2011年に監督に就任してからフライブルクで長期政権を築くシュトライヒは、窮地に立たされた敵将を放っておけなかったのである。会見に両チームの監督が同席するブンデスリーガらしい素敵な光景に思えたが、ドイツ語に明るくない筆者は「die Kirche im Dorf lassen(教会を村の中に残す)」で引っかかってしまった。
実は、これはドイツ語の言い回しで「大袈裟にするな」という意味があるそうだ。その昔、キリスト教徒が列をなして村中を歩き回る風習があったそうで、その行列が村をはみ出して他の村にまで及んでしまうことから「やりすぎ」「大袈裟」という意味で使われるようになったそうだ。
ブレーメの名言を引用
だが、それ以上に気になる発言があった。『kicker』によると、どうしてもうまくいかないファン・ボメル監督はチームの不運を嘆いたそうだ。勝てていない最近8試合は一度も複数得点がなく「今はゴールにつながる運がない」と口にした。そして最後に、なかなか好転しない現状について「靴にウンチが付いていれば、ウンチが付いているのさ」と付け加えたのだ。
何となく意味は伝わるが、これもドイツの言い回しだという。それも、1990年のワールドカップ決勝戦で試合唯一のゴールを決めて西ドイツ代表を頂点に導いたアンドレアス・ブレーメの名言だというのだ。
バイエルンやインテルなどで活躍したブレーメだが、彼が最も長く在籍したのはカイザースラウテルンだった。そのカイザースラウテルンは、1996年にDFBポカールを制するも、同一シーズンにクラブ史上初めてブンデスリーガ2部への降格の憂き目にあった。その際にブレーメは「靴にウンチが付いていれば、ウンチが付いている」と失意を表現した。
「ウンチが付いている靴は、どんなに素敵な靴でも、ウンチの付いている靴なんだ」といったニュアンスなのだろう。そして今回はファン・ボメルが、その名言を引用してボルフスブルクの現状を説明したのである。
英雄が名言を生み、それが語り継がれていく。そういうことをフットボール文化と呼ぶのかもしれない。
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