レビュー

今、越境学習が、企業の人材育成に関わる人の間で注目を集めている。文字通り「境界を越えて学ぶ」ことを意味する越境学習は、人材育成の文脈では会社を離れて留学をする、大企業勤務の人がベンチャー企業やNPO法人で働く、仕事を続けながらボランティアや副業をするといったことを指す。

居心地のよい慣れた場所であるホームを離れ、居心地の悪い慣れない場所のアウェイで試行錯誤を繰り返すなかでの学び。「越境学習」という言葉を聞いたことがなくとも、こうした学びは進学や就職・転職、部活や地域コミュニティへの参加などで、誰もが経験したことがあるはずだ。
本書は越境学習の研究者と専門家が、越境学習を通じて組織にイノベーションや変革をもたらす「冒険人材」を育成する方法論を解説した一冊である。越境学習の概要・効果・学問的な成り立ち、越境学習が注目される理由、越境学習のプロセス、越境学習を組織に導入する方法が網羅されている。
本書は、越境学習が人にもたらす力を「冒険する力」と定義し、多くの人に「冒険者になろう」と呼びかける。日本企業にはイノベーションが足りないと言われ続けているが、本当に足りないのは「冒険」なのではないかと本書はいう。
本書を読むと、越境学習が行き詰まりの突破口となり、渇望されているイノベーションの創出につながる可能性を感じることができる。企業の変革やイノベーションを必要としている方、人材開発関連の業務に従事している方には必読の一冊である。

本書の要点

・越境学習とはホームとアウェイを行き来することによる学びである。アウェイ感があれば趣味のサークルのようなコミュニティなどへの参加も越境学習となる。
・越境学習者は、アウェイで違和感を感じ、葛藤を通して学びを得ていく。越境学習経験がホームへ持ち帰られ、活用されることは、企業の変革につながる。


・越境学習者は越境中だけでなく越境後に、越境中よりも大きな葛藤に遭遇する。2つの葛藤の中でもがくことが、成長へとつながる。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に2,100タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。