セリエAの各クラブは短いオフを終え、来月19日からの新シーズン開幕に備えて始動している。そんな中、8月28日に行われたナポリの練習試合が大きな注目を浴びた。

部分的に、ではあるが、なんと観客を入れたのだ。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による中断以降、サッカーの試合に観客を入れたのは、公式戦・非公式戦を問わず国内では初めてのことだった。

1000人強がスタンドに

 ロックダウンからの解放を経て規制の緩和措置が進むイタリアでは、7日に発布された首相令に基づき、野外のスポーツイベントでは1000人を上限とする観客の収容が9月1日から認められることとなった。

 一方で、この施行は各州の裁量に委ねられており、ナポリの合宿が行われるアブルッツォ州では、感染カーブの推移を鑑みて8月21日から前倒しで施行されることとなった。

 そして合宿地のカステル・ディ・サングロで行われたナポリとアクイラ(セリエD)、カステル・ディ・サングロ(5部)による変則3セットマッチでは、さっそく観客を入れて試合を行った。

 会場となるスターディオ・テオフォロ・パティーニの集客能力は7000人。そのうち1000席が予約販売され、のちに当局はさらなる緩和を認めて1280名が入場することとなった。

 観客にはマスク着用、1m以上のソーシャルディスタンスの保持、また入退場でゲートを別にするなどの安全策が課せられた。

期待の一方、否定的な声も

 これは、多くのサッカー関係者や行政機関の人物にポジティブなメッセージを与えた。

 イタリアサッカー連盟のガブリエレ・グラビーナ会長は「スタジアムが開放され、再び観客の姿が見えるようになったのは素晴らしいことだ。カステル・ディ・サングロでの試合はカルチョにとっての(希望の)光だ」とアピール。

 一方、COVID-19で最大の感染者・犠牲者を出したロンバルディア州のアッティリオ・フォンターナ知事も8月29日に「ナポリでの練習試合はスタジアムを開けるという可能性を示した。我われのような国では、日常への回帰はスポーツの復興によってもたらされる」と語り、政府とともにスタジアム集客への検討を進めていく意向を示した。

 ただ、現在のところ医療当局には慎重論が根強く、「感染者はまだ増えており、サッカースタジアムの門を開けられるような状態にはない」という声が多く上がっている。

 専門者委員会の役員を務めるイタリア市民保護局のアゴスティーノ・ミオッツォ医師は8月30日、『メッサッジェーロ』紙の取材に対して「現在の優先順位は学校をどうやって再開させるかであって、スポーツイベントではない」と語った。

 サッカー関係者からの要望は強いが、観客を入れた試合の完全再開はもう少し先の話になりそうだ。


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