レビュー

本書の著者ヤマザキマリ氏は、映画化した『テルマエ・ロマエ』をはじめ、数々の作品や執筆活動で知られる漫画家である。普段は日本と夫の実家があるイタリアを往復する生活を送っているが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年の2月からイタリアに渡る途が閉ざされ、やむなく家族と離れて東京で暮らすことになった。

おそらくこの生活は、パンデミックの終焉が宣言されるまで続くことになるという。
そうした暮らしのなか、著者は「今たちどまることが、実は私たちには必要だったのかもしれない」という想いにたどり着いた。この先世界は、そして日本はどう変わるのだろうか? ペストからルネサンスが開花したように、また新しい何かが生まれるかもしれない。混とんとする毎日のなか、それでも力強く生きていくために必要なものとは何だろうか?
本書は、著者がたちどまったときに見えてきた景色を記したものだ。著者の立ち位置から、自ずと日本とイタリアの比較が強調されるが、決して両国の優越を論じているわけではない。
本書の最も大きなテーマは民主主義だ。
「単に欧米に倣うのではなく、日本という風土にあった民主主義のあり方を考えてみてはどうか」という著者の提案について、今一度各自がたちどまって考えてみてはどうだろうか。

本書の要点

・同じ民主主義であっても、古代ローマから系譜をつないできたイタリアと、およそ150年前に取り入れた日本で、そのあり方が異なってくることは当然である。
・そうした民主主義の違いに基づく政治的なアプローチの違いが、今回のパンデミックへの対応によって浮き彫りになった。
・いち早くロックダウンという強硬手段をとったイタリアに対して、日本は世間体や空気によるプレッシャーを利用したのが特徴的であった。
・文化的な背景に基づき、日本における民主主義のあり方を、あらためて見つめ直してもいいのではないか。



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