4. 「利回りくん」関連事業
「利回りくん」関連事業は、子会社のシーラがアセットマネジメント事業として「利回りくん」を運営している。2023年12月期末時点で「利回りくん」の累計会員数は279,029人、累計プロジェクト数は64件、累計組成額(GMV=Gross Merchandise Value)は5,337百万円である。
クラウドファンディングとは、新たなプロジェクトを立ち上げるために必要な資金をインターネットを通じて不特定多数の人から調達する仕組みのことである。一般的に資金を集めたい個人または企業を起案者、プロジェクトに資金提供する人を賛同者や支援者と呼ぶ。起案者にとっては銀行借入以外に資金調達の道が開けるメリットがある。一方、支援者にとってはプロジェクトを応援するだけでなく、一定のリターン(事業収益/運用益/利息/返礼品など)が期待できるため、新たな資金調達・資産運用方法として急速に普及している。
不動産投資型クラウドファンディングとは、複数の投資家から資金を集め、その資金で不動産を取得して運営し、売却益や家賃収入などの利益を投資家に分配するものである。運用資産の評価額が下落した場合は、劣後出資者として投資に参加している運営会社の出資金から下落額が補填される。出資金全額をもっても補填できない場合には、優先出資者(投資家)の元本が減少する仕組みとなっている。このため、投資家の出資金がゼロになるリスクのある融資型クラウドファンディングや株式投資型クラウドファンディングなどに比べて、優先出資者の元本の安全性が高いという特長がある。
「利回りくん」は、不動産を対象にシーラが劣後出資者となってファンドを組成し、対象物件/募集金額/予定利回り※/分配時期/運用期間などを提示して投資家からの出資を募集する。募集金額/予定利回り/分配時期/運用期間は投資対象物件によって異なり、組合の種類によるがファンドの資産はシーラの財務状況からはオフバランスとなる。
※家賃収入や売却益などから得られる期待リターンのこと。
また「利回りくん」は、サービスコンセプトに「社会貢献、地域創生、誰かの夢や挑戦を応援」を掲げ、不動産投資を身近な資産形成手段として選択される社会の実現を目指している。対象不動産は、シーラが不動産デベロッパー事業で開発・販売する物件に限らず、住居・商業施設・ホテル等のほか、全国の再生可能エネルギー関連や地域活性化関連の応援ファンドなどを含めて多岐にわたる。これまでの実績は、平均組成額(募集金額)が1億円未満、平均運用期間が1年程度、平均年間利回りは4%程度となっているが、募集金額1億円以上の大型ファンドの組成は増加傾向となっている。
具体的な組成ファンドの例として、堀江貴文氏がファウンダーを務める宇宙事業開発のインターステラテクノロジズ(株)が開発・製造する超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」関連の応援型ファンドとして、2021年から2022年にかけて「ZERO」の開発・製造施設を対象不動産とする「大樹町ロケットファンド」(第1号~第3号)を組成した。2021年、2022年には前澤友作氏による犬猫共存型マンション「イヌネコヒルズ」(vol.1~3)ファンドを組成した。犬猫殺処分ゼロ社会を目指す活動を支援する応援型ファンドである。また、グループ企業であるシーラソーラーとシーラバイオテックが共同事業として運営開始した太陽光データセンター「ABURAJIMA」ファンドを組成した。100%再生エネルギーによるサステナブルな太陽光データセンターを支援する応援型ファンドである。
このほか、国内最大級の会員登録者数を有する「ietty」事業を運営している。2023年10月にiettyより事業を譲り受けた。スマートフォンで物件案内から内見のほか、賃貸契約までワンストップで行えるため賃貸仲介のプロセスを効率化できるという特長がある。さらにインターネット上に公開されていない物件もあるため20代~30代の若者を中心に需要が拡大基調であり、会員登録者数は2024年3月に30万人、同年5月に40万人を超えた。今後は自社ブランド「SYFORME」シリーズの入居率向上や「利回りくん」との相互送客などにより、グループシナジーを高める方針だ。
なお子会社のシーラブレインは、グループの業務効率化を推進するためのAIやRPA・業務システムの開発、法人向け業務自動化・AIシステム導入コンサルティング、不動産投資・資産運用コンサルティングなどを展開している。主要サービスとして、不動産データから適正価格・理論利回り等の指標をAIで自動算出してお買い得物件を抽出・通知する「利回りくん AI」、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)にカスタマイズを加えて使いやすくしたシステム「GOD GPT」などがある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)