*16:01JST サンワテクノス Research Memo(1):新型コロナウイルスの影響で産業用ロボット需要が前倒しで拡大する可能性も
■要約

サンワテクノスは独立系技術商社でFA・産業機器業界向けが売上高の約4割を占める主力分野となっている。電機・電子・機械の3分野にまたがって事業を展開している点と、それを生かした「双方向取引」(顧客メーカーに生産ラインの機器を納入し、そこで生産された製品を仕入れる)の2つの特徴を生かして業容を拡大してきた。
近年はエンジニアリング事業とグローバルSCMソリューション事業に注力している。

1. 2020年3月期は設備投資の落ち込みが響き減収減益となるも、自動車関連業界向けは成長続く
2020年3月期の業績は、売上高で前期比5.1%減の137,943百万円、営業利益で同45.8%減の1,846百万円と減収減益となった。米中貿易摩擦の長期化に伴う景気減速に加えて、2020年に入って新型コロナウイルスの感染が拡大したこともあって、製造業の設備投資意欲が冷え込み、主力のFA・産業機器業界向けの売上高が前期比2ケタ減と落ち込んだことが主因だ。ここ数年、高成長を続けている自動車(車載)業界向けについては、ADAS(先進運転支援システム)の搭載率上昇などを追い風に、前期比2ケタ増と好調を持続した。また、調整が続いていた半導体業界向けについても下期以降は、5G関連やデータセンター需要の高まりを背景に設備投資に回復の動きが見られ、通期では前期並みの売上水準に落ち着いた。営業利益率は減収要因に加えて、販売構成比の変化による売上総利益率の低下を主因として前期の2.3%から1.3%に低下した。


2. 2021年3月期は新型コロナウイルスの影響が不透明なため、第2四半期累計業績の見通しのみを発表
2021年3月期の業績については、新型コロナウイルス感染拡大が経営に与える影響が不透明で、通期見通しについては未定とし、第2四半期累計業績の見通しのみを発表した。売上高は前年同期比3.5%増の70,000百万円、営業利益は同17.6%減の750百万円と増収減益を見込んでいる。売上高については前期まで好調だった自動車関連(車載)が完成車メーカーの生産台数落ち込みにより減収となりそうだが、半導体設備投資が回復傾向にあることや、中国市場で設備投資を再開する動きも出てきたことなどから、全体では2年ぶりに増収に転じる見込みだ。一方、利益面では特段の費用増要因が無いことから、売上高が計画どおり達成すれば若干の上乗せ余地があると弊社では見ている。

3. 新中期経営計画『NEXT 1800』の進捗状況
2020年3月期からスタートした3ヶ年中期経営計画『NEXT 1800』では、重点施策として収益性向上を目的としたエンジニアリング事業の強化、規模の拡大を目的としたグローバルSCMソリューション事業の強化などに加え、新規事業への投資育成や倉庫管理システム(以下、WMS)の導入による物流の効率化などに取り組み、売上規模の拡大と利益率向上を目指す方針を打ち出した。このうち、エンジニアリング事業については、2020年3月期の売上高で約120億円と売上構成比の1割に満たないものの、売上総利益率では全社平均を上回っている。
新型コロナウイルス感染拡大を契機に、今後は様々な業界で製造現場における省人化投資が進むものと予想される。製造ラインは各社で要求する仕様が異なるため、システムの最適化提案を行うエンジニアリング事業の成長余地は大きい。一方、顧客の海外拠点における部品調達を代行するグローバルSCMソリューション事業についても、顧客の製造拠点移転に伴って引き合いが活発化しており、今後の成長が期待される。また、2019年4月より本格運用を開始したWMSは、受注案件ごとの物流費用の可視化を実現しており、物流コスト低減効果が期待される。世界経済の減速や新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、中期経営計画の経営数値目標(2022年3月期売上高1,800億円、営業利益48億円)は初年度から出遅れた格好となったが、これら重点施策に取り組むことで持続的成長に向けた事業基盤を構築し、長期ビジョンとして掲げた2026年3月期の売上高2,500億円を目指していく考えだ。

■Key Points
・2021年3月期第2四半期累計業績は増収減益を見込むが、半導体業界の設備投資は堅調、中国向けの回復もあり、若干の上乗せの可能性も
・中期経営計画『NEXT 1800』では中長期の持続的成長に向けた経営基盤の構築に取り組む
・エンジニアリング事業、グローバルSCMソリューション事業ともに収益性を重視しながら事業規模の拡大を進めていく方針

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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