■成長戦略とその進捗
1. 中期経営計画
ワコムは2018年4月に井出信孝氏が代表取締役社長兼CEOに就任したのを機に、同年5月に新たな中期経営計画「Wacom Chapter 2」(2019年3月期~2022年3月期)を公表し、2年目が終了した。ペン入力デバイス市場の本格拡大やそれに伴う競争激化に加え、同社が優位性を発揮してきたプロユースにおいても、デジタル技術(IoTやVR/MR、AI等)や通信環境(モバイル、クラウド、5G等)の進展等に伴ってユーザーニーズやワークフローに大きな進化が見られるようになってきた。同社はそのような環境変化に対応するため、「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として原点に立ち返り、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りながら、顧客志向の技術革新を通じて持続的な成長を目指す方向性を示している。具体的には、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド&オーシャンによる緊密な連携、3)大胆な選択と集中、の3つの全社戦略に取り組み、2022年3月期の売上高100,000百万円、営業利益10,000百万円(営業利益率10%)、親会社株主に帰属する当期純利益6,948百万円、ROE 15~20%、自己資本比率約60%を目指す内容となっている。米国の対中輸入関税引上げや