【あの人は今こうしている】


 御木裕さん(64歳)


 映画「帰ってきた あぶない刑事」が、この5月に公開された。「あぶない刑事」ファンの喜ぶ声が聞こえてくる。

同作にレギュラー出演し、少年課の鈴江刑事役を演じていたのが御木裕さんだ。「西部警察」(テレビ朝日系)で人気を博し、2019年には肺がんを公表した。御木さん、その後、どうしているのか。


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「『帰ってきた あぶない刑事』には出ていませんよ。1989年公開の『もっともあぶない刑事』までしか出てない。ボクは“いらない刑事”だから(笑)」


 JR新大久保駅から徒歩2、3分のライブハウス「時代ワールドミュージック」で会った御木さん、まずはジョーク交じりでこう言った。


「『あぶない刑事』の撮影時は、谷村刑事役の衣笠拳次と空手やったり、スポンサーから外車を借りて見せっこしたりして遊んでましたね。そうだ、インターネットに、ボクが『あぶない刑事』で共演した木の実ナナさんとウワサがあるって動画が出てるんですって? いや、まったくのデマ。ナナさんとはお食事をしたことさえない。なんで動画になってるのか、ナナさんに申し訳ないですよ」


 御木さんの夫人は、ナナさんではなく一般人。25、26年前、東証1部上場企業勤務の女性と結婚した。


「『西部警察』の地方ロケのとき、女房がエキストラで出てたのが縁で、後に結婚しました。

若い頃はボクが外で飲んでると、どこで聞いたのか店にやって来て、『帰りましょ』なんて言って、オレの耳を引っ張るような面倒くさいオンナだった(笑)。でも、今は年をとって仲良くしてますよ。子どもはいません。よそにもね(笑)」


 明るく話す御木さん、とても元気そうだ。小細胞肺がんと診断を受けたのは7年前。余命1カ月と宣告され、抗がん剤や放射線治療で、約2年半闘病生活を送った。


「体調が悪くて20~30キロ体重が落ちたのに、なかなか病院にかからなかったら、倒れて救急車で運ばれました。闘病中、抗がん剤の副作用はほとんどなく、食欲もあったからラッキーでしたね。実は、新型コロナ感染症が広がってから、通院していません。でも、こうして生きています(笑)。節制はしていません。酒も一晩でボトル半分飲むし、たばこも1日1箱吸っていますよ」



石原プロの新人時代に渡哲也さなから「歯を食いしばれ」

 驚異の生命力だ。

体力も少しずつ回復。それでも、俳優業は控えているという。


「途中で何かあって、再撮影とかになったらみんなに迷惑かけますから。病気をするまでは、筋肉ムキムキでVシネマにヤクザ役で出てたんですよ。今はクイズ番組に出たり、ここで30~40分のワンマンライブをやったり。歌手でもないのに、歌っています」


 6年前から月に1回、エルビス・プレスリーやトム・ジョーンズの歌を、30人超の客を前に披露し喜ばれているそうだ。


 御木さんは36歳のとき、一時俳優を引退し、実業家に転身していたのではなかった?


「本当はこっちの作品に出たいのに、あっちに出ろ、と言われたり、やりたいことができないことがあったんです。もともと俳優志望だったわけじゃないから、『自由にできないんなら、もういいや』って。で、浄水器を売ったり、オリジナルドリンクを作って売ったりしていました。俳優をやってるいとこから、『ちょっとだけでも出てくれませんか』と頼まれたのを機に、またあちこち出るようになりました。やっぱり現場は楽しいですから」


 商売は闘病を機にすっぱりやめた。今は35年前に出会って弟子入りした、大仏師・宇都宮秀雲氏の仏像制作の手伝いをしているという。


「それから、犬をかわいがってます。オスのトイプードルの保護犬で、今は3匹目。2番目の子はボクの闘病中、ボクの代わりに体中がデバネズミみたいにハゲて、コロッと逝っちゃった。身代わりになってくれたんだなと思ってね。犬にはホント、癒やされて、救われました。今の一番の楽しみは、犬をかわいがることですよ」


 さて、宗教団体「PL教団」創始者の一族として、大阪府富田林市に生まれた御木さんは、近畿大学在学中、作家・石原慎太郎にスカウトされ、慎太郎の弟・石原裕次郎の事務所「石原プロモーション」入り。80年、人気刑事ドラマ「西部警察」のジョー刑事役でデビュー。空手仕込みの華麗なアクションを披露し、高い人気を獲得した。


「新人時代、酒の飲み過ぎで大遅刻して、石原裕次郎さんや渡哲也さんを待たせたことがあってね。裕次郎さんは何も言わなかったけど、渡さんにはちょうど怒られるシーンを撮るところだったから、『歯を食いしばれ』と言われ、マジで殴られました(笑)。渡さんは真面目で、気遣いの人。マスコミの前とかでは澄ましてましたけど、ボクの前ではプレスリーに合わせて体を揺らしたり、陽気な姿を見せてましたよ」


 都内のマンションに、夫婦2人暮らしだ。


(取材・文=中野裕子)