[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 全国高校選手権新潟県予選準決勝 新潟明訓高 4-0 北越高 新潟市陸上競技場]
ボールを持っていても、いなくても、すさまじい迫力で相手の守備網を破壊する。技巧派集団の新潟明訓高に突如、パワフルなストライカーが誕生した。
大ブレークのきっかけは、最後通牒だ。「こんなことは、あまりないのですが……」と指揮官は苦笑いを浮かべた。田辺は中学時代からの定位置だったサイドバックでプレーしていたが、ポジショニングなどの課題を指摘され続け、今夏の全国高校総体では登録メンバー入りも危うい状況だった。
そこで、テストをされたのがFW起用だった。FWも仕事は多岐にわたるが、優先順位は明確だ。田辺は、ゴールに向かう、得点を狙うという最優先事項で違いを見せた。
秋の茨城遠征以降、FWとしてのプレーに自信を深め、田辺は「SBでは迷って上手くいかないことも多かったけど、FWになってからは、思い切りプレーできている。上手いだけじゃ勝てない。自分は上手い選手じゃないし、荒削りかもしれないけど、背中で引っ張っていける選手になりたい」と言い切るようになった。
その姿勢を知る田中監督は「FWは2か月程度しかやっていないので、私は彼をまったく育てていないということになってしまうのですが……(笑)。持っているものがあるのかなと思う。チームとしても、点が取れる、強引にでも持っていける選手が欲しかった。シュートの思い切りが良いので、彼には『何本外しても良いから打て』と言っている。教えていない分、迷わせてはいけないですからね」と笑いながらも、解放され始めたポテンシャルの高さに目を見張っていた。
田辺の頭角で、チームは一変した。田辺が相手の守備組織に亀裂を入れるようになり、自慢の2列目が圧倒的に優位な状況でボールを持ちやすくなった。前後に揺さぶられた状態の相手に対し、両サイドの高橋怜大、関口正大がドリブルを仕掛け、シュートとパスの使い分けが巧みな中村亮太朗がトップ下の位置でコンビネーションを生み出す。後手に回った相手は、良いように振り回される。県予選はチーム全体で4試合16ゴールと得点力が際立っている。
(取材・文 平野貴也)▼関連リンク
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