レビュー

人口減少の一途をたどり、「都心回帰」「東京一極集中」の流れが止まらない日本で、いま「街づくり」が大きな課題となっている。
本書は「都市設計」「地方創生」といったキーワードに関心をお持ちの方に、「最初の一冊」として手に取っていただきたい一冊だ。

戦後の日本の都市設計の歴史を紐解くとともに、いまの日本の都市に求められる街づくりのコンセプトが語られている。
本書の前半部では、従来型の都市開発が生み出した課題が、平易な文体でまとめられている。著者があるべき都市の姿として提唱するのは、「ハードからハート」という言葉で表現されるような、ソフト戦略にもとづいて設計された街だ。「400メートル以内ですべてが揃う」、徒歩圏内で作るコンパクトシティである。ソフトの魅力によって住民や観光客を惹きつけ、これによって富国強街(ふこくきょうがい)を実現し、補助金頼みの地方行政からの脱却を行うべき、というのが著者の主張である。
本書の後半部では、国内外における地方創生の成功事例が複数紹介されている。
民間主導での都市開発には、常に逆風が吹くものだ。たとえば東京ディズニーランドも、当初は批判を浴びていた。しかし最終的には地元経済に貢献し、自治体の大幅な税収向上に貢献している。
街づくりを成功させるためには、行政と住民、民間企業の連携が必須だ。私たちも一人の当事者として、これからの街づくりを考えていきたい――そう思わせてくれる一冊である。

本書の要点

・アメリカの後追いによる無計画な都市開発の結果が、日本全国どこを切っても同じ「金太郎飴」のような風景や、都市中心部の空洞化、商店街の衰退に繋がっている。


・かつて日本は、人口増加に対応すべく街を拡張していた。しかし人口が減少している現代においては、徒歩で暮らせる街「コンパクトシティ」を築いていくべきである。
・いま街づくりに取り組まなければ、自分の街が消えてなくなるかもしれないということを、住民も認識する必要がある。行政・住民・民間企業が連携し、各都市独自の魅力ある街づくりを実践していかなければならない。



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