*15:04JST はてな Research Memo(4):新型コロナウイルス感染拡大の影響が変動要因となるが、利益は会社計画達成を目指す
■今後の見通し

1. 2020年7月期業績見通し
はてなの2020年7月期の業績は、売上高で前期比10.3%増の2,781百万円、営業利益で同36.6%減の287百万円、経常利益で同36.2%減の287百万円、当期純利益で同39.9%減の197百万円と期初計画を据え置いた。第2四半期までの売上高の進捗状況は、コンテンツプラットフォームサービスが計画を下回っている以外は順調に推移している。


ただ、第3四半期に入って新型コロナウイルス感染拡大の影響が出始めており、先行きについては不透明感が増している。現時点ではネガティブ、ポジティブ両面の影響が考えられ、定量的に見積もることは困難と同社では判断している。ユーザー行動の面から見れば、ウイルスへの不安やマインドの冷え込みで同社サービスの利用頻度が低下するとの見方がある一方で、外出の自粛によりブログやWebマンガの利用頻度が増加する可能性もある。また、広告市況について見れば、経済活動の停滞による企業の広告予算絞り込みで、広告単価が下落する可能性がある一方で、「マスからネット」への広告シフトが継続するため、広告単価増やコンテンツマーケティング活動が活発化する可能性がある。SaaS市況について見れば、セミナー・展示会の自粛により「Mackerel」等の見込み顧客獲得が難しくなってきているが、コンテンツマーケティングをはじめとしたインバウンドでの問い合わせ増施策でカバーしていく可能性がある。

直近2月~3月の動きで見れば、コンテンツマーケティングサービスやテクノロジーソリューションサービスについては大きな影響は出ていないが、コンテンツプラットフォームサービスにおいて広告単価が軟調に推移しており、売上高については会社計画を下振れする可能性があると弊社では見ている。
レジャー・旅行業界を中心にネット広告についても自粛する動きになっていることが要因と見られる。一方で、利益面では期初計画で先行投資費用を多めに見積もっていたこともあり、これら投資費用をコントロールすることで会社計画利益の達成を目指していくものと見られる。

(1) 部門別売上見通し(期初計画)
コンテンツプラットフォームサービスの売上高は前期比17.7%増の684百万円を計画しているが、第2四半期までの進捗率は38.6%と想定よりも弱く、第3四半期も新型コロナウイルス感染拡大の影響により広告単価が軟調に推移していることから、通期でも前期比で減収となる可能性がある。同社ではアドネットワーク事業者との接続が停止状態となっているメディアについても早期再開を図ることで広告単価の回復を進め、また、有料サービスとなる「はてなブログPro」の契約数を増やしていくことなどで増収を目指していくことになる。「はてなブログ」サービス担当部署は、第2四半期までは運営メディア内のコンテンツの安全性を管理する業務にリソースをかけていたが、下期からは有料サービスの契約獲得に注力していく方針となっている。

コンテンツメディアサービスの売上高は前期比2.3%増の872百万円を計画していたが、第2四半期までの進捗率は51.1%と想定をやや上回るペースで進捗している。
既述のとおり新規開設メディアが順調に増加していることが主因となっており、通期目標である104件を早期に達成し上積みを狙っている。同部門においても、新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅行会社からのコンテンツ制作依頼が減少するなど一部顧客で弱い動きが見られるものの、全体的には順調に推移している。

テクノロジーソリューションサービスの売上高は前期比12.6%増の1,224百万円を計画、第2四半期までの進捗率は44.0%とやや低いものの、当初予定どおりの動きとなっている。「GigaViewer」については、2020年3月に(株)マッグガーデンがリニューアルオープンさせたWebマンガサービス「MAGCOMI(マグコミ)」、(株)双葉社がリニューアルオープンさせたWebマンガサイト「webアクション」にそれぞれ採用され、提供を開始している。これで「GigaViewer」の導入は9社、11件目となる。

また、同年3月にKADOKAWAが運営する日本最大級のガールズエンタテインメントサイト「魔法のiらんど」のリニューアルに対して、サービス企画及びシステム開発を担当し、納品している。
「魔法のiらんど」は2020年4月より小説に特化したサービスにリニューアルしており、今後も追加機能の開発や広告などの運用支援を行っていく予定となっている。

「Mackerel」は、開発体制並びに販売体制の拡充に伴う積極的な拡販施策によって、累積顧客指数で前期末比34.5%増と高成長を見込んでいる。2020年3月にはAWSが各分野で卓越した成果と実績を挙げたパートナー企業を選出する「AWS Partner Network(APN) Award 2019」において、「Mackerel」を通じたAWSビジネスへの貢献が評価され、「APN Technology Partner of the Year 2019-Japan」※を受賞したことを発表しており、認知度の向上により更なる顧客数の拡大が見込まれる。

※独立系ソフトウェアベンダーやSaaS/PaaS/IaaS/セキュリティ等を提供するベンダーを対象に、AWSでの稼働、実績が非常に豊富で、年間を通してAWSのビジネスに最も貢献したパートナーに贈られる賞。


IT専門調査会社であるIDC Japan(株)の予測によると、国内のパブリッククラウドサービス市場は2018年から2023年までの5年間で年率20%の成長が続く見通しとなっている。このため、サーバー監視業務の負担軽減に寄与する「Mackerel」の需要も同様に高成長が期待される。
なお、類似サービスとして米Datadogの「Datadog」というサービスがあるが、機能的にはアプリケーションソフトの監視も行うなど「Mackerel」よりも守備範囲が広くなっており価格帯も高い。このため、市場の棲み分けがなされているものと考えられる。

(2) 事業費用
事業費用は前期比20.6%増の2,494百万円を見込んでいる。内訳は人件費で同28.6%増の1,343百万円、DC利用料で同26.6%増の539百万円、その他費用で同2.3%増の612百万円となる。

人件費については、エンジニアを中心に前期の2倍となる36名の増員(期末従業員数は178名)を計画していたが、今回26名の増員に見直している。このため、人件費について計画を下回る可能性が高い。
第2四半期末で11名の増員だったので下記の増員予定数は15名となるが、このうち4月からの新卒社員が4名いるので、残り11名を中途採用で賄っていくことになる。受託サービスの引き合いが旺盛で開発リソースが不足していることや、中期的な成長を見据えての増員となる。

DC利用料の増加分については、既存サービスの成長に連動した費用増に加えて、サービスの品質向上・維持のための戦略的投資も2~3割程度含まれている。前述した運営メディアの安全性を担保するためのツールの導入費用のほか、「Mackerel」や「はてなブログMedia」などのサービス品質向上のため、ミドルウェアソフトの機能を一段階引き上げる予定にしており、それに伴って利用料金も増加する。ただ、こちらも期初計画では費用を多めに見積もっていたことから、計画を下回る可能性がある。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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