器事業で売上高13,000百万円を目標としている。

(1) 自動車部品事業
自動車部品事業では、世界的なコロナ禍を影響を受け、半導体需給の逼迫による自動車の減産等を織り込んだ結果、2023年3月期に売上高49,000百万円(2022年3月期予想比19.5%増)に修正した。


中期経営計画では海外ネットワークを5つに区分けし、この5つのリージョンで事業が完結する仕組みを構築することで、グローバル展開に弾みを付ける方針だ。欧州では、キーセット事業に加えドアハンドル事業に参入することを目的に、2018年10月にSocoete de Peinture de Pieces Plastiques SASを取得、環境規制の厳しい欧州で既存塗装設備を活用したビジネスの早期立ち上げを行った。既にRenault S.A.(ルノー)などにバックドアハンドルを納入しており、今後はVW以外でのビジネス拡大が視野に入る。ドアハンドル事業では、ハンドルがドアパネルに格納される「フラッシュハンドル」を搭載する欧州車も普及し始めていることから、ハンドルの高付加価値化も期待される。VW向けについては、欧州でキーセット事業でのフルライン受注を目指すほか、北米向けではインサイドハンドルなどの納入を始めた。中国では、2019年4月に中国の自動車用メッキ部品製造会社のADVANCONを子会社化した。
ADVANCONは最新鋭の設備を所有しており、中国での環境規制強化のなかでも優位性があることから、2023年3月期以降の中国ビジネス拡大に寄与すると弊社では見ている。また、新市場としては、中国でのRKPS(リモートキーレスエントリー&プッシュエントリースタート)事業も順調に拡大しており、既に4社で採用されている。今後は、中・小型トラック向けにも採用を広げる方針で、中国トラック市場での新たな事業展開が見込める。北米は主要得意先以外での拡大がポイントとなるが、既にVW向けハンドルビジネスを2020年に開始している。日本では、非製造部門の徹底したスリム化などを実行することで、営業黒字化を目指す。特にVWについてはEV化が鮮明であることから、今後も同社業績に貢献すると見られ、目標達成の確度は高いと弊社では予想している。


(2) セキュリティ機器事業
セキュリティ機器事業では、住設機器部門が好調に推移していることから、2023年3月期に売上高13,000百万円(2022年3月期予想比18.2%増)とする当初目標を据え置いた。同事業は成長ポテンシャルが高く、2023年3月期以降も10%程度の成長が見込まれることから、中長期的には20,000百万円も視野に入ると弊社では見ている。

住設機器部門では、一段の電子化対応とBtoCビジネス、ソリューションビジネスへの展開が重要になると弊社では見ている。2008年に標準電気錠を発売以降順調に成長しており、同社の電気錠の採用比率(2020年、国内)は32.6%、国内シェアは60%に達している。今後もYKK AP以外の採用増により、さらなるシェア拡大を目指す。一方、賃貸住宅では採用比率が低いことから、賃貸住宅向け暗証番号式電気錠を(株)ビットキーのデジタルコネクトプラットフォーム「bitkey platform」と連携した。
これにより、入居者の次世代型スマートロックニーズに応えらえるようになり、新築賃貸マンションへの導入なども決まるなど、納入拡大が期待される。なお、電気錠分野ではミネベアミツミが(株)ユーシンの住宅機器部門を活用していることに注意が必要だ。一例を挙げると、ミネベアミツミはスマートハウス構想として、住宅・ビル用スマートロック事業への本格拡大を目指しており、1台のスマートフォンで自動車及び住宅のドアの施解錠を行えること等を推進している。

ロッカーシステム部門では、アフターコロナを見据えてリモート対策や置き配など、新たなビジネス展開が重要となる。この分野では、オンラインで注文した商品を店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pickup In Store)での展開を加速している。一例を挙げると、2020年11月に、店舗側システムと連携し、QRコードを使って受け渡しができる「STLシリーズ」を発売した。
このロッカーは、従来店頭で受け渡していた商品を、クラウド管理されたロッカーを介して非対面で顧客に受け渡すことができる。店舗効率化と顧客への利便性提供が同時に図れることから、コロナ禍対策として調剤薬局や飲食店等、多様な業態での利用が期待される。実際、クオール(株)が展開するクオール薬局や(株)まろんが展開するマロン薬局等で、処方箋医薬品等を非対面で店頭受渡しをするロッカーとして採用されている。同分野は、オンライン診療の拡大により調剤受渡しの拡大も予想され、潜在市場としての期待も大きい。加えて、スーパー、ホームセンター、クリーニングなどの業態にも拡大が見込まれることから新たな展開が期待される。また、ターミナルロッカーについては、ネットワークによる管理機能に対応した「ICカード対応AISシリーズ」の投入などにより、さらなる事業の拡大を目指す。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)