レビュー
「新しい実在論」や「新実存主義」などを唱え、世界で注目されている若きドイツの哲学者マルクス・ガブリエル。理論を説くだけでなく、分野を超えて世界中のプロジェクトに参加し、倫理資本主義の浸透に奔走している。
本書のキーワードは、「つながり」だ。グローバル化が進むにつれて、世界はつながり続けてきた。一方で、米中の対立や、陰謀論の拡散など、思想における分断は著しい。そんな中で発生したパンデミックは、歴史的に見ても私たちに大きな発想の転換を迫っているように思える。世界が一斉にウイルスへの対策を余儀なくされたパンデミックの後、私たちは世界をどのように捉え、どう生きればいいのだろうか。
混迷しているように見える経済や国際情勢の中で、斬新でありながらシンプルな著者の視点は、すっと腑に落ちるものがある。今、世界で何が起こっているのか、なぜそうなっているのか、そしてこれからどう生きるかを考えようとする読者には、一読をお勧めしたい。
本書の要点
・倫理とは、文化によって異なることのない、普遍的な価値のことである。パンデミックによる世界的危機後は、倫理的に正しい行動と経済的収益を両立する新しい経済体制が必要とされる。
・新自由主義経済論に基づいたグローバリゼーションは終焉を迎える。
・ソーシャルメディアは、人々に望まない自己を押し付け、誤った自己概念に基づいて行動させることから、自由民主主義を破壊しうるツールである。
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