【あの頃、テレビドラマは熱かった】#16


「タイガー&ドラゴン」
 (2005年/TBS系)


  ◇  ◇  ◇


 インターネットが“当たり前”になった2005年。この年は“ホリエモンVSフジテレビ”で始まった年でもある。

21世紀に入ってから、テレビはネットのポテンシャルや影響力を意識しながらも、視聴者に対しては旧来の手法を変えられずにいた。堀江貴文氏はそれを強引に変えていこうとフジテレビ買収を仕掛けたが、結局はオトナの事情で“和解”となり、ホリエモンはしばらく表舞台から消えることに。


 ちょうどその和解があった直後あたり、4月クールのフジ月9は木村拓哉の「エンジン」。キムタクの職業コスプレシリーズ(別にシリーズじゃないけど)は03年のパイロット、04年のアイスホッケー選手という流れでのレーシングドライバーということで、もはやネタ化。さすがに平均視聴率30%超えとはならなかったが、軽く20%クリアはさすがと言うほかない。


 さて、同じ4月クールに放送され視聴率では「エンジン」に遠く及ばなかったが、今でも“名作”と語られる作品がある。それが宮藤官九郎(55)が脚本のTBS系金曜ドラマ「タイガー&ドラゴン」。


 00年の「池袋ウエストゲートパーク」で主演した長瀬智也(47)と02年の「木更津キャッツアイ」で主演した岡田准一(45)がダブル主演で、キレッキレの“クドカン節”が炸裂した。お得意の細かすぎるキャラ造形や小ネタ、それを大真面目に演じる長瀬&岡田が「なんか食傷気味」なんて一部では言われていたけれど、実は構成の緻密さではクドカン作品の中でも群を抜いていると個人的には思う。


 一般的にはちょっととっつきにくい“古典落語”を時代に乗せたコメディー。第1話「芝浜」、第2話「饅頭怖い」といった具合に、全11話が落語の題名をサブタイトルにして、古典落語の世界と現代を往来する。“通”の人の評価は知らないけど、「芝浜」はちゃんと「芝浜」だったし、「ドラマを見て元ネタの落語をちゃんと知りたくなった」なんていう若者のブログもよく見かけたものだ。

それこそが、このドラマ最大の価値かもしれない。


 クドカンはある雑誌のインタビュー記事で「古典落語と連ドラの“オチ”は構造的に似ている」と語っていたが、実際に落語をちゃんと解釈して自分のワールドに落とし込む作業は、想像を絶するものがあっただろう。


 あれから20年。ネットとテレビの関係性の変化と共に、ドラマの見られ方もずいぶん変わった。でも、作り手の“熱”が感じられるものはこれから先も生まれ、残っていくものだと思いたい。と、今回は真面目に締めてみる。オチなくてどーもすみません。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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