レビュー

人生100年時代を迎え、人生の中で働く時間が占める割合は大きくなりつつある。「どのように働くか」は現代社会に生きる我々の大きなテーマだ。

その前提のもとで「キャリア形成」と聞くと、転職する人や起業する人をイメージしがちだが、実は組織に属して働く人間にこそ重要な視点である。
本書は、伝説の人事部長、石川さんから新人研修・キャリア研修を受ける社員、サカモトの視点で描かれる、ストーリー仕立てとなっている。ようやく就職活動を終えて入社した会社で、右も左もわからないまま働き始めたサカモトたちを優しく厳しく導いていく石川さんは、誰もがよく知る『うさぎと亀』や『桃太郎』などといった寓話や昔話を例にとって話を進めてくれる。キャリアについて本質的で抽象的な議論がなされているが、わかりやすいたとえ話のおかげで頭に入りやすい。サカモトたちと一緒に研修を受けているような気持ちで、気軽に読み進められるだろう。
本書の前半で新人研修を受けていたサカモトは、後半で「3年目研修」を受けている。
3年目となったサカモトが抱える悩みには、会社員ならば誰もが共感できるだろう。
社会に出て日の浅い新人はもちろん、日々の仕事に疑問を抱き始めた中堅会社員やベテラン会社員も、少し立ち止まって、石川さんの研修を受けてみてほしい。抱えているモヤモヤを解決するヒントが得られるはずだ。

本書の要点

・キャリアは戦略的に考えるべきだ。考えることを放棄して、適性のない仕事のために必死に努力することを肯定してはならない。
・誰もが持っている小さな「マイクロスキル」を組み合わせることで、付加価値が生まれる。

その価値は自分が判断するものではない。相手にとって需要があるかどうかを考えよう。
・既存の制度について、「野党思考」のもと、当事者でない者が断片的な正論や短期的な正論を言うのは簡単だ。組織に対して不満を持ったら、「自分が責任者だったら具体的にどうするか」を考えてみる癖をつけよう。



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