レビュー

組織に属していると、ともすると組織の都合を優先し、その論理で動きがちだ。ユーザーや消費者のことは忘れられ、自らの都合や理屈で、生産やサービス提供が進められてしまう。


そうした悪癖に陥らぬよう、ユーザーや消費者を優先に考えるためにはどうあるべきかについて、実証的に分析したのが本書である。ユーザーは何を求めているのか、それに対応するにはどうしたらよいのか、どんな発想をすればよいのか――こうした問いに向き合ううえでは、組織のあり方を細かく分解する思考が必要だという。
ユーザーの立場に立った視点を得るためには、まず共感から入り、目的を達成するためにはどんな組織が求められるのかについて、要素をひとつひとつ分解して説明する。さらに組織をどう回し、よいカルチャーを生み出すのか、その道筋についても探求する。ここで求められるのは、独善的な発想に陥らない謙虚な姿勢だ。
こうした「分解の思想」が機能すれば、結果にもつながるというのは、「なるほど」と得心がいく。
そうした動きが組織のカルチャーとなり、社風となるのだろう。本書は、ユーザー本位のプロダクトを追い求める企業に向けた現代版「解体新書」であり、組織全体の発想を転換する契機となってくれるはずだ。

本書の要点

・モノづくりとは、人の心を動かす仕事である。偉大なモノは、多くの人の心を強く揺り動かす。
・ユーザーが多様な視点を持ついまこそ、多様な人に共通するユーザー視点を持つ必要がある。ユーザー視点は「共感」から始まるのだ。


・「共創」を生むためには、決められた業務を役割ごとに分業する「役割別チーム」ではなく、特定の目的のために様々な専門スキルを持つエキスパートを集めた「目的別チーム」が必要だ。



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