【2024秋ドラマ 注目美女の素顔と実力】#4


 伊東蒼
 「宙わたる教室」(NHK総合)


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 大谷翔平は今年の活躍でトレーディングカードの価格も急上昇しているが、MLBのトレカでは、レギュラーのほかに未来のスタープレーヤー候補を「トッププロスペクト(最注目株)」としてラインアップすることが多い。


 もしも「2024年春ドラマ」というカードセットがあるとしたらトッププロスペクトは「不適切にもほどがある!」(TBS系)の河合優実(最近ではサントリークラフトボスのCMにアイドル役で出演中)で、「夏ドラマ」編のプロスペクトを選ぶなら、「新宿野戦病院」(フジテレビ系)に出演した伊東蒼だ。


 彼女がこのドラマで演じたのは、オーバードーズになって、聖まごころ病院に担ぎ込まれたトー横キッズのマユ役。


 2005年9月16日生まれ、大阪府出身。演技経験が豊富で、子役としてデビューしたのは6歳のとき。2016年公開の映画「湯を沸かすほどの熱い愛」では母が家を出て宮沢りえが演じた主人公らと暮らすことになる少女役が高く評価され、高崎映画祭最優秀新人女優賞に輝いた。また、2021年放送のNHK朝ドラ「おかえりモネ」では清原果耶が演じたヒロインと気仙沼で出会い、「なぜ気象予報士になったのですか?」と問いかける中学生を繊細に好演して注目を集めた。


 この秋は、10月8日スタートの「宙わたる教室」(NHK総合ほか/毎週火曜夜10時~)で、起立性調節障害を抱え保健室登校を続ける定時制高校の生徒・名取佳純役を演じる。


「おかえりモネ」や「新宿野戦病院」もそうだったように、伊東蒼はストーリーに一石を投じて波紋を広げる役柄が得意な女優だ。


 しかも、心を閉ざしたクールな役がうまいだけでなく、登場人物が心を開いた後のやわらかい表情の表現も魅力的だ。「新宿野戦病院」でも小池栄子が演じた主人公に影響されて病院を手伝いながら目標をみつけるようになってからの、はにかんだ笑顔が抜群にチャーミングだった。


 ドラマや映画のワンシーンに立っているだけで、そこに物語が生まれる女優。そう言ってもいい。


 さまざまなタイプの若手女優がいる中で、印象派の絵画から抜け出たかのような淡い色彩と、内に秘める意志の強さと演技の深みとコク、わびさびと繊細さが魅力的で、存在感や演技に麻の素材の「生成り」の雰囲気を感じる……そういうタイプの女優がいる。


 既に主演級で活躍している女優では、門脇麦小松菜奈杉咲花古川琴音山田杏奈らが挙げられる。


 伊東蒼は19歳にして早くも、彼女たちに通じる「生成り」の魅力を熟成させつつある。


 彼女の生成りの糸が、今回の「宙わたる教室」ではどのような物語を織りなすのか、注目が深まる。


(高倉文紀/美少女・女優評論家)


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