「おこめ券」配布に続く肝いり政策が、ひっそりとスタートした。


 農水省は5日、鈴木憲和農相を本部長とする「日本の農林水産行政の戦略本部」なる組織を設置し、初会合を開いた。

食料の安定供給や地域の維持・発展を目的とし、フードテック(食分野の先端技術)やコメの需要創造、中山間地域振興など6分野を重点テーマに設定。「食の分野を我が国の経済における稼ぎ柱とする」(鈴木農相)とし、今後は分野ごとに具体的な戦略を策定していくという。


 すでに鈴木農相は「物価高対策」として、JAなどが発行する「おこめ券」の配布政策を打ち出している。注目度は比べものにならないほど低いが、この「戦略本部」の設置も、鈴木農相主導によるものだ。しかし、会合の様子などを取材していた記者からは、辛辣な声が上がる。


■目新しさゼロ、大臣の先走り


「取り組み内容などにあまり目新しさが感じられず、『やってる感』を出したいだけなのかと思いました。例えば、重点テーマに定められたコメ輸出拡大、中山間地域の振興などは、これまでの政権でもずっと議論されてきたこと。現時点で示されている情報量もかなり少なく、従来の仕組みとどう変わるのか、疑問に思う記者も少なくないようでした。中身のある組織になるのか、ちょっと心配ですね」(農水省担当記者)


 ただでさえ「おこめ券」配布は批判が相次いでいる。1枚500円のおこめ券は、印刷代などの事務経費で60円が引かれ、実際には440円分しか使えない。制度としてムダが大きいことなどを理由に、すでに大阪の交野市や箕面市、宮城の仙台市、東京の江戸川区と中野区などが見送りを表明している。


「おこめ券配布の公表も唐突感があり、農水官僚も『やりきれるだろうか』と懸念。

大慌てで、官邸とのすり合わせなどさまざまな対応に追われました。大臣が一人で先走りしているようにも見え、このままではかえって混乱を生み出す可能性もある。今回の戦略本部設置も、空回りに終わるかもしれませんね」(前出の農水省担当記者)


 効果のある政策を打ち出していけるか、鈴木農相には厳しい目が向けられている。


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