#2 父が生きていた?…家族の愛をめぐる感動のミステリー

新聞社で働く柳宝子は、虐待を理由に、娘を元夫に奪われていた。ある日、21年前に死んだはずの父親が変死体で発見される。宝子は父の秘密を追うことになるが、やがてそれは家族の知られざる過去につながる。一方、事件を追う刑事の黄川田は、自分の娘が妻の不貞の子ではないかと疑っていた……。『完璧な母親』などの作品で根強いファンを持つ、まさきとしかの最新作『ゆりかごに聞く』。その発売を記念して、一部を公開します。

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(写真:iStock.com/Poike)

宝子はインスタントコーヒーを入れてから、改めて新聞に目を通した。

〈八王子男性殺害 交際中の女性を事情聴取〉の見出しをもう一度目でなぞり、記事を読む。

一週間ほど前に起きた事件だ。八王子市に住む二十五歳の男が、駐車場で何者かに殺された。当初の報道では遺体の一部を切断した跡があったとしか伝えられなかったが、その後、週刊誌によって性器が切断されていることが明らかになった。「現代の阿部定事件」「猟奇的殺人」とワイドショーが騒ぎ立て、犯人は女だという流れになっていた。

以前の宝子なら、世間から注目されているこういう事件を追いたいと思っただろう。もともと事件記者になりたくて、就職先に新聞社を選んだ。社会部への異動願いを出したこともあったが、三十三歳になったいまでは自分が社会部に行きたいのかどうかわからない。

八時になるのを待ってから、浩人の携帯に電話をした。しばらく呼出音が続き、「はい」と聞こえたのは女の声だった。うろたえた宝子は「あの」と言葉をつまらせた。


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